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302 年末年始読書=「教養としての決済」(The Payoff)が年末年始最高に面白かった件。

もう1月9日で、一週間が経過しました。年末年始に積ん読本が読めました。

・「選択の科学」10年ぐらい前に出版された本で、ログを見ると一度読んでいるんですが、再度「選択の科学」を再読しました。ベストセラーになった当時よりも今読むとはるかに面白い。よりネットのECでの購入がさかんになった現在において「商品の購入選択」がいかに人生に影響を与えるかを科学してくれる有意義な本です。
他に
・「ブランド・ストレッチ」星野リゾートの星野さんオススメの本で、読んでみたらめちゃくちゃ勉強になりました。いわゆるバズワード的な経営本ではんく「構造から理解できる、本当にいい本」です。
・「実践のためのロイヤル英文法」 日本語の「英文法」本ではこれがベスト。
・「ヒンディー語文法ハンドブック」
・「プロダクトレッドオーガニゼーション」
・「大東亜共栄圏」(中公新書)
・「満州事変とは何か」
・ダニエルヤーギン「市場 対 国家」上・下
・ダニエルヤーギン「石油の世紀」上・下
ダニエルヤーギン「資源国家」
などを読みました。

とくに「石油の世紀」は91年の本で絶版本なんですが、この二冊以上の「石油利権」が詳細にわかる本はないです。結構アマゾンやメルカリでも値段が上がっていて図書館などでしか読めないので、キンドルで再発してほしい本NO.1です。版元がNHK出版なので再販難しいのかもしれません。

2022年、世界中の国際関係の学者たちが予測を誤る中、「ロシア・ウクライナ戦争」において、早くから「ロシアは、ウクライナへ軍事行動を起こす」ことを最も的確に予測を的中させたのは、石油の世紀のダニエルヤーギンでした。
その彼が未来で考えていることはやはり石油依存構造からの人類の脱却と転換です。
バッテリーとサプライチェーン、電気自動車の普及です。「石油によるエネルギー源という問題」が初めて解決される手段となるからです。

歴史の教科書で誰もが習った「満州事変」も、今の時代から振り返ると非常に今の世界史でロシアがやっていることととても似ています。
プーチンの中にはスターリンとナポレオンがいて、偉大なるロシア帝国が世界で再びソ連時代のように返り咲くにはどうすべきかを考えています。
そのフレームワークとして非常によく似ているのが、イラク統治と日本の関東軍による「満州国」支配です。

プーチン自身は、ウクライナを「占領」するより、早期にゼレンスキーを殺害し、ロシアの「民主」的な傀儡政権をキーウに作り、「モスクワへのミサイル」をやめればOK、レベルで考えていたのではないかと考えています。
しかし、歴史からを学ばず、彼は軍事作戦が失敗することが見えず、SNSや通信を軽視してしまいました。
今のロシアは、まるで関東軍が「満州国侵略」を推し進めた状況に非常によく類似しています。

「満州」は消滅してしまいましたが、いわゆる「理想郷」の国家です。
「五族協和」ーー中国(漢)民族、モンゴル、朝鮮、日本人、ソ連人、これらの5民族が、欧米帝国主義に植民地にさせられず、共に生きるーー。
まるで今聞くと「社会主義国家」そのものですが、とにかくこのような嘘っぱちの理想郷スローガンで作った仮想国家でした。

「満州国」の建設で最も今失われた事実は、ドラッグの製造と密売です。
満州関連は、焼かれてしまい、ほとんど資料がなく、歴史からも排除された形ですが、みすずの現代史資料「満州国」や「阿片資料」の巻を読むと、単なる「理想的な国家」ではなく、戦後首相になる岸信介や大平正芳氏を中心とする日本の戦前のトップ官僚たちがいかにして覇権を握る上で「モンゴル」という地域を地政学的に重視したかがわかります。
「ソ連と中国」という二つの帝国主義国家群を抑えることは地政学的な覇者の必須条件だからです。

