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ユリカモメと教室

また僕の母の話だ。僕は小学校高学年になっても、あいも変わらず鳥が好きだった。家に帰ったら鳥の図鑑を読み、バードウォッチングなどにも連れて行ってもらっていた。小学校5年生の頃、家から近くの海に連れて行ってもらった時だった。その海には沢山のユリカモメがいた。当時出先にビデオカメラを持って行っていた僕は、大喜びで沢山いるユリカモメを動画で撮影した。可愛かった。そしてなにより興味津々だったのだ。嬉しさのあまり30分程動画を回し続けた。そして大満足で家に帰ろうとした時、母が「これを学校のクラスメイトたちにも見てもらおう!」と言った。「担任の先生に掛け合ってみるから、ビデオをテレビに繋いで見てもらおう!」と。幼かった僕は、特に何も考えてなかったのだろうが、自慢出来るものが増えたつもりになって嬉しかった。そして、翌週に母が学校に来て、担任の先生に経緯を説明。「給食の時間にその動画を丸々みんなで見させてもらいます。ありがとうございます。」とのことだった。そして当日、テレビに映し出されたものは無惨なものだった。ユリカモメは冬場に海に訪れる鳥なのだが、そこは日本海。波が荒立っていて、風で砂が舞い上がっていた。そしてあろうことか、撮影者が小学生の僕。左右上下にブレブレだったのだ。もちろんみんなに見せる為に撮ったわけではない、自分の趣味として撮った動画なのだから、見てもらう前提で撮っていない。30分間風の音と左右上下に揺れた動画を見せられた同級生たちは気持ち悪くなってしまい、吐き気を催してしまったのだ。中には頭が痛いと言い出す子もいた。最悪の空間だった。そこに母がいないというのが何とも母らしいのだが、今だに当時の同級生に会うと、その時の話をされる。あれはオレのせいではないと多いに弁解したい。

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