スクラム採用を通じたPBLが組織力の礎になる話
弊社では、スクラム採用という全社員参加型の採用形式を一つの理想と掲げ、HERP Hireおよびその他のサービスの開発・提供と、カスタマーサクセス・コンサルティングを通じた直接のご支援を通じて理想の採用の形と求職者の皆様の体験品質の向上に取り組んでいます。
※スクラム採用については、下記ページをご参照ください。
先日、PBL研修事業を営んでいる秋山さんと、DNX Venturesの井無田さんと話をしていて、私は気づきました。企業の組織力を向上する上で、経営陣と従業員が健全な対話をし続けること、そしてそれがカルチャーになっていくことが必要不可欠であり、スクラム採用にはその要素が詰め込まれていると。今回のブログはその気づきについてシェアしてみます。
昨今のスタートアップ経営に求められる組織力
多くのスタートアップ関係者とお話をしていて、年々スタートアップの組織力の重要性が上がっていると感じます。その背景はスタートアップの経営が短期・単線(一つのサービスで突き抜けて売り抜く)から、長期・複線(数百億・数千億を意識して経営し、複数サービスを運営する)に変わってきていることにより一定大きな組織を作ることが必要条件化してきていることにあると思います。
その組織力が何を意味するかは色々な定義があると思いますが、強い信頼関係があり背中を預けあいながら、相互に強く要求をしあう経営陣がいて、その経営陣と組織全体の信頼関係が強固に存在する組織が理想であり、強い組織であると思います。そのどこかしらに隔たり・ヒビがあるとそこから組織が裂け、瓦解してしまうきっかけになってしまうこともあると思います。これは感覚的な話ですが、資金ショートだったりマーケット起因での成長ストップなどよりも、本質的には強い組織を作れなかったことがチャレンジ失敗の要因になっていることの方が多いような気もします。私を含め、スタートアップの経営陣は大きな組織を作る経験をせずに起業をしているケースが多いからこそ、どうやって良い組織を作るのか?を知らない、やったことがないケースがほとんであり、そもそもそんな黄金の手法みたいなものがあるのかも疑問です。
ToBスタートアップは特にですが、単一サービスだけで突き抜けることはとても難しく、多くの企業が創業初期から複線化することを選ぶ時代です。複数のサービスを、等しく成長させていくことはとても難しいことであり、経営陣のワンマン状態を抜け出さずに実現することはとても難しい。創業者モードが重要なことはわかりますが、同時に創業者モードの経営陣の能力を最大化するために強い組織が必要であることは言うまでもないと思います。
重要なのは対話から逃げないこと
実際私自身も、7年強スタートアップをやってきて、その黄金の手法みたいなものは全くわかりません。教えて欲しいくらいです。そしてもちろん我々組織にもたくさんの課題がありますし、強くなるスピードはとても緩やかではありますが、経営陣の信頼関係と組織の信頼関係は少しずつ強くなってきている実感もあります。そのプロセスにおいて欠かせなかったもの、今の組織の状態を作っている大きな要素が、対話から逃げないことなんじゃないかなと振り返っています。これまでに事業戦略・人事制度・ミッションバリューなど経営陣が原案を考え、メンバーからのFBを元に良くしていくことを繰り返してきた中で、多くの意見をもらい、多くの議論をしてきました。建設的に進む場合もあれば、ディスカッション、はたまた論争のようになったこともあったなと思います。そのそれぞれにおいて本気で向き合うこと、従業員の意見だから聞かないとか、意見を言いにくくするみたいなことはせずにまっすぐ向き合うことを個人的には大事にしてきたつもりです。そもそも全員が満足することなんてほとんどないのが普通なので、そういうものだと捉えて、色々な意見をもらってみんなでよくしていく、それがオープンでフラットであることであり、それを繰り返してカルチャーに昇華していくものだと考えます。逆に、こういった類の議論には正解がなく、すぐに決める必要もないからこそ有耶無耶にしたり、独断で進めることがスピードを生むこともあり、議論の場に立つことから逃げやすい構造もあると思います。
弊社では、最近は人が多くなってきたこともあり、全員とディスカッションすることが難しくなってきているところもあります。今回の気づきのポイントは、そういった状況においても、スクラム採用を実践することで、多くのメンバーとの質の高い対話の機会を担保することができるということです。
HERPの採用プロセスの話
HERPの採用プロセスは、職種によって最適化をしているので全てが同じではないです。ですが共通していることとして、それぞれの職種の採用プロジェクトごとに、集客・選考プロセスの最適化をプロジェクトメンバーで考えつつ進めていること、全ての候補者の選考に代表の私も参加をし、合議によって採用決定を出していることがあります。
選考プロセスが全て終了した後には、採用委員会を実施し、双方にとって最適な選択肢になり得るかを関係当事者で議論をする時間を作っています。この採用委員会は、参加者全員が個人の意見としての最終結果を表明することからスタートします。その上で、それぞれの考えを共有します。この順序で進めるのは、オペレーション上はその後の議論においてフォーカスすべきポイントを特定するためですが、裏の意図としては、誰かしらの意見に左右されず自分で最終ジャッジを下す機会を担保したい、そしてその意思決定の論拠となる自分なりの意見を持とうとすることによって、人の見立てを言語化するという難しいスキルの開発をして欲しいという意図があります。
