【連続小説】 羊たちが眠る夜は 5
自己紹介を終えると、ちょうど時計の鐘が鳴った。
「そろそろ家に帰るよ」
「そう、あたしはまだここに残るわ。でも、夕方になったらまた帰って来てほしいの」
「どうして?」と僕はマリーに尋ねた。
「前に変な人が来たの。狼のマークが入った帽子を被った男よ。その男はある本を探していると言ってきたの。おそらく、男が探しているのはこの魔法書だと思うわ」
「男にはなんて答えたの?」
「もちろん、この図書館にはそんな本はないと答えたわ。でも、しつこいの、その男。なかなか帰ろうとしなくて」
「なんで、その男は魔法書のことを知っていたんだろう?」
「さあ、分からないわ。でも、絶対に渡さない。魔法はあたしにしか使えないもの」
「分かった。また夕方には帰って来るよ」
僕はマリーに約束し、図書館を後にした。(つづく)