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マンションの売出価格は「取引事例比較法」を用いて算出します。が、湾岸エリアは例外です。

不動産には、定価という概念がありません。

たしかに、新規分譲では売主である不動産会社が前もって販売価格を決めはしますが、それも売り出し直前まで反響者(来訪者・検討者)の予算をみながら、折り合いのつく値段=ある程度の期間内で完売できる価格を探った上で決めているのです。

要するに、不動産の売買契約に至る価格は、売主と買主の相対で決まるものと思って差し支えありません。

では、その数字は、いかにして導き出されるのでしょうか?

これには、複数のアプローチがあるのですが、マイホームを想定したマンションでは、取引事例比較法を用いて算出するのが一般的です。

取引事例比較法を説明する前に、
なぜ「マイホームを想定したマンションでは」と前置きしたのかを説明します。

マイホームを、と限定したのは投資を目的とした収益物件の場合では計算の仕方がまったく異なるからです。

また、マンションでは、と限定したのは、戸建ての場合では「土地を公示地価や路線価」を参考に「建物は構造から耐用年数と経過年数」を元に計算して調整するのですが、区分所有と定義されたマンションは土地と建物を分けて計算することが困難で、そもそも土地と建物は切り離して取引することができないため、戸建ての算出方法を応用することはしません。

ここからは、マンションに限定して話を進めます。

不動産は、同じものがふたつと存在しないことが特徴のひとつだといわれています。

しかし、分譲マンションは、ご存知の通り同じような広さ(や間取り)の住宅が縦(または横)に並んで構成されるケースが多いです。

したがって、もし同じマンション内で売買事例があった場合、それを参考に値付けをする(正確には「売出希望価格」を決める)ことはごく自然なことであり、至って合理的です。

非常にわかりやすい例でいうと、対象となる部屋の真上の住戸が3ヵ月以内に売買事例としてあるなら、それを根拠に売出希望価格を決めるのが、最も購入検討者が納得しやすい設定になるだろう、ということです。

その名称からも想像できるように、取引事例比較法とは、条件の近い地域周辺の売買事例を集め、その中から最も参考になると思われる事例をもとに、個別要因となる「築年数」「階数」「向き」「設備」「間口部」等の違いを比較しながら数字を補正し、最終的な数値を決めていく方法です。現実には数値に幅をもたせ、基本的にはその範囲の中から売主が希望する価格を決定します。

ここからは個人的な見解となりますが、取引事例比較法を用いて価格が決められるマンションの場合、その事例が豊富なほど市場は活性化しやすい傾向があるのではないかと考えます。

活性化しやすいとは、
・買い手が付きやすい
・決断しやすい(検討期間が短い)
・売ろうと思えばいつでも売れるとオーナーが認識する
・よって、取引量が安定している(または増加見込みがある)
という意味です。具体的には都心部が当てはまると思われます。

価格相場の高い都心部で、上記のような活性化要因が見込めるなら、物件価格に対して「3%+6万円」(税別)の報酬(仲介手数料)が狙える不動産仲介業は参入のしがいのある市場だといえます。実際、大手を中心にその競争は激化しています。

さて、ここまで「マンション特有の価格相場形成のあり方」や「活性化しやすい都心部のマンション市場」さらには「流通を円滑に取り仕切る仲介業者の参入」等について解説してきたわけですが、ここで留意していただきたいのは、都心部にありながら湾岸エリアはこのメカニズムに一部該当しない点があるということです。

その理由を、少し時代をさかのぼって解説します。


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