1143 ネットで見た高級レストランマナー集

すっごくいいコンテンツ。メモ。

【保存版】高級レストランでナメられないためのマナー集



高級レストランには一種独特の雰囲気があります。「なんだか店に値踏みされているようで居心地が悪い」と感じる方が多いかもしれませんが、その通り、店は客のことを値踏みしています。

「お客様は平等に扱う」なんてのは大ウソです。レストラン業界には『ソワニエ(大切におもてなしするべき客)』という言葉があるくらいであり、一流の客や金払いの良い常連・重い客に対しては恭しく接し、どう見ても場慣れしていない一見客に対しては、人間だもの、おざなりな対応になるものです。

そこで、「高級レストランにあまり行ったことは無いが、ナメられたくはない」と考えるワガママな貴方のために、高級レストランにおけるマナーを整理しました。結構な長文となってしまったので是非ブックマークして頂き、必要に応じて読み返して頂けると幸いです。


基本的にフランス料理店を想定しながら記述しましたが、イタリア料理店でのふるまいに準用しても大きな問題は無いでしょう。また、より達人の域に達している諸兄やプロのサービスパーソンの目から見て、誤りや追記すべき点があればご一報下さい。随時修正させて頂ければと存じます。強制力は無いが価値がある、そんな素敵なマナーブックを、みんなで作り上げていきましょう。


【入店前】
予約時の情報は具体的に伝えろ
高級レストランに予約ナシで飛び込むのは相当の達人かただの阿呆かのどちらかです。いずれにも属さない貴方は訪問前に電話で予約を入れるようにしましょう。ピークタイムは避け、アイドルタイムに架電するのがマナーですし、何よりミスも少なくなります。ネットやメールでの予約は互いの時間を拘束せず証拠も残るので便利です。

日時・人数・好き嫌いの有無などはレストランの予約係のほうから聞いてくれますが、誕生日祝いや重要な接待である旨は客のほうから伝える必要があります。

その際、「食後にプロポーズをしようと思うので温かく見守っておいて下さい」「仲直りのためのお詫びディナーなので、少しギクシャクした食事かもしれませんが気にしないで下さい」など、同伴者との関係性や状況を具体的にお伝えしておくと、それらの情報が開店前のミーティングでサービス陣に共有されるので、お店としてもチームワークで対処し易いです。

話は逸れますが、予約時の電話対応がイマイチなお店は、実際に訪問してもイマイチであることが殆どです。レストランの評価とは「予約の電話からお見送りまで」が基本です。旨くて安けりゃ良いってもんじゃない。


ワインは事前に持ち込め
(※このような記事を手に取る初心者の貴方はワインの持ち込みなどにチャレンジしないほうが無難です。この項目は読み飛ばしてOKです)

事情があってワインを持ち込む場合、正面入口から入店し店員にホイっと渡すのは無粋です。お店側としても他のお客様に示しがつかないし、何より振動や温度の問題からワインをベストな状態で味わうことができません。したがって、本番の数日前にワインを持ち込むためだけに訪れたり、宅配便で事前に送っておいたりしたほうが良いでしょう。

ちなみにワインを持ち込んで良い事情とは「入手困難なレアモノ」「生まれ年などの特殊なヴィンテージ」「垂直飲み(同一銘柄の異なるヴィンテージの飲み比べ)」などに限られ、間違ってもお店のワインリストに載っているようなモノを持ち込んではいけません。


最低でもジャケットと革靴を着用せよ
残念ながら人は見た目で判断されます。小汚い身なりであれば入店を断られる場合もあるし、臭いものには蓋をしろとばかりに厨房間近の目立たない席に通されたり、出入り口付近の騒がしいテーブルに案内されたりします。当然にサービスの優先順位は低くなるでしょう。同じ料金を支払っているのに、です。

したがって、男性は最低でもジャケットと革靴を着用しましょう。暑くても我慢。女性は男性に比べてドレスコードは緩いので、品の良いワンピでも着ていれば大体オッケーです。心配症な方は予約時にドレスコードについて確認しておくと良いでしょう。


香水はつけるな
ワインの価値の半分は香りです。それを邪魔する香水をたっぷり振りかけてくるのは自殺に等しい。強い香水をつけているだけで「ああ、ワインに興味が無い人なんだな」と、お店からもホストからも判定されてしまいます。他の客にも迷惑であり、私は何度か「隣のテーブルの香水がキツい」という理由で席を代わってもらったことがあります。すなわちそのような人物は営業妨害といっても過言ではありません。フランス料理を食べる上で香水は百害あって一利なしです。


【入店から着席】
女のコートは男が脱がせろ
一般的にはお店の方がコートを脱がせ預かろうとしてくれますが、そこはあえてホストである男性がその役割を担ったほうがカッコイイです。あくまでもホストがゲストをもてなしているという印象を植え付ける。もちろん男性が脱ぐ際はお店の方にお手伝い頂いてOKです。

