アザーズ(other's)6話

〇サルべ村周辺の森

  ケイはサルべ村周辺の森まで来ていた。ここまでの道程は1日
  半。通常よりも半日巻いている。カゲルが以前言った「あいつ」とは何なのか。ケイは何かしらの情報を得るためにも急いでいた。

  ケイM「そもそもの話・・。ペレがつけている指輪は、自分の能力を操作するためのもの。本人以外が持ち得るはずがねえんだ。
しかもあんな一般人が持つものじゃない。」 

****
カゲル「俺はあいつにそそのかされて!」
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  ケイM「『あいつ』の正体は知っトク必要がある。指輪をあのバカ(カゲル)に持たせた連中は、バクの力を振りまくように、もしくは俺たちワタリガラスを消すようにそそのかされていたはず。つまり、俺たち(ワタリガラス)に敵対している可能性は高い。」

そんなことを言いながら村に向かっているケイは、あるものに目が留まり足を止めた。慎重に近づく。
  ケイM「雪‥っていうか氷?こんな時期にか?」
     「しかも、ここはカゲルとやりあった近く・・」
  ザっ‥。
  ケイ「!!」
  ケイは音と同時に振り向く。

振り向くとそこには、ワンピース姿のラウィーネがいた。
ケイは表情は変えずにため息を一つつき、声をかけた。
  ケイ「君は?」
  ラウィーネ「私ラウィーネ。1人で村の外に出たら帰れなくなっちゃって・・」
  ケイは表情を変えずにラウィーネを見つめる。
  ケイ「ちょうどいい。俺も村に用事があるんだ。送っていくよ。」
  ラウィーネはケイのその様子をさみしそうな表情で見つめていた。

〇サルべ村周辺の森道中

  ラウィーネ「お兄さんはさ・・」
  ケイ「あ、俺ケイね。」
  ラウィーネ「ケイは何しに来たの?」
  ケイ「いやあ、ただの観光だよ。」
    「この村は酒がおいしくてな。」
  ラウィーネ「今のご時世に旅行!?ずいぶん気合がはいってるね。」
  ケイ「君は?なんで急に飛び出してきたんだ?」
  ラウィーネ「さあね、飛び出して、振り返らず、そのまま進んでいたら、帰るべき道を見失ってしまったの・・。」
  ラウィーネはケイから視線をそらしていった。
  ラウィーネ「君はさ、人が夢を見ることってどう思ってる?」
  ケイ「え・・。どうしたんだ?急に」
  ラウィーネ「だってさ、今ご時世夢見たってしょうがないじゃンか。夢を持ってても、そこら中にいるバクの餌になるだけだよ。
バクは記憶を食べるけど、夢が大好物。1番最初に狙われちゃうよ。」
  「だから、人が夢を見るのは無駄なんじゃないかなっって私は思うのよ。」
  ケイ「そういう考えも確かにあるわな。けど俺は。人は夢を見て夢を追いかけるべき生き物だと思う。」
  ラウィーネ「・・どうして?」
  ケイ「だって、夢がないと・・」
    「何のために生きてるかわからないじゃん・・」
  ケイは笑顔でそう言った。
  ラウィーネはじっとケイを見つめていた。
  ラウィーネ「・・・ケイ・・」
  ケイ「ん?」
  ケイはラウィーネに呼びかけられラウィーネの顔を見つめた。
  ラウィーネの顔半分は氷に覆われていた。半分の顔はさみしそうに笑っていた。氷が若干溶けたのか、目頭の部分から水滴が垂れた。
  ラウィーネ「もう気づいてるんでしょ・・?私はバク。氷を残しといたのは失敗だったなー。」
  ケイは表情を変えなかった。ただまっすぐラウィーネの顔を見つめる。
  ケイM「コイツが・・」
  ラウィーネ「消さないの?私がいつ攻撃するかわからないのに。」
  ケイ「その気なら、最初からそうしてるだろ。俺とお前どっちが強いかなんてのはやって見なきゃわからんが、おそらく無事ではいられないだろ、二人ともな。」
  ラウィーネ「自信あるんだね。」
  ケイ「自信がなきゃ一人でこんなところに来ねえよ。」
  ラウィーネ「ケイ、私のことどう思う?」
  ケイ「・・・」
  ラウィーネはさみしそうに笑いながら問いかけた。
  ケイ「俺じゃなくてもよく言われるだろ?綺麗だよ。そこらのやつらと比べてもな。」
  ラウィーネはあっけにとられたような顔をした。
  ラウィーネ「あっはっははっはっはっは!!」
  ラウィーネは腹を抱えて笑い出した。
  ケイは恥ずかしそうに顔を赤らめている。
  ケイ「なんだよ!本当の子といっただけじゃねえか!」
  ラウィーネ「いやさ、ふつう、怖いとか、バクなんだ、とか、さ
        なんでコイツこん、な普通に会話してるんだよとかそんな感想でしょww」
  ケイは顔を赤らめてしかめっ面をしたまま前を向いた。
  ラウィーネはその様子を見つめて言う。
  ラウィーネ「2回目だよ、私にそういってくれたのは、君で・・」
  二人はそろそろ村につく手前まで来ていた。
  ケイ「で、用件は?戦いに来たんじゃないんだろ?」
  ラウィーネ「これだよ。」
  ケイ「は?」
  ラウィーネ「君に・・、今のことを聞いておきたかった。」
  ケイ「・・・」
  ラウィーネ「私のお願い聞いてもらったから、私も一つ聞いてあげるよ、君のお願い。」
  ケイ「・・・、カゲルに指輪を渡して、『ワタリガラス』をつぶすよう命令したのはお前か?」
  ラウィーネ「そうだよ。けど命令は違う。私たちは人間全員が死ねばいいと思ってる、けど一気にやりたいからね。今は部隊を整えてるってところかな。」
  ケイ「卑弥呼を渡してもらう。」
  ラウィーネ「お願いは一つって言ったよね・・。それはできないな。」
       「それに、あの子は卑弥呼なんて名前じゃない!それは人間が勝手につけた蔑称なの!」
  ケイ「・・・、お前とは違う出会い方をしたかった。」
  ラウィーネ「・・・。洞窟で待ってるから。」
  ラウィーネは背を向け、立ち去ろうとする。
  その瞬間、ケイは武器を取り出しラウィーネの背中を一突きで刺した。
  ケイ「待てるかよ・・てめえは今ここで殺す!」
  ラウィーネは少し笑顔で、ケイを見つめる。
  戦いの火蓋が今、きられる。



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