誰のこころにもある乙女心~弥生美術館
はじめまして。フェリシモミュージアム部“ささめ”と申します。
美しいものが大好きで、西洋・東洋、ジャンル問わず、美術館は訪れて心の底から落ち着く場所です。展覧会も好きですが、美術館というスペース自体が好きなのだと思います。
今回は、思い切り外に出られるようになった時に足を運びたい、私の愛する美術館についてお伝えしたいと思います。
◆あこがれが詰まった美術館
東京に行くと決まると、まず頭の中にモヤモヤと「ここに行きたい……」と思うところがあります。それは本郷の「弥生美術館」です。お隣には夢二の作品を多く所蔵する「竹久夢二美術館」も併設されています。
〈 弥生美術館外観 〉
弥生美術館は、昭和59年(1984)、弁護士・鹿野琢見氏により創設されました。
少年時代、挿絵画家・高畠華宵の一枚の絵に深い感銘を受けた鹿野氏は、大人になってもそのあこがれを持ち続け、華宵の作品との出会いから実に36年後、華宵本人と親交を結ぶことになります。その後も交流を重ね、華宵の死後は、著作権を得て、自身のコレクションを公開するためにこの美術館を創設したのでした。
あこがれを大切に持ち続け、夢をかなえた本当に素敵なエピソードです。
また、鹿野氏の思いから、今このように私たちが作品に親しむことができることを考えると、御礼を言いたくなってしまいます。
◆誰のこころにもある乙女心
美術館の始まりが、抒情画(人のさまざまな感情を表現することで、見る人もまた己の感情をそこに見出し、共感を寄せる絵)にあるとだけあって、弥生美術館で企画される展覧会もまた抒情的です。そこには、世代や年齢を問わず、美しいものや儚いもの、繊細なものを愛する女性たちの「乙女心」をときめかせる作品に出会うことができます。
〈 「この夜ごろ」 竹久夢二 1920-1930年代 〉
私の好きな夢二の作品。竹久夢二美術館にあります。儚げで物憂げで、そして少女のように清らかな女性の色香を表現するのに夢二に匹敵する画家はいないと思います。
私が足を運ぶときには、熱心に作品を見入る男性にも遭遇します。そんな姿を見ると、男性の心の中にも「乙女心」というものは存在するのかもしれません。また、現代風に言えば「カワイイ」ものを愛する心は、性別を超えてあるのだと思い、優しい気持ちになってしまいます。
〈 竹久夢二《APL・FOOL》1926年 〉
最初にこの美術館を訪れたのはもう20年以上前のことで、両親とともに行きました。はっきりとした記憶のないところもあるのですが、覚えているのは次の展覧会です。
1996年
●高畠華宵 美少年・美少女展:1月4日~3月28日
1999年
●竹久夢二と高畠華宵「抒情画の世界展」:9月30日~12月26日
2001年
●藤井千秋展~清らかな乙女たち―青春の輝き展~:3月31日~7月1日
2002年
●内藤ルネ展~ミラクル・ラブリー・ランド~:7月4日~9月29日
2015年
●ファッション・イラストレーター 森本美由紀展:7月3日~9月27日
2017年
●生誕100年 長沢 節 展 ~デッサンの名手、セツ・モードセミナーのカリスマ校長~
など。
竹久夢二は「カワイイ」の先駆者と言われていますが、
藤井千秋さんや内藤ルネさん(最近の方なので「さん」をつけさせていただきます)は、根底にあるご自身の理念とともに、昭和の少女たちの心をときめかせた偉大なイラストレーターだと思います。また、雑誌『オリーブ』などでスタイリッシュなイラストを披露された森本美由紀さんの絵は、今もなお、きらめきを失うことはありません。作品を最初に見た時の感動や驚き、「こんな軽やかで羽のような、妖精みたいな女の子になりたいなぁ」というあこがれの気持ちも褪せることはありません。
そして、ここから綺羅星のようなアーティストたちを生み出した長沢節さんの作品も……! 作品のひとつひとつ、そしてその時の季節のこと、あの日美術館へ足を運んだ時の気持ちが今でもありありと思い出せて、その思い出を愛おしく思います。
近くに住んでいたら、毎回企画展に足を運んでいたと思います。
