71フラグメンツ / ミヒャエル・ハネケ
割引あり
血はゆっくりと流れる。時はゆっくりと流れる。ほとんど止まっているかのように。死にかかった生き物の呼吸のように。
***
主人公が卓球の練習をするシーンがある。背景の壁は、灰色だ。彼はただひたすらにラケットを振る。機械によって一定の間隔で飛んで来る球をひたすら打ち返す。「モダン・タイムズ」でチャップリンは軽やかに面白可笑しくこれを皮肉ったが、彼の表情は変わらない。そもそも卓球は仕事ではなく、学業でもないはずだ。自ら進んでモダン・タイムズに彼は身を置く。気持ちいいのだろうか。彼は唇に笑みを浮かべる。眼前に無文脈に現れる課題をひたすらこなすというこの様は、何かに似てはいないだろうか?
*
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?