テーブルに着く前にお手洗いに行っておけ
ヘヴィなフランス料理では食事時間が3時間を超えることもしばしば。食事中に中座するのはエレガントでないため極力避けたいところ。したがって、食事をスタートする直前に膀胱を空っぽにしておくほうがスマートです。食事前に丹念に手を洗う最後のチャンスでもあります(フランス料理は手づかみで食べる機会が意外と多い)。
常にレディ・ファーストを心がけよ

常に女性が優先されるよう振舞って下さい。女性にドアを開けて差し上げるのは当然のこと、館内を歩く際も自然に女性が前に来るよう促す。逆に言うと、女性はヘンに遠慮することなく堂々と先陣を切って歩いて下さい(もちろん先頭にはお店の案内人がいます)。

ただし例外として、階段がある場合は常に男性が下に来るように。具体的には降り階段では男性が先、昇り階段では男性が後ろです。これは女性が段差で転倒した際に男性が華麗にお姫様抱っこでキャッチできるようにするためです。


女性を上席に座らせろ
女性(または接待される最も偉い方)を上席に座らせましょう。「上席ってドコだよ」という方でもご安心を。これは実に簡単で、女性は男性の前を歩いており、お店の方が最初に案内し椅子を引いた席が上席です。

基本的にはそのテーブルにおける最も奥の席が上席であり、例外的に夜景が自慢のテーブルであれば、その夜景を最も堪能できる席が上席となります。まあ、あまり深く考えずお店の方に促されるままに動けば良いでしょう。女性は男性に対して妙な気遣いを見せることはなく、店員が指定した席に堂々と着いて下さい。
着席・退席は椅子の左側から
着席ならびに退席は常に椅子の左側からです。これは昔々の衣装の名残り。一般的に人間は右利きが多く、基本的に剣は左腰に差していました。そのため右側から椅子に座ろうとすると剣が邪魔で座りづらい。したがって自然と着席ならびに退席は椅子の左側から行うようになったのです。現代では非合理的なルールですが、そういうものだと割り切りましょう。


テーブルの上にケータイを置くな
これは女性に最も多い減点ポイント。テーブルの上にケータイなど私物を置いてはいけません。そもそもテーブルとは皿の延長であり(パン皿が無い店はクロスの上に直接パンを置く)、皿の上にバイキンまみれのケータイを置くなど愚の骨頂です。


椅子の背もたれは装飾である
背筋は椅子の座面に直角でお願いします。背もたれはありますが、あれには決してもたれかからないようにしましょう。男性の場合、少し浅めに座ったほうが背筋が伸び、両足で地面を踏ん張り易いことでしょう。決してラクな姿勢ではありませんが、エレガントに魅せるためのトレーニングだと思って頑張ってください。


肘をつくな、ただし手はテーブルの上に置け
食事中に肘をついてはならないことは日本の小学校でも習います。ここではもう一歩踏み込んで、手は手首より上をテーブルの上に乗せるようにしておきましょう。理由は「テーブルの下に武器を隠し持っていませんよ」とアピールするためです。こちらも昔の名残りで現代では非合理的な決まりですが、そういうものだと割り切りましょう。


【食べ物を注文】
食前酒はシャンパーニュが無難
着席して人心地ついた頃にソムリエが登場し、「お食事前にグラスのシャンパーニュはいかがでしょう?」と聞いてくるはずです。これには「お願いします」と答えるだけで満点。これ以上言うことはありません。

「ワインリストを見せてください」もいいですね。客のワイン選びに積極性が感じられ、ソムリエの気合が入る瞬間です。なに、難しいことはありません。後はふむふむと適当に頷きながら、最も安いシャンパーニュを注文すれば良いだけです(大体昇順でソートされています)。グラスのシャンパーニュは割高な店が多いので、泡が好きでそれなりの量を飲みたい方はボトルで注文してしまうのも一案です。

女性は「あたしはベリーニを」と、変化球を投げ込むのも良いかもしれません。ホストとソムリエに対し、あたくしちょっと知ってますのよアピールです。ただし食前酒に適したカクテルは限られている点に注意。オススメはベリーニ(白桃+シャンパーニュ)やミモザ(オレンジ+シャンパーニュ)、キール・ロワイヤル(カシス+シャンパーニュ)あたりです。


ナプキンは2つ折りにしてループを手前にして膝に置け
食前酒の注文が済んだらナプキンを膝に置きましょう。間違っても首もとに下げてはいけません。それは焼肉屋のエプロンです。

ナプキンは2つ折りにしてループを手前にして膝に置きます。理由はナプキンで口元を拭う際に、折った内側の面で唇にタッチし、汚れた部分が外に見えないようにするためです。

