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地球規模の水循環を気付かせてくれた八潮市の道路陥没


僅かな淡水を持続的に使える理由

地球の表面にある水の内、海水などの塩水が97.47%、淡水が2.53%の割合。このほとんどが南極・北極等の氷や氷河として存在する水や地下水であり、人が容易に利用できる河川や湖沼等の水として存在する淡水は、地球上に存在する水の量のわずか0.008%、1万分の1。浴槽の水を地球上の水に例えると、その量は大さじ一杯分のイメージです。

   ※このことは、以前の投稿で取り上げました。
   「琵琶湖の水止めたろか」の日本と国際問題|ファブナード株式会社

と言われると、そんなに僅かな水を、地球人口80億人で分けないとならないのか! となりがちですが、厳密にはそうではありません。

地球上の水は、常に同じ場所に留まっているのではなく、太陽のエネルギーによって海水や地表面の水が蒸発し、上空で雲になり、やがて雨や雪になって地表面に降り、それが集まり川となり海に至るというように、絶えまなく循環しています。

この水循環により、海水も蒸発する際に淡水化され、人間が利用可能な淡水が常時作られています。このため、持続的に使える水の量は、ある瞬間に河川や湖沼等の水として存在する淡水の量ではなく、絶えず「循環する水」の一部です。この水循環を持続的に保つことが極めて重要となります。

広島市HPより※水資源再生センターは下水処理場

水循環における下水道の重要な役割

下水道は、私たちの生活を支える上で非常に重要な役割を果たしています。その役割は、水循環という大きな枠組みの中で捉えると、より理解しやすくなります。

家庭や工場から排出された大量の汚水は、下水道管を通って下水処理場に集められます。下水処理場では、微生物の働きを利用しています。利用して汚水中の有機物や不純物を取り除き、水質が浄化され、河川や海などに放流されます。

ここで大切なことがあります。普段の生活の中では、単に汚い水を流す方法として見がちなこの下水道は水循環という大きな枠組みの中では、それは回り回って、人間に戻ってくる仕組みの一部であるということです。

ですので、八潮市の道路陥没の出来事を通し、水循環を支えている下水道の仕組みを少しでも広めることが、この投稿の目的となります。

下水道の老朽化と相次ぐ陥没

(1)下水道管の現状

全国の下水道管渠の総延長 約49万km(R4年度末)地球 約11周分

50年
を経過した下水道管

2022年度末 約3万km 約 7%
    ↓
2032年度 約9万km  約19%
    ↓
2042年度 約20万km 約40%

国交省HPより
国交省HPより


(2)全国下水道管路施設に起因した道路陥没件数(地震の陥没を除く)

道路の陥没件数 1万548件
     ↓
下水道管などに起因約2600件(R4年)

国交省HPより
国交省HPより

上の棒グラフを見る限り、近年の下水道起因の陥没件数は減少しています。理由は、下水道管路の耐震化が72%まで進んできた為と思われます。
しかし、病院、警察、消防など重要施設に接続する下水道管路の耐震化は、約51%にとどまることや、老朽化が急速に進んでいる現状から、全国どこでもこのような陥没が増えるリスクがあると考えて良いでしょう。

八潮市の道路陥没の状況と原因

八潮市で陥没が発生した下水道管は直径4.75m。下水処理場に近く、近隣からの下水が集まる為、巨大になっている。

(ANN NEWSより)

<状況>
埼玉県によると、
①直径4.75mの下水道管が腐食し破損
その上に流れていた雨水管が宙釣りになり、自重で崩落し陥没が拡大

損傷した雨水管からの漏水で陥没穴が拡大、埼玉・八潮 | 日経クロステック(xTECH)

日経クロステック資料に筆者が吹き出しを追記


<原因>
下水道管が埋設された場所はカーブしていた。カーブの内側は生ごみなどの有機物がたまりやすく、硫化水素が発生して、腐食が進行した可能性がある。(芝浦工業大学 稲積真哉教授)

原因には意外な落とし穴 ~分流式の下水道~

日本の下水道普及率は都道府県ごとに大きな差があるものの、平均すると81%(下水道利用人口/総人口)です。
   参考:”県ごとにこんなに差がある!下水道普及率

そして、下水を下水処理場まで送る方式には、分流式と合流式の二つがあります。(八潮市の下水道は分流方式)

<合流式>
・管路が1本で済み、埋設・維持費が少なく、他の地下埋設物と干渉少ない
・管径が大、勾配が小である為、汚物の管内堆積が多め
・対応可能な流量を超えると、未処理の汚水が河川などに放流されるため、 水質汚濁を招く可能性

<分流式>
・管路が2本必要で、埋設・維持費大、他の地下埋設物との干渉は当然多い
・汚水は下水処理場で処理される為、河川や海への流出による水質汚濁なし
・道路などが汚れていた場合は、雨水はその汚れとともに河川や海に放流

東京都下水道局HPより

大きな都市では分流式が多く、八潮市も分流式の下水道となっています。
今回は、破損した下水道管の上部に設置されている雨水管も破損し、
そこから水が流入したことも陥没が拡大した原因
と県発表にありました。

専門家の方も次のようにコメントしています。

下水と雨水を分ける分流だからこそ、水が汚れやすく(雨で薄まらない)、硫化水素が発生しやすい可能性がある。これまで環境のためには分流式がよいと思ってきたが、このデメリットも認識。

WaterAid Japan、NPO法人 地域水道支援センター理事の橋本先生

今後、埼玉県が第3者委員会での調査を予定しているので、この分流式のデメリットなども、もっと明らかになると思います。

まとめ

如何でしたでしょうか。
水の循環に大切な役割を果たしている下水道(もちろん上水道も)。

日本では、1884年に初の近代下水道の神田下水が整備され、1922年に初めてできた下水処理場が東京三河島汚水処分場です。(NOTE 水ワクLaboさん:上下水道の歴史
その後、下水道の整備が進み、特に人口の多い地域では、河川がきれいになり、臭いもなくなってゆきます。そのお蔭で、下水道の存在を忘れるほど快適な生活が遅れています。

世界に目を向ければ、発展途上国を中心に上下水道が整備されていないところは今でもたくさんあります。先進国でも、映画「ショーシャンクの空に」の脱獄のシーンでは、最後に、汚水で流れる配水管を通り抜けた先が川だったから脱獄できた訳で、この時代の人は、否応なく下水を意識していたはずです。

今回の件は、改めて、下水道は当たり前のものではなく、人が快適に生活する為の大切な水循環の一部だと気が付かせてくれてた一件となっています。


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