このフレームワークでいくと、ロシアは、道を誤ったものの「満州」のような傀儡国家政府の建設はウクライナにできず、どこかで「軍を引く理由」を作らなければなりません。
満州事変とロシア革命、ロシアからソ連への移行など勉強しました。

プーチンもいうて、あと政治家としては、「10年」ぐらいでしょうから、「偉大なる帝国・ソ連復活」のシナリオを国内で宣伝していくしかないはず。


年末年始の中でも「教養としての決済」がおすすめできる一冊でした。電子キャッシュレス決済に移行した人も多いですが、そもそも決済とはなんなのかを歴史的に読める人です。

これを読むと「お金は銀行が作るもの」というのが単なる幻想で、実は「交換行為」自体が兌換紙幣を生み出し、それが負債という概念を作り、商業簿記・複式簿記の発明につながり、やがて便利な道具としての「お金(現金)」を生み出し、それがやがて商品とサービスにマーケットで交換できることがわかります。

・決済の本質は、「リテール決済の商取引慣習」が重要なファクターを握っています。今日本で、「小口取引」に使われているのは、紙やコインの現金を使う商取引です。

「現金」も企業の民間商品と一緒で「中央政府によるブランディング」が行われた。

「現金」にはコストがかかる、という指摘が面白い。
ATMのメンテナンスにも、現金の輸送のセキュリティにもめちゃくちゃお金がかかるし、銀行の前では銃器を持った警備員がいる姿を目にしたことがある人は多いと思います。
セキュリティの観点からいっても、デジタルキャッシュになるとそういったコストは少なくなります。
一方で当然デジタルのリスクは、サーバー・ハッキングのリスクがあります。

「生活手段」を現金に依存する人は貧困層に多いことは歴史的な必然です。

歴史的な最も金融産業  のイノベーションはクレジットカードの登場。これは金融の「標準言語」の出現に近い。
「ユーロ」を南米の駅の構内では使えないし、iOSをサムスンのスマホでは動かせないが、クレジットカードはイギリスのホテルでも東京のホテルでも使える。しかも規格基準が3種類しかない。ビザ、マスターなど。

実は、技術的にクレジットカードが勝った理由は「エンボス加工と磁気ストライプ」の技術要素にあった。いまだに使われ続けている。銀行泥棒やクレジットカード泥棒はこの技術を軽視した。エンボス加工を自分で施して盗難カードを再利用しようとしたが再現できなかった。

そして「電子POS端末」の登場がガラッと世界を変えた。日本でも80年代に登場したPOSレジは、今ではコンビニやスーパー、商店の定番端末だ。

そして、次のクレジットカード技術の発展はローランモレノによってもたらされたチップアンドピンと呼ばれる「PINコード」の発明。いまでも3桁で裏面に記入されているアレだ。
これに反抗して銀行側もATM専門のデビッドカードを投入する。

次の革命の主戦場は、「遠隔決済」。
そしてついにネット上のオンライン電子決済の「ペイパル」と「携帯電話によるウォレット電子決済」が生まれる。

インターネット上の商取引は今もそうだが、マイクロベンダー、「零細事業者」と呼ばれる家族で「雑貨」や「食品」などを売る小さな家族経営の事業者をいかにどれだけ多くプレイヤーとして参入させられるかにかかっている。アマゾン、e-bay、グーグル、ヤフー、楽天、メルカリ、BASEやSTORESなど、ここの部分のイノベーションは今もインターネットの主戦場だ。

カードがネットワークを作る。富裕層にしか作れない会員制カードはその典型だ。ドバイのマスターカードやブラックカード、プラチナカードなど。

この富裕層会員制カードで、よりクレジットカード会社はますます高い金利収入とインターチェンジフィーを取れる。好循環スパイラルを作ることができた。
しかも実質競合がいないvisaとmasterの複占(デュオポリー)状態。
ただし、中国とヨーロッパは支配できなかった(挑戦はしたけど)。
ヨーロッパは完全に「デビッドカード」がメインデバイス。

アメリカは便利なクレジットカードを発明した国にもかかわらず、「小切手」の使用がいまだに多い。最も遅い決済手段の小切手だし、リブラ(ディエム)を作ったアメリカなのに、小切手はなぜ使われるか?

