日記 殺意を持て

・日曜日が一週間の終わりだとして、先週の日曜日(4月28日)に私の体温が急激に高くなった。
休日診療さえも終わっている時間だったため、次の日病院に行った。
結果はコロナ陽性。
ニートのくせして家庭にコロナという順々に爆発する爆弾を持ち込んでしまった。
様々なイベントを家族に欠席してもらうことになってしまい、なんだか申し訳ない。(とは言いつつ、コロナなんてなりたくてなったわけでもないし、人ごみに行ったわけでもないのだから、誰のせいでもない。もちろん私のせいでもないと思っている)
 
私の場合は、コロナは大して酷くはならなかった。
39度台の熱と肺の痛み、咳、鼻水、だるさ、悪寒、などなど。
ぐったりしたけど、絶えられないほどではなかった。
食中りとかのほうがつらいな~くらいだった。
鬱で死にたがっている時はどこも痛くないけど、何もする気が起きないし、天井を見ているくらいしか出来ない。
しかしコロナの私はその時、軽い躁状態にあり、アニメを観たり動画を観たり、短歌集を読んだりできて、時間を純粋に楽しむことが出来た。
楽しいことを楽しいと思える、ただそれだけで、私は心から嬉しかった。
 
読んだ短歌集は木下龍也さんの「あなたのための短歌集」
これは、依頼者からの想い(お題)をもとに木下さんが短歌を作り、封書して依頼者に届けるというサービスの中で生まれた歌を集めたものだ。
この歌集、本当に面白かった。
短歌は勿論、依頼も読めるのだが、(これは依頼者の許可のもとに成り立っている)その依頼文からにじみ出る繊細な感情を、たった31文字で励ましたり肯定したり慰めたり寄り添ったり共感したりしている。
その木下さんのひたむきさに、無関係の私の心まで打たれてしまう。
この本をゆっくり2週読んだ。それだけでも、コロナになっちゃったのも悪くないなと思った。
 
 
例えばこの依頼
(依頼)「人生のどん底にいる人へ、一筋の光のような希望を与える短歌をつくってほしいです。将来、夢を叶えられなくても絶望したり、大切な何かを失ったりしたとき、生きていくために口ずさめる歌がほしいです」
 
(短歌)「絶望もしばらく抱いてやればふと弱みを見せるそのときに刺せ」
 
 
これを読んだ時、思わず口ずさんでしまった。それも何回も。
きっと依頼者も幾度となく繰り返し口ずさみ、諳んじ、絶望を抱くとき少し笑っているはずだ。
この短歌にはそれをさせる力がある。
そのときに刺せ、そのときに刺せ、そのときに刺せ、私も諳んじてみる。
この殺意を、私は絶対に忘れない。
右手に持った見えないナイフを、私は絶対に離さない。
 
これを読んだ人、皆ただちに、利き手にナイフを持て。

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