女性がナプキンを膝にかけた後に、男性も膝におきます。ここにおいてもレディ・ファーストを厳守する必要があります。ある意味女性にはリードする義務があるので頑張って下さい。


飲み物を注がれる時はグラスに触れるな
ニッポンのサラリーマン社会で育った貴方はついグラスを持ちたくなるかもしれませんが、フランス料理においてはグラスに触れてはなりません。というか、ただでさえ持ち手が定まらないワイングラスを持たれてしまっては注ぐほうも大変です。


乾杯時にグラスを合わせるな
乾杯の際にグラスを合わせてカチンと鳴らしてはなりません。高級レストランにおいてはグラスも高級かつ繊細であり、割れてしまう恐れがあります。後述の「音を立てるな」にも通じる論点です。グラスを軽く持ち上げて目線を合わせ、軽く微笑む程度で充分です。


メニューを熟読せよ
コース料理の場合、値段にしか興味がなくメニューをロクに読み込まない方が多いですが、サボらずじっくり読み込むようにしましょう。後のワイン選びのヒントになりますし、何より「値段だけじゃなく食材や調理に興味がありますよ」というアピールに繋がります。

アラカルトの場合はメインから選びます。メインを肉に決めたら前菜は魚介や野菜とするのが無難。メインを魚にした場合の前菜は肉や野菜です。アラカルトのポーションはコースの皿の倍近くあり、また、注文していない小皿もチョコチョコ出ることが多いので、普通は前菜1皿、メイン1皿で充分でしょう。基本的には食べたいものを注文すれば良いのですが、同伴者と同じものを注文したほうが会話も弾み記憶にも残り、話題として振り返り易いと言われています。

本場フランスではこのメニュー選びの瞬間に最も労力を注いでいるように見え、20~30分かけるなど当たり前です。その際に手ぶらだと間が持たないので、食前酒が重要な役割を担うことになるのです。「メニュー選びの最中にシャンパーニュが1本空いてしまった」のような客は超カッコイイです。


【飲み物を注文】
ワイン・ペアリングが無難
ワイン・ペアリング(≒デギュスタシオン)が無難でしょう。料理ごとに合ったワインを提供してくれるのはもちろんのこと、何より予算が読めるのが有り難い。ソムリエとのややこしい議論も不要であり、初心者には堪らないシステムです。


ソムリエに必ず伝えるべきポイントは『飲む量』『予算』
ワイン・ペアリングでない場合、ロクにワインリストも見ずに「料理に合うワインをお願いします」と下駄を全てソムリエに預けるのは避けたいところ。10万円のワインを持ってこられても、それが料理に合うのであれば文句は言えません。

ソムリエに必ず伝えるべきポイントは『飲む量』『予算』です。ほうほうと適当に頷きながらワインリストをペラペラとめくり、「白と赤1本づつを飲もうと思ってるのですが~」と『飲む量』を前置きした上で、「このあたりで食事に合わせるとすれば何が良いでしょうか?」とワインリストを指差しソムリエに意見を請います。「このあたり」で指差すのは産地でも造り手でもなく、価格です。これで満点。

「どのようなワインがお好みですか?」とソムリエが聞いてくる場合がありますが、あまり話し込むとボロが出てしまうので多くを語る必要はありません。「お料理に合えばOKです」と打ち返し、『飲む量』と『予算』は告げたので、ここから先はソムリエのお手並み拝見といった態度で充分です。

もちろん上級者となった暁にはワインリストをしっかりと読み込み、「ボルドーが多い。ボルドーに力を入れている店だな」「値付けが酒屋の3~4倍と割高だ。ここでワインをたっぷり飲むのはもったいない。泡1本に留めよう」のような判断を下すのもまた一興。


注文したワインは記憶しろ
注文したワインの銘柄やヴィンテージ(生産年)は、ワインが到着するまでの間しっかりと記憶に留めておきましょう。「こちらでよろしいでしょうか?」と、抜栓前にソムリエがボトルを提示し確認を求めてくるので、記憶の中の銘柄やヴィンテージと照らし合わせます。ごく稀に誤ったボトルを持ってこられる場合があり、それに対してGOサインを出してしまうと、もうキャンセルはできませんのでご注意を。貴方は確認を済ませ実際に飲んだのだから、会計時に「注文したものと値段が違うじゃないか!」とゴネても詮の無いことです。

ホストテストで感想を述べるな
ソムリエが「ご確認をお願いします」と、ホストのグラスにワインを少量注ぐ場合があります。その際は軽く香りを取り、ほんの少しだけ口に含み、ウムと頷きソムリエに目で合図するだけで充分です。かける時間は5~10秒。たまにグルグルと洗濯機のようにグラスを回し恍惚の表情を浮かべ、味わいについてベラベラと語る方がいますが、あれはただのバカなので真似しないように。

