西尾維新初心者と猫飼いにはお薦めしない面構えのない猫の話
『鬼怒楯岩大吊橋ツキヌの汲めども尽きぬ随筆という題名の小説』
著者:西尾維新 装丁:ヒグチユウコ
(講談社)
はじめに
この本のタイトル『鬼怒楯岩大吊橋ツキヌ
の汲めども尽きぬ随筆という題名の小説』を
見た最初の感想は早口言葉みたい。だった。
一息で言う。それを文章で表している。要す
るに改行やスペースがない。今私が書いてい
る様な文章がハードカバーの本見開きにある
のを想像して欲しい。読みにくい。最近note
にいて、いかに読みやすく文章を小分けにす
るかに気を取られている私にはとても耳が痛
い。いや、目が痛い文章だ。そしてこの文章
を書いていてすごく気持ちが良くなっている
のは、やはり私は西尾維新の文章なくしては
今がなかったという事なのだろう。というか
文章を一息で読むって何!?
自分で思った感想なんだけど、自分でツッコんでしまう。
ちなみに
ここまでの感想はまだ1ページも読んでいない段階で書いている(笑)
さて、そろそろ読みだそう。
独特な文体と読み慣れていく作家力
何故私は「ほんともう……この人は(笑)」っていう人が好きなんでしょうね?(知らんがな)
「読みにく~(笑)」って思いながらもニヤニヤして読んでる。
自叙伝を書いている、という体の主人公鬼怒楯岩大吊橋ツキヌの視点で進んでいくのだが、三人称視点ともとれる書き方でつらつらと進んでいく。
これ、絶対作者が鬼怒楯岩大吊橋ツキヌって書きたいだけだと思うwww
“各所への配慮”へのアンチテーゼ
物語最後の方で言及されているが
冒頭、主人公ツキヌが複雑な経緯で今の職に決まった事に対して“個人的意見”である事を説明し、トントン拍子に就職が決まった人を責める意はない事を明言する。
そして例えとして出した“複雑時計”という物へも派生して時計に対するあらゆる方向からの配慮を述べだす。
全然話が進まない。
西尾維新が好きでないと読めないよ、これ(笑)
本編160ページ中63ページあたりでやっと物語が進展する。
正直に言うと、そこまでの間で何回か寝ている(笑)
ミレニアル世代でもあり、アラフォーでもある私には正直辛い(笑)
次に展開があるのは118ページ。
進展がある度に読むのが楽しくなってくる。
文体を読み慣れてきた。
というのもあるだろうけれど、やはりぶっとんだ展開をみせてくれるから面白いんだよ、単純に。
キャラクター
主人公の鬼怒楯岩大吊橋ツキヌ
ツキヌの雇い主の犬走キャットウォーク先生(脳外科医)
西尾さんの作品だし、名づけにツッコむのは野暮です。
【まあ、舞台はひょっとしたら栃木県かもしれないなとは思いますし、犬走りとキャットウォークは文字の意味も実際の物も似通っていて反対でまるで意味が違う所が楽しかったのかもしれません。】
人間はこの二人しか出てこないけど会話シーンはなく、あくまでもツキヌ視点だと思われる三人称の文体で進んでいく。
唯一先生の人格がはっきりと分かる描写が
あー、後々自分が不利になるのがわかるからこそ会話を躱すキャラ、好き。
言い淀むでもなく、あえて触れないで話を進行させていく所に
“言質を取られまい”という、ソコこそが弱い所なんだなっていうのが透けて見えて好きなんだよなぁ・・・
ズルイけど、かわいく感じる。
言葉遊び
西尾ISMの言葉遊びの真骨頂、とでも言うべきか。
こういう所大好き。
“誤字”をメタ視点で捉え語る。
そもそも、21ページの時点で何もストーリーは進んじゃいない(笑)
『本編160ページ中63ページあたりでやっと物語が進展する。』と書いたけれど、正確に言うとここまで動きがなかった訳ではない。
ツキヌのプロフィール、猫に対しての感情、雇い主の猫への感情、新たなペットシッターという職についての前向きな理解。
この全てが今までの62ページに散りばめられている。
そういう重要な情報が冗長な配慮の叙説によって引き延ばされている。
西尾さんの作品を読むとやりたくなる。
上手くないけど。言葉遊び。
実はこの記事のタイトル…
この本のタイトルの“汲めども尽きぬ”
本当に西尾さんのためにある言葉。
なんでそんなに多方面への配慮の言葉が並ぶのか。
その“配慮”でこの本の8割を占めていると言い切れる。
記事中の言葉遊びもそうだけど、もう一つ、この記事のタイトルも
『鬼怒楯岩大吊橋ツキヌの汲めども尽きぬ随筆という題名の小説』の28字しばりにしてみた。
にしても、
面構えのない猫なんてどうやったら思いつくんだ。
世の中の猫飼いはこの表現の本当の所を読むと卒倒するよ?
脳内どうなってるのか見せて欲しい。
感想に関する記事はこちらにも
創作大賞2024に応募している作品もありますので、こちらもご覧ください。
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