『異なるアプローチ、結局は同じ結末説』④筋トレの頻度(全身法vs分割法)の影響
筋トレの世界は、数多くのアプローチが存在しますが、最終的には同じような結果が得られる。
それが「異なるアプローチ、結局は同じ結末説」です。
このシリーズでは、博士号(体育科学)を持つ科学者で、パーソナルトレーナーでもある筆者が論文をもとに、様々なトレーニング方法の効果を探っていきます。
また、このシリーズでは、最低限の科学性を保ちながら、時には若干飛躍的な主張も交えつつ、読者がトレーニングを続ける意欲を高めるためのエビデンスを提供します。
筋トレ愛好家や初心者の方々にとって、本シリーズが新たな視点を提供し、トレーニングをより楽しく効果的にする手助けとなれば幸いです。
過去のシリーズ
4回目となる今回読み解く論文はこちらです。
Johnsen, E., & van den Tillaar, R. (2021). Effects of training frequency on muscular strength for trained men under volume matched conditions. PeerJ, 9, e10781. (CC BY 4.0)
この研究では、1年以上の筋トレ経験を有する男性を対象とし、筋トレの頻度が動的筋力(ベンチプレスとスクワットの1RM)に与える影響を調べています。
ここでの「頻度」とは、各部位のトレーニング頻度を指し、全体のトレーニング頻度ではありません。
これだけだと、何を言っているのかよく分からない人もいるかと思いますが、とりあえず実験内容をみていきましょう。
この実験の対象者たちは、ランダムに次の2つのグループに分けられました。
・分割法群
・全身法群
トレーニング実験の概要は次の通り。
8週間の期間中、週4回の頻度でトレーニングが行われました。
ただし、分割法群は上半身(主な種目:ベンチプレス)と下半身(主な種目:スクワット)をそれぞれ週2回ずつ行い、全身法群は週4回全身のトレーニングをしました。
その他の変数、具体的には週ごとのセット数(主な種目ではそれぞれ11セット)、強度、反復回数は同じでした。
次に示した本文の表1・2をみると各群のイメージが深まります。
したがって、この研究はタイトルこそ「頻度が筋力に及ぼす影響」となっていますが、「全身法と分割法(2分割)のどちらが筋力向上に効果的か?」という視点でもみることが出来ます。
その結果、ベンチプレスとスクワットの1RMは両群で増加しましたが、群と時間の交互作用は見られませんでした。
つまり、トレーニング群に関係なく、両群ともに動的筋力が向上していました。
この結果は『異なるアプローチ、結局は同じ結末説』を支持するものです。
さらに、この研究では、各セッションのスクワットとベンチプレスの終了後、およびセッションの終了時に主観的運動強度(RPE)を評価しました。
その結果、スクワット後では群と時間の相互作用が見られ、分割法群ではトレーニング期間の中盤および終盤にRPEの増加傾向がありました。
これは、分割法群のセット数が多かったために起こった可能性が高いです。
特にスクワットは下半身の大きな筋肉(大腿四頭筋、大殿筋など)を中心に体幹筋群を含め、多くの筋肉が動員されるため、セット数を多く行うとかなりの負担が生じるのでしょう。
筋トレのキツさがトレーニングの継続にどのような影響を及ぼすのかは人それぞれです。
キツさを乗り越えることが達成感を生み、それがトレーニングを続ける動機になり得る人は分割法が適しているかもしれません。
一方で、キツさを出来るだけ避けたい人には全身法がオススメできるでしょう。
執筆家としての活動費に使わせていただきます。