Veux
明日、どうなるかなんて、考える方が病気でしょ。
君のそういう神経的なところ。潰れた柘榴みたいに、グロいだけの表面。
言語化すらできない野獣なら。
もはや、生きるに値しないね。
おれの神経にどうしようもできない徒労を時折感じる時点で、そしておれと俺がほぼ同質という疑義が同定され得ない一塊の不快なら。
もはや、生きるに値しない、おれたちだ。
畦をゆく二つの影がさすのは、きっと終末なんだと言う確信が彼女のうちに広がっていった。
放棄された田園は朝靄に沈み、遠く連峰の複雑な鋒は歪んで翳っている。どうしてか言葉を交わすことが、この静謐を穢す罪のような気がして、二人おしだまって、ただ歩いていた。
「あ」
と間の抜けた声の向かう先――滔々と流れる水路の淵のひばりの死骸だった。彼女は立ち止まって、考えた。先は、きっとこれなんだ、だった。
この不気味な直覚は、
そんな、話が聞きたいの? そんな妄言が叶ってほしいの? 結局、しらなきゃいけないのは、おれの方なのに。
おれはお前のせいにした。お前の性や、生来の病理や、そういったもんに還元されていった幾重にも募る妄言、妄想、虚妄、譫妄。
お前や、おれに子宮があるなんて、笑っちまうよな。なぁ、そうだよな。
不要なもの切り落とす進化の道程。
おれやお前は、なんだかんだ今日を生きてるわけだけど。その道理ひとつわかりはしねぇのな。
疲れたのなら。
この進化の呪いから解放されたっていいんだぜ。
純度増した夜半、醒めて忘れる夢の様に、全然別人の君浮かぶまで、あと数秒。
徒労、こんなぴったりと当てはまる。
少し、怖い。
何処かで、浄化したい所。どうやるか、不明。元気そう。ならよかった。僕の願望。願い叶う。でも何で得るのか、自己犠牲?それはきっと。酷くまた疲れるだろうに。
少し休む。うまく言えないけど。ゆっくりした、時間に撓む、君の後姿。
生き抜くのであれば。残差に夢む街の中。
存外に孤独に類似する。雑居と雑踏。
どうしたって。君と僕の類似。
平行線の街の中、非線形の僕と君。
統制された世界において。
かつて散乱した光の条。
今は忘れるべくして、忘れた方が。
幸せかもしれません。
恋心が凝固した血と同じなら。
あとは黙って、消えればいい。
抉り抜いた子宮口。
染み込んだ恥骨。
そんな全部にばらばらになったそれを、ひとつひとつ拉げた感傷に入れ込むその後ろ姿が、随分と長い陰を触手のように伸ばしているお前を。
いつか、殺してやれれば、
よかったのに。
今日、おれは微睡むような、曇り空の初夏。
こんな平べったい、灰色のドオムの中みたいな曇天を。
おれは確かに、小五かそんくらいに、見たことがあるぞ。
そんな悉くを重ねてゆけば、おれはいつか玄関先の虫の死骸になるのだろうからさ。
おれは、これでもせつないのだぜ。
おれは、これでも空っぽなのだぜ。
そんな惰弱を繰り返す。
怯懦で唾棄すべき、愛おしきお前の、脆弱な精神の模様を。
おれはいつか殺してやりたいのだ。
あるべきもの。
必要とされるもの。
おれのできること。
なんなんだろうな。
そんなこと一つわかりはしない。
何が出来るのかなんて。
そんなことひとつだって。
分かる筈なくて。
敗退を重ねた日々の連鎖。
何も手につくことないのなら。
どこかで切断すべきなんだろう。
その一つの慰めもないままに。
その間には。
一体何が残る道理もないのだ。
唯心の瓦解する先を撫でるお前の哀れさ。
お前以外が分かる道理なんてない筈だろうからさ。
おれは一歩づつ進むべきなんだ。
おれには何が合うのだろうなんて。
くだらないこと。
利他的にあるべきなのだろうから。
不安。死んだような。
お前。お前。お前。
苦悩も焦燥もおれの自罰の前では同じことだ。
何を目指して生きて行けばいいのだ。
そんなこと一つ、本筋から外れた虚妄の中で。
おれは何も知らない。
どうして行こうか。
生きるだけなら。
特に考えななくても。
いいけれど……
くだらない。失敗ひとつで乱れる人格というより。
恥ずべきだということを踏み違えたのだ。
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