◆弥生美術館の魅力
弥生美術館の素晴らしさのひとつはその「企画力」にあると思います。
(もっとも、その他にも美術館の立地や、個人の御宅のようなのどかで静かな感じ、そして何より所蔵作品など素敵なところはいっぱいあるのですが)
多様な側面から作家の魅力を深掘りし、それまで知らなかった作家に魅了されるきっかけを作ってくれたり、既に知っている作家については新たな魅力に気づかせてくれたり。作品鑑賞を通じて、自分の中にある「美」や「好き」の引き出しの中身が豊かになっていくようです。
関西で「いいな」と思った展覧会が、もとは「弥生美術館」で企画されたものということがこれまでにありました。2016年に開催された「耽美・華麗・悪魔主義 谷崎潤一郎文学の着物を見る ~アンティーク着物と挿絵の饗宴~『谷崎潤一郎』展」はそのひとつです。
企画力が素晴らしいので、企画展にまつわる書籍もついつい購入してしまい、展覧会が過ぎても、その書籍だけでも楽しめます。
企画展にまつわる書籍は、弥生美術館の学芸員の方が執筆や編集に関わっておられるようです。書籍を読んで改めて、こちらの美術館の魅力は、学芸員の方々の作品や作家に対する愛情の賜物なのだということが感じられました。
まさに魂こもった展覧会は何年経過しても忘れ難い輝きを放っており、これもまた「作品」なのだと思います。
それから、グッズ売り場にも毎回ときめきます。幼いころ、かわいい文房具屋さんでお財布を握りしめて「何を買おうかな?」とドキドキしたような気持ちになります。
ファション・イラストレーターの森本美由紀さんは、2013年に54歳という若さでお亡くなりになりました。森本さんから新たな作品がもう生まれないということを考えると、本当に残念です。けれど、遺してくださった作品を大切に、見つめ続けたいと思っています。そのような意味で、このバッグは私にとってとても貴重で、大事にしているものです。
弥生美術館・竹久夢二美術館
※3月28日(土)~4月20日(月)臨時休館
※最新情報は美術館HPにてご確認ください。
◆これからの企画展
※最新情報は美術館HPにてご確認ください。
「いつみても、いつでもラブリー♥ 水森亜土展」於:弥生美術館
〈 『別冊少女フレンド』1974年5月号表紙原画 〉
幼いころ、テレビで楽しそ~うにお絵描きをしていた亜土ちゃん(!)
夢いっぱいのイラストを夢いっぱいに描いて見せて、みんなをしあわせな気持ちにさせてくれる……「ラブリー」とは彼女のためにある言葉だと思います。こちらの展覧会では水森亜土さん秘蔵の絵画作品やグッズの原画が大公開されるとのこと。また、歴代〈亜土グッズ〉を700点超!を展示するとのことで、見逃せません~♡
「夢二に学ぶ、恋のいろは ―失恋体験から、モテ仕草まで―」於:竹久夢二美術館
※開催期間が当初より変更しています。最新情報は美術館HPにてご確認ください。
こちらの展覧会では、夢二が考える理想の女性像や男女関係、また恋人たちを振り返りながら、恋愛に絡めて表現した絵画や詩歌、また写真資料等が展示されるそうです。
夢二にとっては、恋をすることと生きること、そして作品をつくることは一緒だったように思います。それゆえ、夢二の恋は深く、どれもがその作家を形づくる運命的なものだったように思います。果たして夢二の恋の教えはいかなるものなのか? たいへん気になるところですね!
亜土ちゃんに夢二! 私も何とか最終日ギリギリでも東京にまいりたいと思っています。グッズも楽しみです。
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「弥生美術館」を訪れて以来、日傘をさして浴衣を着てお散歩をしたくなるような、雰囲気のあるこの町が大好きになりました。
〈 東大本郷キャンパス横の美しい並木道 〉
弥生美術館・竹久夢二美術館
※3月28日(土)~4月20日(月)臨時休館
※最新情報は美術館HPにてご確認ください。
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