「アザーズ(other's)」5話

〇ヴァラスキャルブ前

  ケイM「ここからサルべ村まで歩いて3日。本当だったらのんびり行きたいところではあるが、事情が事情だしな。」
  ケイ「巻きで行くか。」
  コウタ「お前もこれから出るとこか?」
  ケイ「おう、コウタ。俺は今から人員救助だ。そっちは?」
  コウタ「俺は、バクの駆除だ。隣村のトルクだと、すでに現地に向かってるリンさんの援護だな。」
  ケイ「あの人がいるならそっちはすぐ終わりそうだな。」
  コウタ「結構めんどくさい仕事なん?そちらさん」
  ケイ「いや単純な話よ?いくのがめんどくせえっていうw」
  コウタ「早く帰ってこいよ。ペレちゃんの歓迎会も兼ねて飲み明かそうぜ。」
  ケイ「ワタリガラス流を見せてやるか!」
  
  そう話して、二人は別れた。
  ケイは一人歩いてサルべ村に向かう。

〇サルべ村内のとある洞窟
  ラウィーネ「相変わらず辛気臭い場所だね、ここ」
  卑弥呼「・・・」
  ラウィーネ「はあい♡。元気してる?」
       「突然で悪いんだけどさ。君移動するよこれから。」
       「ワタリガラスの連中がここに来るだろうからさ。
        君を渡すのはさすがにもったいないからね。」
  卑弥呼「・・そのわりには、ペレを簡単に渡したね・・」
  ラウィーネ「・・・」
  ラウィーネは卑弥呼の前髪をつかみグイっと自分の方に手繰り寄せた。
  ラウィーネ「あの子は特別なの・・。誰にも止められない。」
  卑弥呼は力のない目でラウィーネを見上げる。
  卑弥呼「・・一人。こっちに向かってくるよ。」
  ラウィーネ「あらちょうどいい。ここで始末していこうかしら。」
  卑弥呼「ペレを助けてくれた・・ケイさんが来る。」
  ラウィーネ「・・・。ふうん。」

〇ヴァラスキャルブ訓練場
  ペレ「趣味・・?」
  シルヴィア「そう。なんでもいいぞ。自分が好きで熱中出来るものならな。」
  ペレは目線を下に向け、考える。
  シルヴィア「さっきも言った通り、能力を使うのに不可欠なのは集中力。それを鍛えるためには、趣味に没頭することが第1段階になるんだ。」
  ペレ「趣味か・・。あんまりわからない。」
    「だって、ケイに助けてもらうまで、戦うこと以外の生きる術を知らなかったから。」
    「自分の好きなことなんて考えもしなかった。」
  シルヴィア「そうか・・。」
       「なら仕方ない。普通はこうやって趣味から集中力を挙げていくものなのだが、今回はいきなり特訓に入るとしよう。」
  ペレ「え、それでいいの?」
  シルヴィア「もちろんあるに越したことはないが・・」 
       「お友達、早く助けに行きたいんだろう?」
  ペレの表情がぱあっと明るくなる。
  シルヴィア「いいか趣味や好みを見つけるということは自分を知るということだ。つまり、集中力とはうちの自分と向き合うこと。それに終わりはない。自分が死ぬまでな。自己分析は日々行うように。わかったな?」
  ペレ「うん!」
  ペレ「それで!?どうするのさ!」
  シルヴィア「ゆっくりしてる時間はないからな。やはり実践が一番いいだろう。」
       「私はいまから、お前を殺しにかかる。死ぬ気で抗え。その中で自分の力を使いな。」
  シルヴィアは悪い顔で笑う。
  ペレは苦笑いをし、汗をかきながら思った。
  ペレM「あ、やっぱこの人教えるの下手だな・・。」

〇ヴァラスキャルブ作戦本部

  ??「あら、誰か訓練場使ってる?」
  ロコ「あ、サクヤさん!」
    「今、新入りのペレちゃんとシルヴィアさんが使ってます!」
  サクヤ「シルヴィアさんが教えてるの?大丈夫?」
     (あの人教えるの下手だからな・・)
  黒髪のおかっぱ頭で、スタイル抜群。お姉さん気質の雰囲気漂うサクヤと呼ばれる女性は、腰かけていった。
  サクヤ「リンはまだ帰ってこないみたいだし、ケイちゃんはすれ違いになったみたいだし・・」
     「暇ねえ・・」
     「わたし料理でも作ってるわね!」
   ロコ「どうしたんすか急に?」
  サクヤ「だって、リン、コウタ、ケイちゃんが揃って任務がえりなわけでしょう?だったらもう騒ぐしかないじゃない。」
   ロコ「うへえ、あの地獄絵図がまた・・。今のうち掃除業者に電話しといたほうがいいすかね。」
  サクヤ「くすっ。たぶんね。」
  サクヤ「でも、いいわよね。楽しいことが待ってるって」
     「何もすることが無いこのときも、特別になるわ。」
   ロコ「・・そうっすね。」
  ロコは少し寂しげに笑いながら言った。

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