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映画 アナログ

※少し内容に触れています。



ジリリリリリリリリ………
というアナログの目覚まし時計が鳴って、主人公の悟(二宮和也さん)が、起きる。

炊飯器ではなく、鍋をガスコンロにかけてご飯を炊く。
ふつふつと鍋のふちから沸騰した泡が出てるのを確かめて、火を止める。
縁の下から糠漬けのタッパーを出して、糠の中からきゅうりを取る。水でさっと洗ったきゅうりをまな板にのせる。両端を切り落としてから、斜めに切る。

長く住んでいるであろう古い家屋、使い込まれたキッチン用具。正方形の小さなテーブルの上で、お味噌汁とご飯の朝食を美味しそうに食べる。
きっと丁寧に暮らしているんだろうなと想像できる冒頭の場面だけで、この映画が好きだ、と思った。

悟の素朴さに心をくすぐられ、悟の行きつけの喫茶店「ピアノ」で出会った女性、みゆき(波瑠さん)の気品のある美しい所作にほれぼれし、そして、

海でデートする時に、ベンチに座った2人の間に、サンドイッチを入れたバスケットのある距離感が心地よい。
伝えたいことを伝えるために、声を長い糸で伝える距離感が愛おしい。

大人の恋なのに、いや、大人すぎる恋だからこその距離感なのか。

鍋で炊くご飯の火加減を丁寧に気にかけるように、ゆっくりと、ことことと2人の恋が温まっていくのが、微笑ましくて眩しかった。いいなぁ。素敵な恋だなあ…。

悟には2人の幼なじみがいる。高木(桐谷健太さん)と、山下(浜野謙太さん)。この3人の関係性もまた温かい。みはるも含めて4人で、立ち飲みの焼き鳥屋さんで呑む場面があるのだけれど、
4人がとても楽しそうで、観ているこちらまで楽しくなった。

おそらくあの場面は、アドリブ要素が多かったのではないだろうか。漫才のツッコミとボケ、のようなテンポ感とリアルな空気感に心が和んだ。
良いなぁ、こういう関係性。ふざけ合っていても、いつでも寄り添える。何かあれば必ず駆けつける。時には、背中を押したりもする。
やけっぱちになって飲んだくれてカラオケで歌う悟を心配しながらとことん付き合う。………やけっぱちの飲んだくれだったけれど、ニノの歌声はやっぱり心に響く。いつか、また(嵐で)歌声を聴きたい………。

悟が飲んだくれていたのは、みはるが突然、消えてしまったからで…。

…この辺りから、切なくて、切なくて。
涙が止まりませんでした。


穏やかで温かい、大人の恋の物語。

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