このテストの由来は『毒見』であり、ワインに毒を盛っていないことを証明するために、ホストが最初に飲んでみせるパフォーマンスです。したがって、「ここはワインに詳しい○○さんがやってよ~」のように責任逃れするのも愚か者の極み。ワインに疎かろうが何だろうが、ホストが最初に毒見するのがスジというものです。

現代ではワインが劣化していないかを確認することが主な目的。したがって、劣化の有無さえ判定できれば、香りや味わいがどうのこうのとコメントする必要は全くありません。何なら香りだけ嗅いでOKと判断しても良いくらいです。

「劣化とかわかんねーよ」という方もご安心を。ホストがテストするまでもなく、その道のプロであるソムリエが事前に品質を確認しているため、客の手元に劣化したワインが届くことはまずありません。

ちなみに「うーん、イメージと違うなあ、違うの持ってきて」と、ちょづいたとしても、そのワインに劣化が見られない限りそれはただの追加注文であり、両方の金額を請求されてしまうのでご注意を。

若いワインやスクリューキャップのワイン、安価なワインの場合に「ご確認はいかがなさいますか?」とソムリエから問われる場合があります。これは「このワインは劣化するはずはなくホストテストなど無意味。仮に劣化していたとしても、安物ですぐに換えてやるから安心しろ」という意味なので、わざわざテストする必要はありません。その場合は「結構です。そのまま注いで下さい」と一声添えるだけでOK。無理にテイスティングしようとすると、性格の悪いソムリエであれば「あの客あんな安物のワインをテストしてどうすんだよダサ」と裏方で陰口を言うかもしれません。


ワインの温度はリクエストしてOK
ワインにはそれぞれ最も美味しく飲める温度というものが存在し、ソムリエはその温度を狙ってサービスしてくれます。しかしながら味覚や好みというのは人に拠って異なるので、もう少し温度を下げた(もしくは上げた)ほうが私は好きだと感じた場合は、堂々とリクエストしてOKです。


残念ながら水は有料だ
ワインを注文した後に「お水はスパークリングとスティル、いかがなさいましょうか?」と聞かれることでしょう。スパークリングとは炭酸水のことで、スティルとは炭酸の無い普通のミネラルウォーターのことです。

タツヤ・カワゴエの川越達也シェフが「水だけで800円も取られた」と食べログに書き込まれたことに対し、「そういうお店に行ったことがないから『800円取られた』という感覚になるんですよ」と発言し、年収3~400万円の人が慣れない高級店に行き批判を書くのはおかしいと訴え炎上しました。

しかし残念ながら、グルメな人々の中では彼が言うことを正論と捉える方が多いです。自宅で水道水をガブガブ飲んでいる人にとっては水ごときで1,000円近く徴収されるのは憤懣やるかたないでしょうが、高級レストランとはそういう場所なんだと諦めて下さい。

ちなみに「タップ(水道水)も~」と選択肢を提示された場合、それに乗っかるのは少しも恥ずかしいことではありません。水代で浮いた予算は是非ワインに回しましょう。


【食事の序盤から中盤】
ケータイをチェックするな
これも女性に多い減点ポイントです。「テーブルの上にケータイを置くな」に通じるのですが、ケータイがピコピコ光るたびに内容をチェックし返信するなどは言語道断です。目の前の料理や男性よりも、ここに居ない誰かとの繋がりが重要なのであれば、最初からこのような店に来ないほうが皆ハッピーです。ホストは物凄いコストをかけて食事に臨んでいるのだから、ゲストもケータイの電源を切ってから食事に臨むぐらいの心意気が欲しいところ。映画館で2~3時間ならガマンできるんだからフランス料理屋でも頑張って下さい。

どうしても連絡を取らなければ状況であれば「カクカクシカジカで途中途中ケータイを確認することになるがご容赦頂きたい」と事前にホストに断っておきましょう。


料理の香りを取れ
いきなり料理を口に放り込むのではなく、まずは香りをお楽しみ下さい。味覚とは舌先のみではなく五感の集大成です。風邪で鼻が詰まっていると、食事が美味しく感じられないのはそのためです。キノコ類(特にトリュフ)は味そのものよりも香りを楽しむ食材であることをお忘れなく。


写真は一瞬で撮れ
そもそも食事中にカメラを取り出し料理の写真を撮るのは好ましい行為ではありません。が、そうも言っていられないSNS時代でもあるので、お店が認めている場合に限り写真撮影はOKとしましょう。「ダイニングでは雰囲気を壊すのでNGだが個室ならOK」「カメラは店員に預けてくれ厨房で撮っておくから」のような一工夫あるレストランもあったりします。