小切手がいまだにアメリカで使われる理由=その支払いが「郵送中」だという「言い訳と待ち時間」が作れて、軽視されやすいファットフィンガー・トラブル(「太い指」によるatmや入力操作作業の金額の押し間違え)が決してないからだ。ここも面白い。
日本でも去年「4000万円誤送金事件」があったが、これは決して軽視されてはいけない理由なのだ。
数字の桁間違えや口座間違えはオンライン振込ではかなり多い。

クレジットカードのように、技術的ネットワークは「一度」人々に利用されるようになり、巨大になるともはや社会から取っ払いにくくなる。
フェイスブックもpcからモバイルアプリに移行し(iPhoneの発売後の初のテレビ広告は「フェイスブックが使える」であった)て、一気にネットワークが拡大していった。

・中国とケニアはなぜいち早くモバイル電子決済化ができたのか

・ケニアでは、2007年にM-Pesaがリリースされた。

・中国では、2014年にwe chat payは1億人に試験版が使われた。
ただ、あまりに速い革新のために、アリペイには人々の預金残高を食う「吸血鬼」の愛称がついてしまった。
では、10億人がいるインドはどうか?

即時決済を最初に導入したのはイギリス=BACs。そしてスペインのIberpay。

・APIによる決済革命
API=アプリケーションプログラミング・インターフェイスは、最も近年イノベーション革命決済。これは組織のネットワーク外部と取引を行えることを可能にしていることが技術的源泉。
ここは、それぞれ各社がUPIの自社モバイルアプリに組み込んでいける。アマゾンもウーバーも支配できない。

・決済手数料のマネタイズは、銀行の金利ではなく、受け取り残高利子によるもの。しかもそれぞれの銀行の利子の源泉コストが一概に比較できない。

ここで話は、ずれるが、決済の「先駆者」として思い浮かべるのが、藤田田さんの「マクドナルド」にいち早くPOSシステムを入れた話だ。
マクドナルドはなにも「ハンバーガー屋」さんで成功したわけではなく、やはり飲食サービス事業者の市場に「金融と不動産」の経営手法を徹底的に導入したといえる。
フランチャイズシステムと企業ブランドとPOSシステム、誰でも働ければ必ず給与が上がる人材管理マニュアルなど、「企業の基礎」部分をしっかりと作ったことがその後のマクドナルドの普及につながることと似ているように感じた。

・詐欺と金融犯罪について
ネットフリックスの銀行強盗ドラマ「ペーパーハウス」シリーズはアナログ。
プロフェッサーと呼ばれる人の手口とは思えない。

・オンライン購買

・なぜ中央銀行は必要か?
=「10兆ドル」には大きなサッカースタジアム一個分の全スタンドを埋め尽くす100ドル紙幣が必要になる。
このような巨額決済移動には、即時グロス決済(RTGS)手段が使われる。
イギリスのRTGS CHAPS。
巨大なグロス決済がリアルタイムで決済されるようになり、ついに「信用リスク」が排除されるようになった。CHAPSは1日に約3650億ポンドを決済している。これは巨額に見えるが米Fedwireやユーロを扱うTARGET2に比較すると少ない。これら二つは1日に3兆ドルも処理している。
世界の銀行システムのシステムになっている。逆にいえば、ここが頓挫すると、世界中のグローバル金融システム自体が破綻する可能性がある。

ここらへんの巨額決済金融システムの崩壊はありえる。小売やATMでの小口現金決済もこのシステムに依存している。実は、石油会社や小売会社がこれらのクロスボーダー外貨決済手段に、そして固定電話、携帯電話、情報端末なども依存している。

・世界金融システムの番人FSBとBIS(国際決済銀行)

仮に一週間以上VISAやMASTER、CHAPSが停止したら世界経済にはとてつもない大打撃になる。それを防ぐシステムがある。
BISはその中核で、世界の中央銀行の連合体のような安全システムを作り出してきた。

