幸せは、ごはんを美味しく食べられること

身も心も健康であることのありがたみを知った。

長い間悩まされてきた機能性ディスペプシアの症状が、和らぎ始めたのがきっかけだ。

朝、お腹がすいたな、という気持ちで起き上がれる。食事をしても、胃の焼け付くような痛みがない。「美味しい」「食べたい」という気持ちだけで食事ができる。

つまり普通に、不自由なく食事ができるようになった。“普通”の人からしたら当たり前かもしれないし、今の私の「調子のいい日」は一般的にはおそらく「ちょっと胃もたれしてる日」だ。けれど、機能性ディスペプシアを患う以前にもピロリ菌による胃潰瘍に悩まされ、もう長いこと食事が辛いものであった私には、この“普通”は衝撃的な感覚である。

漢方も生活習慣の改善も効かなくて……というか、常に膨満感があり気持ちが沈んでいるから、漢方を飲み続けるのも運動を習慣にするのもそれそのものが辛かった。病院を変えて、抗うつ剤を飲み始めた。「1ヶ月くらいすると効き始めますから。ご飯が美味しくて困りますよ。」と言われた。

1ヶ月後、明らかな変化を感じた。食べても痛くない。美味しくて箸が進む。それを初めてはっきり感じたのが、NEWSのライブツアーのために訪れた福井県で海鮮丼を食べたときだった。お店の中で食べるのは怖いから、テイクアウトして施設のピクニックスペースで食べた。痛くなかった。美味しかった。ご飯が美味しくて、そのうえこれから好きなアイドルのステージを見られるなんて、こんな幸せがあっていいのかと、泣きそうになりながら食べた。この日の感動はたぶん一生忘れられない。

抗うつ剤だけを飲むようになって、きっかり1ヶ月でよくなった。本当に、胃そのものには異常がなかったわけだ。気分も大きく変化した。自分で自分の考えていることがわかるし、無理やりでなく自然にポジティな考え方ができるようになった。

“脳のバグ”で生きるために必須な「食べるということ」が困難になっていたのだと思うと恐ろしい。人間、頭でっかちすぎないか。

あまりに衝撃的だったので長々と書いてしまったが、要するに私はもういつぶりかわからないほど久々に、「食事ができるようになった」。これがとんでもなく幸せに感じる。

ひどい時は寒気がして目の前が真っ白になるほど胃が痛んだ。お腹はすくから食べたくて、しかし食べると死にそうなほど痛くて、食べなければ低血糖で頭が働かない。気を失いそうになりながら電車に乗った。バイトは続けられず、大学の空きコマは校舎裏のベンチでまるまる90分かけておにぎり一個をやっと食べる、そんな生活だった。視界が暗くて狭くて、感覚も思考も鈍くなる。やりたいこと、頑張りたいこと、何もできなかった。

やる気はあるのに、自分ではどうしようもない身体や環境の不自由に阻害されてしまう。何も感じられないし、考えられない。それが私は辛かった。だから、好きな人たちに「幸せでいてほしい」と思うとき、私は何よりも健康でいてほしいと思うようになった。受け取れる幸せを最大限受けとって、頑張りたいことを頑張れますようにと願っている。

私の好きなアイドルのみんな、フォロワーさんたち、そしてこれを読んでくれたあなた。痛いところはないですか。心が塞がっていませんか。身体や心が辛いけど、人知れず踏ん張っていたりしますか。

今もし辛かったら。

わたしはあなたの辛さをそのまま感じることはできないから、何も言えないけれど、願っています。楽しいことを楽しいと、美味しいものを美味しいと思える日が一日でも早く来ますように。努力したいことに力を注げますように。あなたの過ごしたいように、一日を過ごせますように。

今日もおつかれさまです。


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