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100マイルの山岳レースも鍛えるべき要素はフルマラソンと基本同じ

『長距離走のパフォーマンスは、最大酸素摂取量、ランニングエコノミー、酸素摂取水準の3つの生理学的指標(3要因)で大部分が説明できる』という記述は、書籍やネットでもしばしば見られ、科学的に見ても妥当な表現です。

実際、私も筆頭著者として、約40名のマラソンランナーを対象に、これら3つの要因によってパフォーマンス指標の大部分が説明できることを明らかにしています。

ここでの「長距離走」とは、基本的にはフルマラソンまでの距離のロード種目を指し、起伏や不整地を走る100マイルのようなトレイルランニングは含まれていません。

しかし、実際には、100マイルのようなトレイルランニングのパフォーマンスを構成する要因は、マラソンと極めて類似しています。
2023年に『International Journal of Sports Physiology and Performance』に掲載された論文では、2009年に開催された166km(累積獲得標高:9500m)の山岳レース、UTMBを完走した男性ランナー22名を対象に、レース前に生理学的指標や筋力テストを実施し、パフォーマンス(完走時間)との関係を調査しました。

その結果、前述の3要因でパフォーマンスの62%が説明できることが分かりました。
一方、膝関節伸展と足関節底屈の最大筋力(等尺性収縮のMVC)は、パフォーマンスとは何ら関係がありませんでした。

3要因のうち、パフォーマンスに最も強く関係していたのはVO2maxです。
論文の著者らは、「先行研究では、VO2maxはレースの距離が長くなるにつれてパフォーマンスに対する重要性が低くなると示唆されているものの、今回の結果はそうではない可能性を示しており、有酸素の最大のパワーは、少なくとも166kmまでのレースではパフォーマンスにとって非常に重要である」と考察しています。

次に重要なのはランニングエコノミーで、経済性に優れるランナーほどパフォーマンスが良いという関係性が認められました。
ランニングエコノミーが優れていることは、レース中のエネルギー消費量の節約にもつながります。
ランニングエコノミーが莫大なエネルギーを消費する166kmレースのパフォーマンスと関連するのも納得できる結果です。

酸素摂取水準(乳酸性閾値の酸素摂取水準)は、パフォーマンスとの間に有意な相関関係がありましたが、他の2要因に比べると、その関係性は著しくありませんでした。
この結果も、長距離走と3要因との関係を調査した研究と一致しています。
酸素摂取水準は、ランナーのトレーニング戦略を最適化する上で、基本的に重視する必要のない指標です。

総じて、今回説明した論文をもとに考えると、マラソンのパフォーマンスを高めるための取り組みは、100マイルのような距離を走るトレイルランナーにも重要であると言えます。
したがって、100マイルの記録にこだわるランナーも、シーズンの中の一時期、あるいは特定のシーズン全部において、フルマラソンの記録を短縮することを目指すアプローチが、将来の100マイルの記録を縮める近道になると考えます。



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髙山 史徳/Fuminori Takayama
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