「聞き書き 世界のサッカー民 スタジアムに転がる愛と差別と移民のはなし」(金井真紀)

世界言語であるサッカーについて語る、世界中のサポーターの物語。人選や著者のタッチも絶妙で、世界のあちこちでは様々な大変な事、悲しい事が起こっているのに、それを明るく笑い飛ばす語り手の皆さんが非常に印象的で心強い。
今世界で何が起こっているのか、そして各地のサッカーファミリーはそれにどう対処しているのか知る事が出来る、ぜひおすすめしたい良著。

ひとつだけ、この本で一番心を打たれた文章を引用させて頂こう。父親として、子供に愛するチームを決めさせてあげるのは、かくも偉大な事なのである。

最初にどのチームを生観戦するか、それはどの神様を信仰するかを決めるようなものだ。あらかじめ家族内でコンセンサスをとっておかなければ、末代までの禍根を残しかねない……。一族が固唾を呑んで事態を見守る局面で、母方のじいちゃんの態度は見事だった。  「息子をスタジアムに連れて行くのは父親の役目だ」  そう言って、なんと、ゴンサロにリーベルのシャツをプレゼントしてくれたという。ボカサポーターの男が、義理の息子の思いを尊重し、孫にリーベルのシャツを買う。あぁ、なんだか泣けてくる。

「毎日がスーペルクラシコ ――ブエノスアイレスの恋するふたり」より

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