見出し画像

ビートルズが再結成しない理由を誰か教えてください。

 「フリー・アズ・ア・バード」という曲がある。
1994年のビートルズの『アンソロジー』企画でポールとジョージとリンゴが集まり新曲をレコーディングすることを企画した。しかし、ジョンの代わりになる人はいないのでジョンの未発表曲にポールは目を付けた。そしてヨーコがポールにジョンの未発表曲4曲を渡した。
それが、「フリー・アズ・ア・バード」「リアル・ラブ」「グロー・オールド・ウィズ・ミー」「ナウ・アンド・ゼン」である。
このうち「フリー・アズ・ア・バード」「リアル・ラブ」が『アンソロジー』(1995)として発表された。
 ジョンの意志はよくわからないが、3人で曲を作ってしまった・・・ビートルズという実体のないバンドで。

 私は1995年発表された「フリー・アズ・ア・バード」が再結成の宣言も無いビートルズ名義で企画盤の中にしれっと収められたことに怒りを覚えた。
ジョンの録り残した音源。そこにポールやジョージ、リンゴが加わり1曲に仕上げてしまったこと・・・ビートルマニアのジェフ・リンも加わって。
 「グロー・オールド・ウィズ・ミー」は、ジョンのアウトテイクをヨーコやプロデューサーのジャック・ダグラスがリズムマシンやエフェクトを加えながらジョンとヨーコ名義の『ミルク・アンド・ハニー』(1984)に収録された。これはわかる。『ダブル・ファンタジー』(1980)からの流れでジョンとヨーコが発表することの自然さである。
では何故、ジョンの未発表曲にポールとジョージとリンゴが手を加えたらビートルズとして発表できるのか。

 そもそもビートルズの膨大なアウトテイクを集めまくって作った『アンソロジー』は、ビートルズの海賊盤が横行していることの対抗策としてEMI側がビートルズ側と協議しながら作った企画と聞く。だから中途半端なアウトテイクや録音状態の悪いライブ音源も時代順に雑然と並べられた。しかし全世界のビートルズファンはこれを手放しに受け入れた。
ジョンがいなくなりオリジナルメンバー4人のビートルズはもう見ることができない中で、何かレアな音源がリリースされればファンは単純に喜ぶ。そういうものだ。
 私はそもそもが、このアウトテイクを集めて商売している事に懐疑的だ。要は正規盤に収める事が出来なかったクオリティーの曲をファンだったら何でも買うだろ、という作り手の商売根性が好きではないからだ。いくらEMI側が海賊盤対策と言ってもそもそもがまともな音源ではないのだから無視していれば良いのだ。
 レコード会社はよくボーナストラックと称してこの手の商売をすることがあるが、ライブ音源などを収録するならまだしも、私はアウトテイクなどを聞かされても特段感動もない。 また、変なミックスなどされていたら、元の曲のイメージが壊れてしまう事も多々あり、聞かなければ良かったと思う事もある。
だから、そんな中途半端な曲の中にジョンの意志確認もできない中、ポールとジョージとリンゴが録音した「フリー・アズ・ア・バード」をビートルズ再結成の宣言もないまま収録したことに対して私は怒り覚えたのだ。中途半端な曲の中にジョンとの疎通もない中途半端な曲を収録しているとしか思えない。いったい誰が金儲けしているんだ?
 ビートルズの公式記録では未だに1970年で活動は終わっている。そんなバンドが新曲を発表していることにモンキービジネスの匂いがプンプンする。

 ジョンの意志を汲んで曲は完成されたと言うのであれば、「グロー・オールド・ウィズ・ミー」と同様にジョン・レノン 名義で発表するべきなのである。
きっと政治的な金が絡む問題だから儲けを優先させる為に、なし崩しでビートルズ名義にした事は想像に容易いが、作り手のジョンはそれを本当にそれを望むだろうか。
 音源を持つヨーコはジョンの残された作りかけの作品を一曲でも世のジョン・レノン ファンに届けたいという純粋な気持ちがあったと思うが、その気持ちは本当に尊重されたのだろうか。 ジョン・レノン名義よりビートルズ名義の方が多くの人に届くと判断したのなら、なぜビートルズ再結成を発表しないのか。いくらジョンのデモテープを元に3人がレコーディングしたからと言ってもビートルズの曲として発表するならば「再結成」を発表し、けじめをつけて欲しかった。
 
 その後ジョージも鬼籍に入り、ポールとリンゴの2人がAIを使って昨年「ナウ・アンド・ゼン」を作り上げた。
ジョンの郷愁漂う素敵な作品だが、素直に受け入れられないのは、『アンソロジー』企画でもなく、ビートルズという1970年に解散したグループ名で未だにいけしゃあしゃあと発表されたからだ。 ビートルズは再結成が出来ない決まりでもあるのだろうか。 契約の問題?税金の問題?「フリー・アズ・ア・バード」「リアル・ラブ」「ナウ・アンド・ゼン」は『ダブル・ファンタジー』の後に発表された『ミルク・アンド・ハニー』のようにジョンの未発表音源として発表するべきだと思うのだが、どうだろう。

 ポールもリンゴももうすぐ鬼籍に入るだろう。 もしかしたら、どちらかの未発表曲がAIやビートルマニアのジェフ・リンの手により発表される時も再び「ビートルズ」として発表するのだろうか。
いにしえに終わりを告げたグループ名はいつの間にかゾンビのように生き返り未来永劫生き続ける?
 私の中でビートルズは1970年の『レット・イット・ビー』で終わっている。後に『レット・イット・ビー・ネイキッド』(2003)なる余計なお世話というアルバムが出たが、フィル・スペクターによる大袈裟なオーケストレイションがあっての『レット・イット・ビー』を聞いてきた者としては『ネイキッド』はただのアウトテイクなのだ。だいたい曲のイントロやアウトロを切ったり貼ったり、余計な音を消し込んだり、ライブ音源とミックスさせたり、とビートルズの楽曲は粘土細工じゃないって思わず叫んだよ。

 世の中の音楽ファンは、昨年発表されたジョンが残した音源を元にAIも導入して作成した「ナウ・アンド・ゼン」を肯定的に迎え入れた。
 リンゴは2020年のインタビューで「もしジョンとジョージが死んでいなかったら、きっと再結成の可能性はあったと思う。ポールと僕はまだその道を歩んでいるからね。ジョンもその道を進んでいたと思う。ジョージはわからないけど。でも僕たちはまだ自分が好きなことをやっていたと思う」と、再結成の可能性を否定しなかった。
 それぞれの音楽性があるから再結成なんて簡単なものではないことは十分理解できる。
それでもリミックスの『ネイキッド』はまだ許せるが、新曲を収録した『アンソロジー』はアウトテイクのなれの果てとして受け入れるか。
 今回の「ナウ・アンド・ゼン」は「ビートルズ最後の新曲」という売り文句まで作っている。やはり納得がいかない。「ナウ・アンド・ゼン」が郷愁を感じる良い楽曲という事も合わせて、私はジョン・レノン名義で発表するのが筋だと思うのだ。

 ビートルズが好きな人には余計なお世話かもしれないが、私のビートルズ感には「フリー・アズ・ア・バード」「リアル・ラブ」そして「ナウ・アンド・ゼン」も存在しない。

2024/2/9 花形

いいなと思ったら応援しよう!