涙鉛筆~僕はタフになった~ #毎週ショートショート
小学校3年生の夏休み、交通事故に遭って左半身麻痺になった。野球もやめた。図工の先生の誘いで美術部に入った。ある時、6年生の作品「銀河系」に魅せられ自分もこんな絵を描けるようになりたい、野球以外に夢中になれることが見つかった。
スケッチブックを買ってもらい、自画像を描くようになった。「日記を書くように自画像を描くと良いよ」
麻痺は残っていたが友達とも仲良く過ごした。自転車の後ろに乗り繫華街まで遊びに行った。隣町の小学校に爆竹を投げ入れる悪さもした。不自由だが卑屈になることはなかった。
6年生。美術部の卒業制作にとりかかっていると担任に3者面談の予定を知らされた。「来年は中学生だ!」スケッチブックは6冊になっていた。
「お母さん、村田君は特別支援学校がよろしいかと思いますが…」
「クソ」とスケッチブックに殴り書きした。涙がぽろぽろと「クソ」に落ち、ふやけていった。
その日、僕はタフになった。自画像の僕も濃い鉛筆で逞しくなった。