ただし、お店に注意されないからと言って巨大なカメラでバッシャバッシャ撮るのはやり過ぎです。フラッシュ撮影は論外。携帯のピロリーンも避けたいところ。できればサイズが小さく音の出ないコンデジを使用しましょう。

テーブルの全員がそれぞれカメラを構えるのではなく、代表者が撮ってシェアするぐらいの心遣いがクールです。何度も何度も撮り直すのは見苦しいし料理も冷めてしまうので、撮るなら撮るで一瞬で一発でキメましょう。

カトラリーは外側から使え
カトラリーとはフォークやナイフのこと。テーブルコーディネートに拠っては使用するカトラリーを最初からズラりと並べてあることがありますが、外側から順番に使っていくだけでOKです。間違って使ってしまったり、順序がわからなくなってしまっても焦らない。お店側が黙って不要なものは下げ、必要なものは追加で並べてくれます。


皿や顔は動かさずカトラリーを動かせ
日本の茶碗文化がそうさせるのかもしれませんが、皿を持ち上げて口元まで近づけたりするのはNGです。フランス料理において皿を動かすことは基本的に無いと考えて良いでしょう。

だからといって顔面を皿に近づけるのも下品であり、それを人は犬食いと呼ぶ。ポタポタとこぼさないようにするための努力だとは理解できますが、あまりにも見苦しい。こぼしたくないのであれば、皿の上である程度、汁気を拭うなりポロポロを落とすなりしてから口に運べば良いだけのことです。

そのプロセスを省略して食べることを急ぐということは、食べ物を目前にして己の食欲を制御できなくなっている証拠であり、理性が薄弱で文化的スラムに陥っていると判断されてしまいます。


手皿を用いるな
これは何故か女性に多いのですが、手皿を添えるのもNGです。大体、手皿で落下物をキャッチできたからといって何になるのか。ポタポタとこぼさないようにするための工夫は「皿や顔は動かさずカトラリーを動かせ」で既に述べたとおりです。


音を立てるな
これは幼稚園や小学校でも学ぶことなのですが、意外にもできていない人が多い。静かにカトラリーを持ち、静かに料理を食べ易いサイズに切り、音を立てて啜ることなく静かに口の中へ運ぶ。口をしっかりと閉じて料理を噛む。クチャ食いは論外です。


麺はフォークだけで食べろ
どちらかというとフランス料理よりはイタリア料理における論点ですが、スパゲティなどの麺類はフォークのみで食べ切るのが正統的です。もちろん日本のレストランではスプーンも同時に供されるのが普通なので、それを用いても何ら問題はありませんが、クールではありません。

また、蕎麦のようにズズっと啜るのは問題外。先の「音を立てるな」にも通じます。途中で麺を噛み切って食べさしを皿に戻すのもエレガントではありません。上手に食べるコツは、極少量の麺をこれでもかというほどフォークに巻きつけ、一口で頬張り切れる大きさにまとめ上げることです。そうすればフォークからダラとぶら下がることも無くなり、結果として啜ることも噛み切ることも無く、一口で適量を頬張ることができるようになります。


食べるスピードを周りに合わせろ
これは大半の男性が苦手とするところ。高級フランス料理とは単にカロリーや栄養を摂取するだけが目的ではなく、建築や調度品、雰囲気などを含めた世界観の全てを味わう舞台です。自己の欲望に任せ自分のペースだけを考えて食事を進めるのは野暮というもの。そのため、共演者である連れの食事スピードを常に意識しながら食べることが肝要です。


場合に拠っては堂々と手を使え
アミューズや骨付き肉など、手を使って食べるのが前提の料理の場合は、給仕が「お手にとって~」と事前にアドバイスしてくれます。それ以外の食材、例えばエビやカニ、貝、魚の骨など、カトラリーだけでは上手く食べる自信がない場合も堂々と手を使いましょう。もちろんカトラリーだけで美しく食べ切るに越したことはありませんが、それが難しくカトラリーだけではグチャングチャンに食べ散らかすぐらいなら、手づかみで上手に食べ切ったほうがまだマシです。


卓上に置かれたボウルは手を洗うためのものだ
製菓用のボウルを小さくしたようなボウルに水を張って提供されることがあります。これは手づかみで食事した際に手を洗うための水です。「知らずに飲んでしまった」など都市伝説のような笑い話がありますが、もちろんスープや飲み水ではありません。


グラスは右手、パンは左手
大人数の円卓で混乱する方が多いですが、貴方のグラスは右手にあるものであり、貴方のパン皿は左手にあるものです。自信が無ければ自分から着手するのは諦め、両隣のゲストが使用したのを確認してから残りのグラスとパンを手に取りましょう。

