0266:やくみん覚え書き/PIO-NETとニセ科学ビリーバー
ウイルスや細菌を除去し、免疫力をアップさせると謳う24万円のマイナスイオン発生器。その広告に根拠がなかったとして、今日、消費者庁が行政処分を行った。
報道はこれから増えていくだろう、ひとまず一例。
上の報道では、この商品についての苦情や問い合わせが全国の消費生活センターに24件寄せられているとされている。全国で24件。少ないと思う人も多いだろう。確かに件数としては少ない。でもこれには背景要因が想定される。
PIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)は、全国の消費生活相談の全数をデータベース化して、詐欺や悪質商法、その他の消費者トラブルについて「今何が全国で問題になっているか」「最近何が急増しているか」を容易に探知できる強力な仕組みだ。そこにアクセスできるのは消費者行政関係者と警察等に限られるが、システムの存在自体は公表事項だ(ヘッダ画像もこちらから引用した[著作権法第32条第2項])。
例えば特殊詐欺集団がある特定の屋号で勧誘チラシを大量に印刷し一気に郵送したとする。それを観た人が地元の消費生活センターに情報提供をすると、その屋号とチラシの内容がPIO-NETに登録される。それが急増するようなら、今その詐欺が仕掛けられていること、そしてそれがどの地域に郵送されているかという目星がつき、行政調査や警察の捜査の重要な手がかりになる。一方、詐欺師も行政や警察のそうした動きは織り込み済みで、調査・捜査の手が及ぶ前に一気に被害者から金を巻き上げて短時日で姿をくらます。どちらの動きが早いかが、摘発や被害防止の分かれ目になる。
一方、誇大広告についての苦情は、必ずしも多いわけではない。誇大広告を信じない人はスルーするし、信じる人は実際に購入して効果がなかったと気付くまでは相談に至らないからだ。特にウイルス除去とか免疫力アップなど、効果が目に見えないものは、「効果が無かった」と気付くこと自体が難しい。露骨な誇大広告を見て、一台24万円を投じて機器を購入しようとする人は、ビリーバーだ。多くの人は信じないか、なんとなく信じかけても金額がハードルになって手を出さない。信じる人だけが大金を払って買うのだし、「大金を払ったのだから効いている筈だ」とサンクコスト効果も働く。その結果、PIO-NETの件数は伸びない。
しかし、特殊詐欺や悪質商法などの行為規制と異なり、誇大広告規制はPIO-NETに端緒を頼るわけではない。消費者庁や都道府県の景品表示法担当者、それに全国の適格消費者団体などが新聞・テレビ・ネットなどの広告に目を光らせている。もちろん全てをチェックできるわけではないが、一般の人から「これは誇大広告では」という通報を受け付ける仕組みがある(これはPIO-NETとは連動していない)。
小説「やくみん! お役所民族誌」でも、ニセ科学が登場する。信じる人には、信じる理由があって、心を奪われる。外から説得することはできない。だから、誇大広告を野放しにできないのだ。
消費者からの情報が規制行政の大切な端緒。ひとつの通報ですぐさま行政や警察が摘発に動くわけではないが(事案の優先順位があるから)、PIO-NETデータや景品表示法通報が蓄積されれば、危険性・悪質性の高いものば「今こんな相談事例が多くなっています」という迅速な注意喚起広報に繋げられるということを、知っておいてほしい。
■本日摂取したオタク成分
『夢の本屋をめぐる冒険』パリ&中国。いいねえ、本屋はロマンだねえ。『"小さな世界"の大引っ越し 大阪大学外国語学部』学部移転を機に異文化の宝庫に潜入したドキュメント。先生方を筆頭に、この学部の魅力を存分に引き出してた。『バクテン』第6話、BGV。『オッドタクシー』第7~11話、ふわあ、息を呑む展開で一気に五話観てしまった。高一の三男も、宿題ほったらかしで視聴。今期アニメももうすぐ終わるが、観てる範囲ではVivyとオッドタクシーが二強かな。