『Doki Doki Literature Club!』 劇内詩『The Raccoon』 を思うままに訳してみる
DDLCの日本語化Modは名訳が多く思わず唸ってしまいます。私も感心してばかりですが、自分なりに訳を作ってみようと思い立ち、Yuriの詩である『The Racoon』を訳し下ろして見ることにしました。稚拙な訳でかつ公式/非公式訳を殆ど変わらず採用した部分もありますので、ご容赦ください。原文、その下に訳出を記します。加えて、何か特筆すべき点があれば下にかっこで書き足します。
日本語訳
The Raccoon
アライグマ
It happened in the dead of night while I was slicing bread for a guilty snack.
それは深夜、密やかに夜食のためのパンを切っている時であった。
My attention was caught by the scuttering of a raccoon outside my window.
私の目を捉ふるは、窓の外をあちらこちらと立ち彷徨うアライグマ。
(scutteringについては①scatteringとの誤字説と②イギリスで主に使われるscurryingの別表現という二つの可能性を考慮しましたが、極力②に寄せた訳出にしました。scurryingは慌てて走り回るという意味ですが、「立ち彷徨う」が雰囲気を崩さない用な訳だと勝手に思っています)
That was, I believe, the first time I noticed my strange tendencies as an unordinary human.
思えば、ただならぬ私の異様なる性向に気付く最初の瞬間だった。
I gave the raccoon a piece of bread, my subconscious well aware of the consequences.
心の奥底ではその結末を解っていながら、アライグマにパンを一切れ渡す。
(subconsciousを素直に深層意識と訳し、Yuriっぽさを出すのも悪くないと思ったのですがその勇気も無く、後半も知っているを伝えると書き換えようとしましたが意訳がすぎる気がします)
The enticing beauty of my cutting knife was the symptom.
ナイフが私を魅惑する――症状と化したのだ。
(「蠱惑するナイフが症状でした」が素晴らしい訳だと心から思っております。ですが、SVを丁寧に取ればbeautyがsymptomであると解釈できます。故に私はそちらを重視してみました)
The bread, my hungry curiosity.
The raccoon, an urge.
パンは、飢えたる好奇心。
アライグマは、衝動。
The moon increments its phase and reflects that much more light off of my cutting knife.
月は満ちゆき、ナイフは艶やかな光を映す。
The very same light that glistens in the eyes of my raccoon friend.
アライグマの目に煌めきたるはまさしくその光。
I slice the bread, fresh and soft. The raccoon becomes excited.
新鮮で柔らかいパンを切る。逸るアライグマ。
(逸るという訳出が完璧すぎる)
or perhaps I'm merely projecting my emotions onto the newly-satisfied animal.
はたや、再び満たされた獣に自己を投影しているのみか。
The raccoon has taken to following me.
アライグマはすっかり私に懐いた。
You could say that we've gotten quite used to each other.
互いに躊躇しない関係になったといえよう。
The raccoon becomes hungry more and more frequently, so my bread is always handy.
アライグマはますます欲しがる、だからパンは欠かせない。
Every time I brandish my cutting knife the raccoon shows me its excitement.
ナイフを見せればアライグマは興奮を以て応える。
A rush of blood. Classic Pavlovian conditioning. I slice the bread.
血の滾り。パブロフ型古典的条件付け。パンにナイフを滑らせて――。
(少し示唆的に)
And I feed myself again.
そうして私は私を餌付けする。
日本語だけを繋げてみる
アライグマ
それは深夜、密やかに夜食のためのパンを切っている時であった。
私の目を捉ふるは、窓の外をあちらこちらと立ち彷徨うアライグマ。
思えば、ただならぬ私の異様なる性向に気付く最初の瞬間だった。
心の奥底ではその結末を解っていながら、アライグマにパンを一切れ渡す。
ナイフが私を魅惑する――症状と化したのだ。
パンは、飢えたる好奇心。
アライグマは、衝動。
月は満ちゆき、ナイフは艶やかな光を映す。
アライグマの目に煌めきたるはまさしくその光。
新鮮で柔らかいパンを切る。逸るアライグマ。
はたや、再び満たされた獣に自己を投影しているのみか。
アライグマはすっかり私に懐いた。
互いに躊躇しない関係になったといえよう。
アライグマはますます欲しがる、だからパンは欠かせない。
ナイフを見せればアライグマは興奮を以て応える。
血の滾り。パブロフ型古典的条件付け。パンにナイフを滑らせて――。
そうして、私は私を餌付けする。
感想
難しかったけど楽しかったです(さしあたりもない感想)。
もう少し丁寧にできたらいいなと思います。
DDLC翻訳班に敬意を込めて。