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どんなストレングストレーニングがランニングパフォーマンスを高めるのか?
ストレングストレーニングがランニングパフォーマンスを高める手段として、効果的ということがエビデンスレベルの高い情報として明らかになってきたのは、2010年代の半ばぐらいです。
そして、2020年代に入ると1つ段階が上がり、どういったストレングストレーニングが良いのかといった、より細かい情報に関しても、エビデンスレベルの高い知見として明らかになりつつあります。
今回は今年に入り発表された、「ストレングストレーニングの方法が中距離・長距離ランナーの運動パフォーマンスに及ぼす影響」に関する系統的レビュー・メタ分析の結果を見ていきたいと思います。
この系統的レビュー・メタ分析の目的は、異なるストレングストレーニング方法(高負荷、最大下負荷、プライオメトリクス、複合トレーニング)が中・長距離ランナーのパフォーマンス(タイムトライアルやある強度での疲労までの時間)およびパフォーマンスの決定要因(最大酸素摂取量、最大酸素摂取量が出現するランニングスピード、最大代謝持続スピード、スプリント能力)に与える影響を調査することです。
この目的を達成するため、本系統的レビュー・メタ分析では、2022年11月までに発表された文献を対象に、Web of ScienceやPubMedなどの電子データベースを用いて、一定の選択基準に基づいて研究を抽出しています。
具体的な選択基準は以下の通りです。
中・長距離ランナー(16歳以上、競技レベルは不問)を対象としている
3週間以上のストレングストレーニングが行われている群が存在している
(高負荷: 80% 1RM以上、最大下負荷: 40-79% 1RM、プライオメトリクス: ストレッチ&ショートニングサイクル機能の改善を目的とするもの、複合トレーニング: 2つ以上のストレングストレーニング方法を組み合わせたもの)対照群(ストレングストレーニングを実施していない、または低負荷(40% 1RM未満)しか実施していない)が存在している
トレーニング介入の前後でパフォーマンスやその決定要因が評価されている
ランダム化、もしくは非ランダム化の対照試験である
最終的に、38件の研究が選ばれ、合計894人(中程度のトレーニング: 324人、十分に訓練された: 272人、高度に訓練された: 298人)のランナーが対象となりました。
ただし、各研究で評価された指標が異なるため、分析対象の研究数や被験者数は指標ごとに異なります。
本記事で取り上げるランニングパフォーマンスに関しては、24件の研究が分析対象でした。
結果として、高負荷のストレングストレーニングは、ランニングパフォーマンスに中程度の効果をもたらすことが分かりました。
また、複合トレーニングはそれ以上の大きな効果がありましたが、研究間で異質性(バラツキ)も見られました。
一方、プライオメトリクストレーニングは有意な効果を示しませんでした。
最大下負荷については、そもそも研究数が少なすぎました。
さらに、被験者の特徴(性別、年齢、体格、身長、最大酸素摂取量、パフォーマンスレベル、ストレングストレーニング経験)や介入の特徴(実施期間、頻度、セッション数)は、ストレングストレーニングがランニングパフォーマンスに及ぼす影響について、有意な影響を与えませんでした。
まとめると、この系統的レビューとメタ分析は、ストレングストレーニングの中でも、高負荷トレーニングや複数のアプローチを組み合わせた方法が、ランニングパフォーマンスを向上させる可能性が高いことを示しています。
他の研究も含めると、高負荷(高強度)のストレングストレーニングが中・長距離ランナーのパフォーマンス向上に効果的な手段であることは、科学的に明らかです。
近年、こうした科学的知見を重視する指導者やストレングス&コンディショニングコーチも少しずつ増えてきているように感じますが、まだ少数派であるように思います。
もちろん、状況によってはストレングストレーニングを行わない選択肢もあるでしょう。
しかし、どうせ取り入れるのであれば、低負荷(低強度高回数)よりも高負荷(高強度低回数)のトレーニングを行った方が効果的だと考えます。
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![髙山 史徳/Fuminori Takayama](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/154865414/profile_c3f53e4b3c7120f21d903687b1e3430b.jpg?width=600&crop=1:1,smart)