市役所などの行政機関への申請や届出の手続が、スマホなどからオンラインでできる機会が増えてきています。これは、2000年以降、徐々に進められてきた行政手続などのオンライン化の動きが、コロナ禍で一気に加速化されたものですが、こうしたデジタル化の背景にある法制度について、簡単にまとめておきたいと思います。
前回、手続のデジタル化等を通則的に定める主な法律について見てきましたが、今回は、行政機関のシステム性bに関する主な法律を見てみたいと思います。
行政機関のシステム整備に関する主な法律
デジタル庁設置法(2021年)
デジタル庁設置法は、デジタル庁を設置する法律で、2021年に制定されています。デジタル庁の所掌事務として、国、地方公共団体、準公共部門等の情報システムの整備・管理の基本方針をデジタル庁が策定し、推進することや、必要な予算を一括して要求することなどが定められています。
具体的には、以下のような条文が置かれています。第2項第18号の規定など、行政機関のシステム整備に関して、かなり詳細に規定されていることが見て取れると思います。
デジタル手続法(2019年)
デジタル手続法では、行政手続のデジタル化に関して、第2条でデジタル完結等の原則を掲げていることは、前回ご紹介したところですが、これらの原則を実効性あるものとするために、システム整備に関する規定が置かれており、重要な役割を果たしています。
具体的には、第4条において、オンライン化する申請等及び申請等に基づく処分通知等の範囲やシステム整備の期間などを記載する「情報システム整備計画」を国が策定しなければならないとした上で、第5条において、「情報システム整備計画」に従って情報システムを整備しなければならないと規定されています。
デジタル手続法では、行政手続等のデジタル化が「できる規定」で定められていますが、第2条でデジタル完結等の原則を掲げた上で、第4条・第5条で申請と処分通知のシステム整備の義務を課すことで、デジタル化を推進するスキームとなっているわけです。
このように、システム整備の面から行政手続のデジタル化を推進することを規定している点が、デジタル手続法の一つの特徴となっています。なお、これらのシステム整備に関する規定は、2019年に行政手続オンライン化法からデジタル手続法に改正された際に、新設されたものです。
官民データ活用推進基本法(2016年)
2016年に制定された官民データ活用推進基本法では、横断的なデータ利用の観点から、国・自治体等の情報システム相互の連携等について規定が置かれています。
ここでは、条文の引用にとどめますが、後でご紹介する「自治体システム標準化法」の制定につながるような内容となっています。
デジタル社会形成基本法(2021年)
デジタル社会形成基本法にも、国と自治体のシステムの共同化についての規定が置かれています。条文中に、官民データ活用基本法が引用されているように、国民の利便性向上や行政運営の向上といった理念に加え、データの活用の重要性が意識された規定になっています。
自治体システム標準化法(2021年)
自治体システム標準化法は、地方自治体の情報システムについて、必要な機能などの基準を策定し、自治体のシステムの標準化を推進するという内容の法律で、正式名称は、「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律」です。デジタル庁設置法、デジタル社会形成基本法などとともに、2021年に制定されています。
これまで、地方自治体のシステムについては、各自治体が独自に構築してきたため、バラバラの仕様となっていて、システム間での情報連携などが難しいといった課題がありましたが、この法律の下で、各自治体で実施されているような事務については、そのシステムの標準化が図られることとなりました。
標準化の対象となるシステムについては、第2条で規定されており、各自治体で共通するような事務を政令で定めることとされています。
この規定を受けて、「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律第二条第一項に規定する標準化対象事務を定める政令」で、児童手当の支給など18の事務が標準化対象事務として定められています。
以上になります。今回取り上げた法律のうち、デジタル社会形成基本法、デジタル庁設置法、自治体システム標準化法は、いずれも2021年に一括的に審議・成立したものです。システムに関する法律の整備は、この際に大きく進んだと言えると思います。います。。
行政手続に関する法制度については、以上としたいと思います。
次回からは、民間手続や電子契約などに関する法制度を見ていけたらと思います。