お隣さんが誤ったグラス(または皿)を取ってしまった場合でも「あなた間違ってますよ」などと指摘して恥をかかせてはなりません。給仕に「私のパンはどちらかしら?」と静かに訊ねれば、すぐに事情を察して上手いことやってくれます。

グラスに口をつける前にナプキンの内側で口元を拭え
食中ワインを飲む際、何も考えずにグラスに口をつけると料理の油脂がグラスに付着し汚れてしまいます。したがって、グラスに口をつける前にはナプキンの内側で軽く口元を拭い、油脂をできるだけ排除してからワインを飲むようにしましょう。同じ理由から、女性がベッタベタに口紅をつけて食事に臨むのも避けたほうが良いでしょう。



グラスはエレガントに持て
ワイングラスの持ち方は『ステム(脚)を持つ派』と『ボウル(胴体)を持つ派』に分かれますが、私は前者を推します。なぜなら『ボウルの部分を直接手で握ると、体温で中身のワインが温まってしまい、味わいに影響が出る』という明確な根拠があり、また、何よりエレガントで見栄えするからです。

ネット上には『ボウル(胴体)を持つ派』も少なからずいて、その理由は『公式な晩餐会マナーではそうなんだ!』と言うばかりで根拠は不明確。何よりボウルをガツンと手に取るのは無粋であり、はっきり言ってダサいです。これまで私は数百人とフランス料理をご一緒しましたが、『ボウル(胴体)を持つ派』は現実にはたったひとりであり、アメリカでの生活が長い日本人女性でした。

余談ですが、グラスの持ち方ひとつでその人の経験値が即座に判断できます。テニスが上手い人はプレーせずともラケットを持ってコートを歩いているだけでサマになるのと同じ原理です。経験値は無くともせめてグラスの取り扱いぐらいは上手くなりたい方は、自宅のコップを全てワイングラスに置き換え、何でもない水やジュースを飲む際であってもワイングラスを用いるようにしましょう。それだけでグラスの取り扱いはかなり上達するはずです。


ワインはいきなり飲むな
「料理の香りを取れ」で述べたとおり、味覚とは舌先のみではなく五感の集大成です。加えてワインの価値の半分は香りです。いきなり飲み下すのではなく、まずは香りをお楽しみ下さい。


グラスをグルグル回すな
ブラインドテイスティングなど、ワインの特徴を瞬発的に把握しなければならない場合に、グラスをグルグル回してワインを強制的に空気に触れさせる場合がありますが、普通の食事においてはまず必要の無い行為です。

スパークリングワインは下から泡が立ち上ってくるのでそもそも不要。白ワインは一般的に空気に触れてどうのこうのというモノではないから不要(万一そのようなワインである場合はソムリエが最初からデキャンタージュを提案してくれる)。偉大な赤ワインに限ってその可能性は無くは無い。しかしながらそのようなワインは食中における状態の変化を楽しむべきであり、無理矢理空気に触れさせグチャングチャンに混ぜて抉じ開ける必要はあるのかなあ、というのが私の意見です。

ワインは自分たちで注ぐな

原則的にワインはソムリエが管理しているのでこのような状況はまず起こりえないのですが、ごくたまに日本のビール文化に慣れ親しんだ年配の方が「いやあ、どうぞ1杯」などとやっていますが当然NGです。

追加で注いでもらいたい場合は、空のワイングラスを手に持ち給仕に目配せするだけでOK。間違っても「すみませーん」などと大声で呼びつけないように。

パンでソースを拭うのは賛否両論
パンは料理と料理の間に口にして口腔内をリセットするのが本来の役割だそうですが、ソースや肉汁に惚れ込んだ場合はパンで拭い取りながら、余すところ無く楽しみ切るのもアリでしょう。

「エレガントでない」と眉をひそめる方もいらっしゃるかもしれませんが、料理人の立場からすると、きれいサッパリ食べ切ってもらったほうが心躍るというものではないかなあ、と私は考えています。

したがって、接待など外形が重要視される会食の場ではパンでソースを拭ったりせず、気の知れた家族や恋人・友人との食事の際は、のように使い分ければ良いと思います。


食べ終えたカトラリーは揃えて4時に置け
料理を食べ終えた際、使用したカトラリーは揃えてお皿の3~4時の位置に置きましょう。これは「食べ終えました」のサインであり、給仕は黙ってお皿を下げてくれます。ハの字型にフォークとナイフを置くと「まだ食べてますよ」のサインであり、その場合、給仕が皿を下げることはありません。いずれの場合もナイフの刃は自分に向けておくようにしましょう。

このように、テーブルマナーとは、テーブルにおける会話を中断せず、お店側と言葉を交わさずともこちらの意思を伝えることができるという、非常に便利なツールでもあるのです。

