Web小説発掘記 その196 「お前クビ」デビュー直前にバンド🎸を追放されて彼女も寝取られた俺は一人寂しく弾き語りするつもりが何故かS級美女達に囲まれてます。 作者 紅ワイン🍷様
本編URL
https://kakuyomu.jp/works/16817330662545387095
前書き
この記事は作品のネタバレを含みますのでご注意。
こちらの記事はあくまでも筆者の個人的意見です。
評価の基準としては200円~700円前後の書籍を購入し、読んだものとして付けさせていただきます。そのため基本的には厳しめとなります。
※こちらは『第一章』までを読んでの感想、レビューとなります。
あらすじ
ギタリストの小早川金吾はバンドを突然クビになる。
しかもカノジョを寝取られるおまけつき。
絶望した彼の前に現れたのは金吾のファンのJKだった。
彼女の励ましにより元気を取り戻した金吾。
音楽からは距離を置き、静かに大学生活を送ることにする。
しかしその後ひょんな偶然が重なり、なぜか女の子達に囲まれる生活を送ることに。
追っかけのJK、世話焼きな女友達、清楚な先輩と美人揃い♡
必死に夢を追っていた頃よりむしろ幸せ?
クビとNTRから始まるキャンパスライフラブコメディ、開幕!
ストーリーと見所
S級美女ってなんだ……?いや、意味は通じるけども。
などなどちょっとした疑問を抱いてしまいがちなこちらの現代小説。ジャンルとしてはラブコメ……かな?多分、恐らく。
タイトルにある通りバンドをクビになり彼女も寝取られた主人公が、周りに集まってきたS級美女達によって身も心も癒されながらお互いの悩みなんぞを解決したりしつつ距離を近づけていく物語。
だからさぁ……NTRってのはさぁ……そう言うんじゃないじゃん。物語の冒頭で奪われてもさぁ、何にもならんわけよ。だってその人他人じゃん。
やっぱりさぁ、こう、長い時間を一緒に過ごしたり苦難を乗り越えたりして心を通わせた人が一時の好奇心や気の迷い、そして最終的には快楽に敗北する姿に来るものがあるわけよ……。
その時に感じる脳への揺さぶりが極上の脳破壊を生み出すんだよ……。脳に衝撃がこないNTRなんてNTRじゃないよ……。
で、こちらの物語なのだがとにかく凄い。Web小説とはかくあるべきを体現したと言っても過言ではないほどに読者に対する気遣いとユーザビリティに溢れている。ユーザビリティの使い方があっているかは知らん。
まずは理不尽な理由で解雇される主人公。相手の男も女もお馬鹿なので気付いていないが、彼こそがバンドの中心人物。
NTRとは書いてあるが、実際は一話で状況説明だけが行われるので読者に対しての衝撃は一切なし!別に脳も破壊されない。ぶっちゃけ単なる舞台装置。でもそれがいい。
NTR好きは頭がおかしいから勘違いしているけどあんなもん見て喜ぶ人いないからね。だから作中で主人公が不幸であることのフレーバーとしてのみ利用されている。
で、その後にちょっとした小エピソードで再利用されたりはするけれど、そのぐらい。なので殆どそれに付随する不快感はなし。
そこからは次から可愛い親友系女の子、バンド時代の自分のファンのJK、おっぱいのでかい先輩と次々に女の子が登場し、主人公を癒してくれる。
お話としてはざまぁとハーレム展開で、彼女がNTRされたトラウマが……なんてまどろっこしいことは殆どなし。
友達以上恋人未満な関係が進んだり、可愛い後輩に慕われて一緒に勉強したり家庭教師をしたり、おっぱいがでかい先輩をナンパから助けたり……世界の全てがここにある。
この徹底した主人公と読者に対する配慮、決して読んでいて不快にさせないと言う強い意思。何もかもが都合よく進む優しい世界。
それに加えて主人公を追放した男への強烈なざまぁ。
これこそ読まれるWeb小説の体現。
