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【子育て】30話 レモンバームティーの魔法

「最近のココちゃん、おしゃれを気にしてるのかわがままだわ」
カカさんがため息混じりに呟いた。
「保育園に行くのにオーガンジーのふわふわのスカートを着て行きたいって毎朝言うの、聞こえてるでしょ?前はそんな事なかったのにね」

「カカさんの娘だしな。おしゃれなのも口が立つのもそっくりやんハハハハ」なんて、からかいながらハッとした。
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先週末のこと。お出かけの時にココちゃんに、ふわふわスカートかわいいね、似合うね、と言ったのは紛れもなくオレだ。
その時のココちゃん、にやーってして照れて可愛かったんだよ。

それがうれしくて毎朝保育園にも着ていこうとしてるんだ、と気付いて罪悪感を感じた。
ココちゃんの名誉のためにカカさんに、「あ、それオレが似合ってるって言ったからかも」と言おうとしたんだけど、何となくしれーっと誤魔化すことにした。
「ま、女の子がおしゃれに興味もつのは良いことやん」
「それはわかるんだけどねー。朝の時間ないときは勘弁してほしいって感じ」

何でもかんでもココちゃんに「いいねー!」と言っていると、どこか甘やかしすぎなのかと思うこともあるけど、ココちゃんが話すことに否定せず、会話することを大切にしたいんだよな。難しいことやけど。

ま、こんな事があってのココちゃんのわがままだから発端はオレな気がして、内心「カカさんごめんね」って思ってた。
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話の続きでカカさんが
「ゴールデンウィーク、キャンプ行かない?3人でも良いけど誰か誘って行くのもよくない?トトさんもキャンプ飯興味あるでしょ?」
と、キャンプの提案をした。もちろんオレも乗り気だ。
「ココちゃんには内緒ね。行くのも黙ってて、寝てる間に車に乗せちゃお。話したら前の日眠れないし、興奮して体調崩して行けなくなったりしそうだしさ」
「そうやな。ココちゃんには内緒で。サプライズもかねてね。」

そうした夫婦の約束をした翌日。

この日は先日カカさんの実家から送られてきた花山椒があるから、カカさんが鍋を作ってくれることになった。
カカさんが料理を作ってくれる事で、ココちゃんも大喜び。オレもカカさんの料理が大好きで二人で遊んだり手伝ったりしながら、出来上がるのを待っていた。
すると、はしゃぎすぎたココちゃんがテンション上がって、テーブルの上のコップを倒した。
コップには大して水も入ってなかったので、すぐに布巾でふきながら
「あーココちゃん。テンション上がっちゃってー。こんなんしてたらキャンプに…」…しまった!
咄嗟にとカカさんを見る。すでにカカさんも気付き、包丁を持ったまま冷たい眼差しでこちらを見ていた。普段、どんな人からもやさしいと言われるカカさんが、家の中でオレだけに見せる冷酷な眼差し。
ひー!
「キャンプ!キャンプいくん?!やったー!」
こうなったら勢いが止まらないココちゃん。テンションマックスではしゃぎまくられてオレはたじたじ。さっきまでキッチンにいたカカさんがこちらに来て、ココちゃんの目線になって優しく笑顔で一言。
「ココちゃん、楽しみねー。だからそれまで良い子にしてようねー。ちゃんと良い子でいられるかなー?」
「うん!いいこでいるわー!」
ココちゃんの頭をなでなでして「楽しみだね」と言ってキッチンに戻って行った。
…かっこいい。料理を再開したカカさんがオレの方を見てニコって笑った。

カカさん特製の美味しい花山椒の鍋を食べた後。

ココちゃんはいつもよりテンションが高くて少しの事でもケラケラ笑って、ふざけて眠れないみたい。
すると、カカさんがティーポットに入れてるお茶をココちゃんに飲ませた。隣にいるこちらまでレモンバームの良い香りがする。
カカさんが、ベランダで育ったフレッシュなレモンバームをたくさん摘んで、ティーポットに入れてお湯を注いだシンプルなもの。少しだけ国産レモンの皮も入れてるのかな?
常温になったレモンバームティーを飲むココちゃん。
「ココちゃん、トトさんにおやすみ言って寝よっか」
「うん、おやすみトトさん」
さっきまでふざけてたのが嘘のように、落ち着いたココちゃんはカカさんがすぐに寝かせた。

レモンバームの魔法は効果てきめん。カカさんのカッコいい一面をたくさん見た1日だなーと思っていたんだけど、ココちゃんを寝かせて、残った仕事をするためにパソコンを開いて作業していたカカさんが突然、真っ青な顔をして叫んだ。

「書いてたの消えた!!!」


トトさんおっちょこちょい。カカさん大活躍!のお話だったけど、最後はカカさんらしさが出ました笑
消えたデータはトトさんが復旧したみたいです。めでたしめでたし。レモンバームティーを飲んで落ち着きましょ。

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