今も昔も、「海外送金」は、実際には、なされていない。それを解決する「コルレスバンキング」Correspondent banking system。
これは航空路線の乗り継ぎのようなもの。どこかに行く時には、ヒースローや大きめの空港に行く。ここから乗り継ぎをする。海外への送金・金融決済も同じで、まずコルレスバンキングをしている。国内で処理してから、まず海外の大手銀行の処理に回る。二件のクロスボーダー取引を国内取引に変換している。
これを世界全体の電子取引でやっているのが、swift。
イスラム世界では「ハワラ」。

クロスボーダー決済のスタートアップ「トランスファーワイズ」
=ターベット・ヒンリクス、クリスト・カーマンが始めたスタートアップ。
・アディオン

・古風な「信用状」は今も有効

・「フィンテック」の登場は、銀行と決済システムを変えた=スタートアップ人材で、「規制」にガッチガチに守られた古臭いスーツ姿の銀行員とは違うmoven
bunq
saxo
metrobank
simple
BBVA

・アクワイアリングビジネス=加盟店舗手数料フィー だいたい2%前後
=加盟店が複数の決済手段を扱えるようにする

決済を変えた天才ベンチャー「ストライプ」
2010年創業で、「決済は金融ではなくコードに根ざした問題」という課題で解決したスタートアップ。apiコールと給与計算、会計システムもセットで販売している。
のちに彼らは「マスター・マーチャント」主商人になり、麻薬やポルノの取引をNGとするようになった。

ワイヤーカード

・VENMO

・スクリーンスクレーパーのMINT とPLAID

・P2D2

・TEZ(グーグルが買収したインド決済アプリ)
・COIN MARKETCAP.COM

リップルXRP、DAO/ICOコイン

・Monero

・「グローバルな暗号通貨」を作れるか?
フェイスブックのリブラ=ディエム=失敗
お金の3つの機能=価値貯蔵、交換手段、計算単位
=このシャツは「25ユーロ」などと計算できる。

モルガンによる「JPMコイン・マネー」

・中央政府によるデジタル通貨・CBDCの発行

CBDCのリスクと普及化の条件=流動性、慣習
=デジタル銀行をスマホの電子ウォレットに入れておいた方が安全で安くなれば普及化する

オープンか、クローズドかが問題。
=vhsとベータのような規格戦争よりも「オープンで使われ続けるか」どうか。
最初から、「ATM」のネットワークは統一規格だった。
=オープンでプロトコル規格が違うものでは、消費者の支払うフィーが高くなる可能性がある。

Apple Payと欧州委員会の攻防=アップルはNFCをクローズドなアップルのシステムにしたかった。

・規制と当局の攻防=サイバー攻撃から守るのは誰?

NSAによる国営石油会社ペトロブラス監視のニュース

・ヨーロッパの決済ビジネスへの規制が行き詰まる理由=決済コストを軽視しすぎており、コストを下げさせようとするから。

決済は武器になる。金融と決済の地政学=イラク戦争、ロシア・ウクライナ戦争での決済規制。
=「INSTEX」

・決済システムからの排除=移民や難民が排除されるとどうなるのか?
=リスク排除と金融包括のジレンマ

・決済の最終局面(エンドゲーム)はどこですか?
=答えはない。ビッグテックもわからない。
こうして金融決済の歴史を紐解くと、クレジットカードや中国や発展途上国のスーパーアプリもどこからともなく現れたように見えるか、実は起業家がいる。ペイパルやスクエアは今ではオールド銀行よりも価値は高い。
決済の変化もiPhone、アマゾンのエラスティックコンピュータークラウドなどの出現後で、APIコードを書くエンジニアのみぞ知る、だった。

「決済」は地政学的要素を含み、空港で、クレジットカードや通貨ではなく、携帯電話を換えることになる世界観がやってくる。

巨大企業と規制当局との攻防の中で、フィンテックはますます勝っていくか?

終わりに
・銀行の未来は勝者総取りになり、現金での小口決済事業者は、どんどんと置いてきぼりになる。
・確実なのは「死と税金」だけで、決済の物語に終わりはない。

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