落としたカトラリーは自分で拾うな
万一カトラリーを床に落としてしまった場合でも、自分で拾ってはなりません。給仕に目で合図すれば、黙って新しいカトラリーに交換してくれます。ナプキンを落とした場合も同様です。

これも昔の名残であり、『カトラリーを拾うフリをして足元に隠し持っていた武器を取り出し襲い掛かる』可能性を排除するためです。
【中座】
トイレはせめてメインが終わるまでガマンしろ
数十席もあるレストランにおいて、テーブルごとの食べるペースを勘案しながら臨機応変に食事を提供していくのは至難の業。食事中に中座するのは厨房の作業工程を台無しにする行為です。
貴方が最悪のタイミングでトイレに立てば、給仕から厨房へ速攻で報告が入り、「6番テーブル、遠方(トイレの隠語)だぞー!ストーップ!!ストォオオオオップ!」「今さら止めれるかよ!ぐわあああーーーー!」などのように、耳をすませば厨房から悲鳴が聞こえてくることでしょう。
デザートは温度管理が比較的容易であり、料理ほど作業が不可逆的では無いので、せめてメインを食べ切るまではトイレはガマンして下さい。


トイレは行きたくなくても男が先に行け
先にも述べた通り、原則として食事中に席を立つのは好ましくありませんが、3~4時間にもおよぶコース料理においてはやはり中座せざるを得ません。そこで女子の膀胱具合を見計らい、まずは男性が先にお手洗いに行くようにしましょう。「お手洗いはどちらですか?」と、女性に恥ずかしい質問をさせないための配慮です。もちろん入店時にお手洗いを利用しており、既に場所を把握しているのであればこのような気遣いは不要です。


中座の時のナプキンは椅子の上に置け
お手洗いなどで中座する際、ナプキンは軽くたたんで椅子の上に置きましょう。口を拭ったり手を拭いたりした使用済みのナプキンを机の上に置くのはNG。汚い部分が同伴者に見えてしまいエレガントではありません。
【食事の終盤】
「小さいポーションで全種類下さい」とか言うな
「おなかに余裕があれば、デザートの前にチーズはいかがでしょうか」と、チーズワゴンがやって来る場合があります。チーズがコース代金に組み込まれている場合は実質的には食べ放題。別料金の場合は1切れいくらの場合と1人いくらで食べ放題の2通りの店があります。本心では「有料なら要らない」であっても、「もうお腹がいっぱいなので~」など、そこは大人の言葉でお願いします。

ここで、食べ放題だからだと言って「小さいポーションで全種類下さい」などとは絶対に言わないように。チーズワゴンは店内で1台しかなく、全種類だと1皿を作るためだけに10分近くの時間を要してしまうため、周りの客からヒンシュクを買ってしまいます。常識的には3~4種のチョイスが妥当でしょう。デザートワゴンについても同様です。


フランスでは食後のコーヒーは有料だ
日本のレストランでコース料理を注文すると、自動的に食後のコーヒー等がついてくることが多いですが、フランスでは殆どの店が有料です。別に飲まなくても恥でも何でもないので、「コーヒーごときに1,000円も払えるか」という方は自信を持ってお断り下さい。ちなみにカプチーノはヨーロッパ圏では午前中に飲むものなのでご注意を。

余談ですが、フランスはチーズがコース料金に組み込まれていることが多く、コーヒーは別料金。日本はチーズは別料金だけれども、コーヒーはコース料金に組み込まれていることが多いです。文化の違いって面白い。

【お会計から退店】
女はトイレは行きたくなくても必ず行け
高級レストランにおいてお会計はテーブルで行うのが普通です。その際、明細をじっくり読み込む姿や「この代金は何?」などと問い質す様はなるべく女性に見られたくないものです。したがって女性はお手洗いに行きたくなくても必ず行くようにして下さい。できれば5分以上帰って来ないで頂けると助かります。インスタでも見て時間をつぶして来てください。

同伴者が気のきかない女性で中々お手洗いに立たなかったり、3人以上の会食でホストが全額払う場合などは、ホストがトイレに立つフリをしてレジでお会計を済ませてしまいましょう。「今からお手洗いに行くので明細を用意しておいて下さい」のようにレジに声をかけてからトイレに行くと、用を済ませた時にはレジがスタンバってくれているので処理がスムーズです。


退店時にナプキンは畳むな
几帳面な日本人は退店時にナプキンをキレイに畳みがちですが、これはNG。グシャっと適当に丸めてテーブルの上に放り出しておくのがマナーです。これは「料理があまりに美味しすぎて、感動でナプキンを畳むことすら忘れてしまいました」の意味となります。逆にピッタリと綺麗に折り畳んでしまうと「ぜんぜん美味しくなかったぽよ」というクレームを意味するサインとなってしまいます。


