日本語の「あいまいさ」に苦労(中国語翻訳・通訳者 谢 沛睿さん:その2)
「結局、『良い』の? 『ダメ』なの?」
F: 日本に来て特に言葉で困ったことや、日本と中国の文化ギャップで悩んだことがありますか?
初めて日本に来て仕事を探したとき、電話で日本人が何を言っているかまったく聞き取れませんでした。
僕は一生懸命聞くんですね。面接のこととか、時間とか……。電話を切ってから「いったいどんな話だったのか」と考えこんでしまって。
初めて聞く言葉が多かったし、緊張でさらにわからなくなって。
あとでわかったことなんですけど、「遠回しの言い方」だったんですね。
日本人は「だめ」なこと(否定的なこと)をストレートに言わず、遠回しに言いますよね。
ほかの国の人も同じように感じていると思います。
だめなら「だめ」と、無理なら「無理」と言ってほしい。
無理なら「無理」という一言で済むのに、いっぱい話をしてから、「やっぱり無理っていうことなのかな」と推測しなきゃいけない。
大学のレポートをあえて遠まわしな表現で書いて提出したら……。
あるとき、(日本語で)文章を書く課題がありました。
そこで、僕はわざと遠回しに書いたんですよ(笑)。
そしたら先生がストレートな表現で書くようにすすめてきたので、「日本人は遠回しな言い方をするじゃないですか」と僕が反論すると、「はっきりとした文章のほうがいいです」と言われました。
はっきり言うべきところと、遠回しに言うべきところが、あんまり区別できません。もう日本に来て20年になりますが……。
文化の違い……慣れるのは大変
知り合いの日本人は、僕のことをわかってくれているので、向こうもはっきりと言ってくれます。
しかし、あまり知らない人に僕がはっきり言うと、相手から「はっきり言いますね」と驚かれることがあります。
僕はその人を傷つけてしまったんじゃないかって心配します。
日本人は傷つきやすい人が多いんだなと感じます。
そこが今でも慣れないところなんですよ。遠回しな話し方をしなきゃいけないのがちょっと大変です。
たぶん「文化が違う」ということなんですよ。
わかるけど、でもやっぱり遠回しな表現でのやりとりは疲れるし、シンプルが一番いいと思います。
日本語を使いこなし、要人の通訳もこなすなど輝かしいキャリアを持つ謝さん。そんな謝さんですら日本特有のあいまいな表現には今でも戸惑いと難しさを感じているとのこと。
日本における多文化共生は、「語学+α」の部分において外国から来た人々の血のにじむような努力が背景にあることを忘れてはいけないと思いました。
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