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21話 涙のバレンタイン

突然やけど、オレはバレンタインにカカさんからチョコをもらったことがない。

付き合い始めて、最初のバレンタインはめっちゃくちゃ期待したけど…何もなかった。
まだ「カカさん」ではなく名前で呼んでいた頃。

あまりに普通にスルーされて、友人に相談した。別れたいのかなって。勇気を出して理由を聞いてみると

「わたし、バレンタインを特別な日だと思ってないの」

急にめちゃくちゃドライ発言をされた。カカさんは急にドライ&クールになることがある。まぁ、他にもそういうとこがあるから、おいおい話すよ。

2年目。
またそわそわしてるオレに向かって、カカさんは

「プレゼントはしたいときにするからね」

またまた素っ気なく言ってきた。

そう。オレは悟った。カカさんは本当に心からバレンタインに興味がないのだと。

そういうことで、オレは今までバレンタインにカカさんからチョコはもらったことがない。
だから、オレも自然とバレンタインは特別な日ではなくなった。

…んだけど。この前の日曜。
急に入った打ち合わせが終わって、家に帰るとカカさんもココちゃんも何かニヤニヤ?しているな〜と思っていたけど、特に何事もなくカカさんが夕食を作ってくれた。
メニューはひき肉のレタス包み、ブロッコリーとベーコンの炒め物、春菊の味噌汁。
カカさんが野菜を何種類も使って、丁寧に作ってくれるので、ココちゃんも好き嫌いなく何でも食べる。本当に良く食べるようになった。

食べ終わるとまたココちゃんがニヤニヤして、カカさんに向かって
「もーいー?!」
と聞いた。
カカさんは「うん!いーよー!よしっ!」と言うと立ち上がって、

「すこし早いけどー!」
「はやいけろー!」
「ハッピーバレンタイーン!」
「バレンタイーン!」

と、おからケーキを出してくれた。

もうめちゃくちゃうれしくて。素朴な味わいに仕上げてくれた、ほんのり甘いおからのケーキに、カカさんはオレの好きなアールグレイを一緒に出してくれた。

「うわー!ありがとー!」

ココちゃんが「おいしいでしょー」と幸せそうな笑顔で言った。ココちゃんの中ではココちゃんが作った事になっているようだ。
「ココちゃん、本当に美味しいよー!ありがとう」

あ、もう聞いてなくて食べるのに夢中だ笑

「うん、おいしいわ。コレ。ありがとう。」
カカさんに素のトーンで伝えた。
「うん、おいしいよね。うまくできたわ。こちらこそいつもありがとね。」
素のトーンで返ってきた。

メッセージカードには14日をお楽しみに!と書いてあった。二段構えとは!これは期待せずにはいられない。

そして、14日バレンタイン当日。

夕飯の後、カカさんが動画を送ってくれて、3人で見てみた。
ココちゃんが「ベイビーシャーク」の替え歌で、トトさん好き好きと手を腰にあてて、踊りながらニコニコで歌っている。かわいすぎる。

動画が終わって「ありがとー!」と言うとすぐに2つ目の動画が始まった。

おんなじ踊りを今度はカカさんも加わって同じ振り付けで。たぶん動画撮ってて我慢出来なくなったんやな笑 お尻を振る振り付けも「トトさん好き好き」の歌詞も完璧で全力で踊ってる。見ててこっちが赤面笑
「カカさんも踊るんかーい!」と突っ込んで、3人でゲラゲラ。
最高のバレンタイプレゼントをもらった。嬉しくて、かわいくて、笑いすぎて涙でたわ。

けど。まてよ?あ。

カカさん、やっぱりチョコはくれなかった。


カカさんが作るおからケーキのレシピはこちらから!

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