求職者のご希望やキャリア観、事業および組織の状況、そして会社の歴史を踏まえた採用意思決定判断についてディスカッションをする中で、経営陣の考えを共有したり、バリュー・カルチャーの理解を促進したり、組織としての考えをすり合わせていくことに大きな役割を果たしてきたと感じています。ここでいう会社の歴史とは、創業からどういう思いで採用の意思決定をしてきたか、どういう失敗をしてきたか、そしてそれを踏まえてどういう組織でありたいかみたいなことを私はよく話しています。こういったことはわざわざ全員に対して説明する機会を取らなかったり、全員に伝えるのが難しいところもあるので、そういう意味でもこの会議は重要です。
スクラム採用は全社員参加型の採用形式ですが、最終意思決定の場においても全員で腰を据えて議論することが、複利で会社の組織力およびメンバーのピープルマネジメントスキルの向上に寄与していると捉えています。
PBLという考え方の話
PBL(プロジェクトベースドラーニング)とはアクティブラーニングの一種であり、実際のプロジェクト、企業の内の実際の課題解決を通じて、課題解決能力・ヒューマンスキルの向上を目指す学習方法です。日本でも、多くの企業でリーダーシップ研修や、次世代人材の育成プログラムにおいて実施されています。
このPBLにおいて大事な要素が、リアルな会社の課題解決をテーマに、チームで問題解決に挑むことにあり、その最終的な成果を最大化を意図して努力するプロセスの中で個人の課題解決能力だけでなく他者の考えに耳を傾け、共に課題解決に挑むことで信頼関係の構築にも寄与すると考えられています。冒頭の秋山さんがPBLについて書かれているのでもっと知りたい方はこちらをぜひ。
スクラム採用プロセスは、このPBLを職種ごと、また求職者ごとに実践していると捉えられるのではないかとも思うのです。企業にとって高い優先順位に位置付けられる採用において、当該職種の採用目標達成のためにどうすべきか、この求職者のジャッジ・アトラクトはどう進めるべきかを考えるプロセスで、お互いの考え方を共有し、課題解決能力を高め、信頼関係を構築していると考えられます。また、採用プロセスは全社員が関与するプロセスだからこそ、等しくメンバー間での信頼関係構築や、経営陣とのディスカッション機会を担保しているという点も重要かと思います。
場当たり的な組織課題の解決ではなく、対話が強い組織を作る
私個人の話になりますが、創業期はこの対話に疲れたり、必要以上にイラついたり、避けたいと思ったこともありました。創業期以降も、人が増えるにつれていろんな意見があって、そのそれぞれと向き合うことから逃げたくなることもありました。全社会で話すのが怖くて事前にめちゃくちゃ入念に準備をしたり、意見を挟む隙を与えないことを目的化してしまうような精神状態に陥っていた時期もありました。ただその場に立つことをやめなかったこと、意見を理解しようとすることを諦めなかったこと、そしてそれを後押ししてくれる経営陣がいたことで、今ではなくてはならない対話でありプロセスだったと感じられるようになりました。
改めて、この対話を怠らないことが組織課題解決の本質的な解決であり、経営陣の組織課題解決スキルを向上していくことにも大いに役立つと考えます。場当たり的に個人・組織の問題を解決しようにもモグラ叩き状態になってしまい、次から次へと問題が起こるみたいなことはよく耳にする話です。それは会社としての問題に対するスタンスが決まっておらず、問題解決プロセスを信頼関係強化の機会にできていない、経営陣の組織問題解決能力が進化していないことを意味している可能性が高いと我々の当時を振り返ってもそう思います。対処療法的に組織課題を解決することはもちろん重要ですが、それが起こらない、未然に解決されるような組織にすることが本来は最も重要であり、モグラ叩きの末に強い組織はないと思います。強い組織を作るためにスクラム採用を導入し、広く対話する機会を担保することをお勧めします。
番外編:経営パートナーの重要性
スクラム採用文脈からは少しそれるので番外編としましたが、経営パートナーの存在は欠かせないものだと思います。上記でも少し触れましたが、弊社の組織力の進化において絶対に欠かせないものが、とくさん(経営パートナー)の存在でした。創業タイミングから彼がいなければ現状の弊社の状態は絶対にないと思います。会社の視座で議論をしたり、ときには諌めたり、ときには逃げるなと言ってくれる存在がいることが未熟であればあるほど重要だったように思います。私がメンバーとの対話の中で感情的になっていたり、その場に立つことから逃げたい、隠れたいと感じているときに、客観性を取り戻させてくれたり、バッターボックスに立つことの重要性を説いてくれたことで本当に今があると思います。ここだけは手法論を超えたものなので極論すると頑張って見つけるしかないですが、逆にパートナーがいることで経営全てにレバレッジがかかると思うので全力で探すリターンは計り知れないと思います。ただここの関係が冷えていたり、合わなかったりすると逆効果だったり最悪の場合会社を二分してしまう可能性もあるので、当然慎重なジャッジも必要です。
今回の内容は以上です、スクラム採用を始めてみようと思うきっかけになったら幸いです。