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「不動産が持つ3つの特質」さえ理解しておけば、後々役立つかもしれません

このタイトルで文章を書きまとめてみよう、と思ったきっかけは2つあります。

ひとつは「人生100年が珍しくなくなるだろう」という新聞記事を目にしたから。そこには、人が130歳まで生存する時代がまもなく訪れるそうだ、とのこと。

長寿そのものは良いことです。が、一方で気になることも多々あります。

そのひとつが、他でもない「」です。

日本財団の調査によれば、
Qあなたは、死期が迫っているとわかったときに、人生の最期をどこで迎えたいですか。
に対して、「自宅」と答えた人が58.8%もいらっしゃいました。
一方、避けたい場所として「子の家」42.1%、「介護施設」34.4%となっています。

データ出典:「人生の最期の迎え方に関する全国調査」(日本財団) (https://www.nippon-foundation.or.jp/who/news/pr/2021/20210329-55543.html)(2022年1月20日に利用)

皆さんは100歳を超えたときの体力でも快適に過ごせる住まいは、どのような条件を備えていれば良いか考えたことがありますか。バリアフリーや高い断熱性。それ以外にも、修繕の手間がかからないことや、火事など事故が起きにくい、災害に強い等々色々な方面に思いが及ぶことと思います。

また、「自分が100歳になった時に修繕の手間がかからない家」はいったい「いつ建てたらいいのだろう?」と考え込んでしまいませんか。仮に定年(65歳)になって建てたとしても、築35年。一般的な住宅であれば屋根や外壁メンテナンスなど、一番お金がかかりそうな年代に突入するわけです。

100歳になったときに、果たしてそれだけの経済力が残っているのか。そもそも定年のときに家を新築するという話自体あまり聞きません。要するに、長生きはいいけど不安は尽きない、ということです。

大事なことは、「どうすればこの長期戦を凌いでいけるか?」身体も頭も良く働く年代(少なくとも現役時代の間)にあれこれと考えておくことではないでしょうか。抜本的な解決策は見いだせないかもしれませんが、住まいは往々にしてまとまったお金が必要なだけに、準備する期間、思考する時間はたっぷり取っておいたほうが良さそうです。

 きっかけのもうひとつは、とくに今の30代~40代の世代の人たちは「都心のマンションは値下がりしない」と勘違いしているのでないか?と思ったからです。

ある分譲マンションの口コミサイトを見た際、「値上がりする前に買っておけ」だの「転売」だの、あたかもキャピタルゲインを得ることが前提のような言い回しが多いことに驚きました。

アベノミクスの第一の矢「異次元の金融緩和」により、都心の不動産、とりわけ分譲マンションの価格は確かに高騰しました。

東京五輪招致決定に伴う都市インフラの再整備や大型再開発プロジェクトの進行、さらには相続税改正など様々要因が絡んではいますが、不動産価格が上昇した最も効果的だった原因は「借入金利の低下」に他なりません。

マンションの利用価値が上がったのではなく、同じ返済額で、何割も高い値段の物件が買えるようになったからです。この事実を見逃してはいけません。

無論、利用価値の高まりによって、地域の不動産の経済価値が上昇した例もあるでしょう。

羽田と都心を結ぶ首都高に直結する環状二号線「新虎通り」と地下鉄新駅開業に伴う「虎ノ門」界隈、リニア開通期待とあわせて山手線新駅「高輪ゲートウェイ」駅周辺の品川駅から泉岳寺界隈などはその好例です。

しかし、凡その「マンションの資産価値を求めて物件を物色する傾向は、それら以外の広範囲に及びその根拠はあまりに乏しく否、無いに等しいと思えます

原因のひとつには、アベノミクスによる超低金利の環境下で「不動産は値上がりするものだ」という慣れ・感覚が染みついているからではないでしょうか。9年も続いたわけですから無理もない、とも思えます。

初めてマイホームを購入する年齢は、多くの世帯が30代中盤から40代までくらいです。

その人たちの9年前といえば、20代半ばで「仕事も覚えてバリバリ働き始める中堅の仲間入り」世代であり、「家族を持ち、会社の中では役職や責任を伴い出す」30歳前後の世代の人たちということになります。

キャリアを形成しはじめる、あるいは私生活の基盤を築きはじめる、そんな時期とアベノミクスがピタリと重なり、そしていよいよ今「自分もマイホームを買うときが来た」と決意するタイミングを迎えている、ということなのでしょう。

だとすると、強気な理由がわからなくもありません。ちょっと冷静に、といっても「この9年の変化がすべて」と返されるのがオチです。

この話を、50代以上の人たちが聞けば、おそらくこう言うでしょう。
「バブル崩壊を知らないからだ」と。

株と違って、不動産は波の周期が長いです。大きく振れた後は、逆にも大きく振れる傾向があります。いずれにしろ、世代を超えて「あの時代はこうだった」とか「歴史は繰り返す」とか、都市伝説のような言い回しは伝わり難いと考えます。

前置きが長くなりましたが、人生100年時代に準備せざるを得ない「その時、快適な家」を見つけるにあたって「その過程で失敗しない」ために、いや、仮に失敗したとしても「時間をかけて挽回を図るため」、ここに不動産が本来持ちうる特質を書き留めておきたいと思います。

まわりくどいと思われるかもしれませんが、何事も原理原則を理解しておくことが肝心です。

私は、今年社会人36年目ですが、いまだに新人時代に先輩上司から教えていただいた「不動産とは」をテーマとした講義を思い出すことがあります。

不動産は同じものがひとつとしてなく、その取引自体も一様ではありません。

数多くの経験を通して得た、不動産ならではの普遍的な性質をつい先日まで学生だった若者に語り伝えてくれるわけです。新入社員の特権です。

さらに30数年の間に数名の業界人から見聞きしたことを加えて、「不動産ならではの特質」として以下3つにまとめます。

1. 土地は有限、建物は無限
2. 人に貸して対価が得られる唯一の財
3. その価値は時間、ひと、属する地域の盛衰によって変化する

断っておきますが、これら3つの特質をして、理想の家は〇〇だ、と何かしらの解を示すものではありません。あなたの最適解は、あなた自身が導き出すしかないのです。3つの特質は、その過程で何かしら役に立つ情報になるはずだ、と思い記します。

では、それぞれ解説していきましょう。


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