読者が一番欲しかったもの。
こういうのでいいんだよこういうので。
あらゆる男の願望を詰め込んだ(流石に言い過ぎ)この物語はある種の芸術性すら帯びている。
それらを読みやすくテンポのいい文章で描き出されているので、無限に摂取することができる。
読んでいて文章的にも物語的にも引っかかりが一切ないので幾らでも読めてしまう。
Web小説に読者に読まれるのに必要なのは文章力でもストーリーの構成力でもない。コミュニケーション能力だ。
読者=お客さんが何を求めていて、それをどれだけ親切且つ的確にお出しできるかが肝要となっている。
それら全てを満たしたこの作品。
一見すればよくある展開をなぞっているようにしか見えないかも知れないが、ここまで外れていないものをお出しするなんて言って簡単にできることじゃない。
作者さんの芸術性すら帯びている技量に素直に感服するばかり……。
キャラクター
小早川金吾
物語の主人公。
バンドを追放され乗っ取られ、彼女を寝取られるがなんやかんやで幸せになる。
頭も良くてギターの腕はプロレベル、多分顔もいいし性格もいい。
女の子にモテまくる。
とは言えいい感じに元カノへのあれこれやら鈍感力を発揮して女の子達とは微妙な関係を続けられるなど色々と美味しい役回り。
極めて薄いが性欲はちゃんとある模様。
神田涼子
ヒロインその一。
主人公の悪友で、バンドを追い出されたらすぐに駆けつけて一緒のお酒を飲んでくれるぐらいの仲。もうこれ以上の説明いる?
途中ラブホテルに行く。
そして彼氏こそいたことはあるが処女であることを彼女の視点から独白するなど、読者に対しての説明責任を果たしているナイスなヒロイン。
校倉空李
ヒロインその二。
主人公のバンド時代のファンのJK。ってことで言うまでもなく好感度は最初から高い。
その後は彼女が主人公のいる大学に入るまでの家庭教師をすることになり……ってな感じで一章の物語の中心になってくる女の子。
美墨詩乃
ヒロインその三。
主人公の大学の先輩で、おっとり系でおっぱいがでっかい。で、眼鏡は?
でもメカクレだから許す!!
一章は他二人にやや出番を食われがちだが、まぁそんなものだろう。二章以降に期待したいところ。
総評
評価点
ざまぁ、ハーレム、主人公への高い評価。
それらの要素を読みやすくテンポのいい文章でまとめた傑作小説。
物語的な引っかかりはなく、思う存分にハーレム展開とざまぁを楽しむことができる。
コンセプトがブレず、徹底している。これを書ける作者さんの技量と人間性に拍手を送りたい。
問題点
とは言えまぁ、徹底しているだけあってストーリー的な波はかなり凪いでいる。良くも悪くも。
コンセプトに忠実なのでいい部分ではあるのだが……。
一番の山場は序盤だし、後はラブコメにも至らない女の子と主人公のやり取りが延々と繰り返されているので物語としての物足りなさはある。
その辺りは時折挟まれるざまぁパートをどれだけ楽しめるかに掛かっている。
最終評価 61点(文句なしの秀作Web小説)
しっかりとコンセプトを決めて、それを徹底する。一貫した作品作りによる物語の完成度が非常に高い秀作小説。
その中でちゃんと現在の流行りも盛り込まれており、ハーレムやざまぁが好きな人ならば読んで全く損のないお話となっている。現在の潮流を考えると書籍化しても不思議ではないクオリティ。
またそれらを物語として読みやすく纏めている作者さんの文章力も相当なもの。テンポが良く、お話を次々と読み進められるので作風にも噛み合っている。
現代ものと言うちょっとばかりの変化球ではあるものの、読者の欲しいものを的確に提供してくれる素晴らしい作品。ハーレムやざまぁが好きならば読んでみて損はないだろう。
所要時間は『一章』全部で凡そ1時間30分ほど。