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WEB特集「今年度かぎり”見敵必撮”偵察航空隊に密着」(2)Behind the Wing

取材当日、ブリーフィングのあとに、まず向かったのが、RFの格納庫。当然ではあるが、油くさいような感じは全くない。広々とした場所に置かれたRFは「大きい」というのが第一印象。全長11.20m全幅11.71m。機体は光沢のない塗装が施されていて、金属っぽさが全くといって良いほどない。その流れでエグゾーストを見ると、そこだけは銀色で金属が剥き出しになっていて、隠しきれなかった「本性」が見えた様な気持ちになる。

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整備隊が「古いまま」にはしておかない。

日が昇ってくると、光が差し込み始めRFを照らし始める。それでも迷彩塗装が強く反射するようなことはない。さらに素人目ではあるが、機体に「古さ」を感じさせるところはなかった。どちらかという、迷彩塗装をみて「あ、こんな感じで塗っているだ」ぐらいのことである。そもそもだが、整備隊が仕上げた飛行機が「古いから危険」だったら、任務も何もない。日々の整備ばかりではなく、関係者の話では「数年に一度、全部ばらして点検する、新品を作るような検査を受けている」という。「登場は古い」が「古いまま」飛んでいるわけではなかった。当然といえば当然だが、F-4を元にしたRFが引退すると聞いて、「やはり古いからな」と直感的に思い込んだのは、今となっては恥ずかしい。「古い」の声は航空祭などでも聞こえてきたが、実際のところ「古い」は機体そのものではなかった。

RF機飛行準備開始

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エプロンへは整備隊が運び出す。数人がかりで扉をあけ、RFを牽引車でエプロンへと運ぶ。エンジン音はしないが、目の前にあるジェット機が動き出すと、こちらまで緊張してくる。運び出された機体は、離陸へ向け様々な作業がある。偵察航空隊ならではの作業も、整備隊が受け持っている。

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RFは複座、つまり2人乗りで、前席そして後席がある。戦闘機と言えば今では単座、いわゆる一人乗りを多く目にする。機体上部の整備隊員は前席と後席を確認している。

これが「前席・後席」だ

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話によると、前席だけでも後席だけでも撮影は出来るそうだが、前席と後席が会話できないだけでも「任務が出来ない」と判断されるそうだ。前席・後席が飛行前からプランを練り、上空で状況を反映させて2人でプランを確認・修正している。どちらかだけが正常に機能してもNGだそうだ。

カメラの積み込みなども整備隊

さらに正面下の赤い部分は機首に描かれたサメの口で、そこにある四角い黒い枠と、その上にある大きめの黒い枠は、カメラのレンズ用の窓だ。カメラの積み込み、積み卸しも整備隊が担当する。そして写っている銀色のタンクは液化窒素で、温度変化によるレンズ、ミラーなどの「歪み」を防ぐため、温度管理のために使われている。

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撮影距離は明らかにされていないが、高度や目標との距離が極めて重要な要素。せっかくそれを維持したにもかかわらず「温度変化で焦点距離が変わった」では任務は達成されない。(整備隊が扱うカメラは前項(1)概要に掲載したので参考にして欲しい。)ちなみにフィルムカメラが全盛の頃、フィルムをきちんと巻いてもフィルム面が浮いてしまうため、ファインダーできちんとピントが合っていても撮った写真がピンぼけ、ということもあった。そのためフィルムそのものを吸い付ける形で平面を保つ機能を持ったカメラも発売された。フィルムの平面保持などデジタルの時代には関係の無いことだが、デジタルでもアナログでも、それに使われる光学系は少しの誤差が生じても、取り返しのつかないことになる。

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また、搭乗員用の液化酸素も充填される。

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RFに限らず、飛行機は飛べと言われて簡単に飛べる物ではない。しかるべき整備・点検があってこそだ。そのため通常は3時間程度で飛べるように決められていて、事態によってその時間は短く設定されているそうだ。スクランブルでは「分単位」になるのはよく知られている。

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フライト前には搭乗員も参加して確認を始める。確認が終わり、搭乗、離陸となる。

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偵察航空隊独特の任務「持ち帰る」

偵察航空隊第501飛行隊は他の部隊とは違った側面を持っている。安全に帰ってくるのは当然のことだが、撮影したフィルムを持ち帰らないことには任務が続かない。偵察航空隊では画像の分析・情報処理まで行うからだ。

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廃止は「特徴」が理由?

こうした特徴も今となっては、「理由」となっているのだろうか。また機体が「老朽化」したのならわかる。しかし整備隊が調整し、機体も更新が続けられているにもかかわらず用途廃止、そして隊の廃止・・・・第501飛行隊長岡田智光2等空佐に話を聞いた。(続く)

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(余談:缶が印象的でした。)


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