女は店に感謝するんじゃなくてホストに感謝しろ
ゲストが給仕や料理人に対して「ごちそうさまでした」「ありがとうございました」と言うのも良いのですが、まずはこのような場を設けてくれたホストに対して最大限の感謝の意を伝えるようにしましょう。ゲストがホストに感謝し、ホストがお店に感謝するという構図が本来的です。お店にばっかり良い顔をする割にホストへの感謝が適当だと凄く寂しいし、お店側としても気まずいです。はあちゅうが言うように、食後・退店時・別れ際・帰宅後のLINEで、最低4回はホストに感謝しましょう。
女のコートは男が着せろ
「女のコートは男が脱がせろ」とコンセプトは同じです。男性がお店から女性のコートを受け取り、男性が女性に着せて差し上げて下さい。


【まとめ】
何だかんだで50を超えるマナーを列挙することとなってしまいましたが、全くのド素人が全てを丸暗記して実践できるかというと、難しいと言わざるを得ません。テーブルマナーとはある意味ではスポーツのようなものであり、思い出しながら取り組むものではなく自然と板につくものです。

したがって後は練習あるのみ。常にこのマナー集を頭の片隅に置きながら外食を続けていけば、いずれ「なんだか店に値踏みされているようで居心地が悪い」と感じることは無くなるはずです。

最重要ポイントは、

  • レディ・ファースト

  • 雰囲気に溶け込む

  • 周りの人々に不快な思いをさせない

の3点です。これさえ守ることができれば、椅子は左からだのナプキンの畳み方だのと瑣末な論点は大目に見てもらえます。

逆に、この3点が守れていないと、いくら高級品を身につけていたとしても、いくら金払いが良かったとしても、「あの客はバカな成金だからボってやっていいんだよ」と軽んじられるだけで、心のこもった対応を受けることは困難と考えたほうが良いでしょう。

テーブルマナーとは同一の空間に閉じ込められた他人同士が、お互いに不快な思いをさせないために自然に出来上がったルールです。どうか面倒臭がることなく、お店とお客、または客同士が一体となって、素敵な思い出を一緒に作ることができればと思います。




【2025年版】わたしのライフスタイルを変えた品々

年イチ企画のお買い物特集。昨年に引き続き、買い物を通じて私の日常生活に変化が生じたアイテムをご紹介。いずれも自腹を切って私自身が利用しており、親族や友人にもオススメしているものばかりです。
昨年版はコチラ→ https://www.takemachelin.com/2024/01/2024life.html

■超音波洗浄機

【楽天20週連続売上NO.1】 洗浄液 プレゼント 2年保証 シチズン 超音波洗浄器 SWT710 メガネ ジュエリー アクセサリー 時計 入れ歯 2つの振動子 超音波洗浄機 メガネ洗浄機 小型 腕時計 貴金属 花粉症 眼鏡 超音波 洗浄 CITIZEN 公式

メガネ屋さんの軒先におかれているアレ。眼鏡類はもちろんアクセサリーやメイク道具、就寝時のマウスピースなど用途は無限大で、使用後は明らかにピッカピカなるのが気持ちよい。何ならコレでお風呂を作りたいくらいです。
色んなメーカーから販売されていますが、私は無難にシチズン製が好みです。
■ヘルシオ ホットクック

シャープ SHARP 水なし自動調理鍋 ヘルシオ ホットクック プレミアムホワイト 1.6L KN-HW16H-W

これは世紀の大発明ですねえ。冷蔵庫の残り物を全部ぶち込んでスイッチを押せば、20分後には具沢山のスープが完成します。トマト缶やカット野菜・ミンチ肉でも何でもOK。まな板と包丁を使わなくていいのが超ラクチン。味付けは固形のスープの素を用いれば洋風に、出汁の素なら和風になります。めんつゆなら煮込みっぽくなる。
もちろん長時間火を通す系の凝った料理もお手の物で、実質的に火元がもうひとつ増えるのでホームパーティーにも大活躍。
なぜか大阪府八尾市のふるさと納税の対象になっているので、上手く活用しましょう。
■カレーパウダー

選べる オリジナルカレーパウダー レシピ付き 400g ゆうパケット送料無料Aarti Original Curry Powder ミックススパイス カレー粉 ヘルシー 時短カレー お買い得 大容量

神戸の「アールティー」というインド料理屋が楽天で販売しているカレーパウダーなのですが、先のホットクックで作ったスープにぶち込めばあっという間にスープカレーに。
我が家では最大サイズのホットクックで最大量を生産しその日食べきれない分は冷凍するのですが、そろそろこのスープにも飽きてきたな、という頃に、この魔法の粉で味変しています。大容量で千円かそこらで大変お値打ち。

■リアファイバー

【LINE登録で最大1000円OFF】ビーレジェンド リアファイバー すりおろしピーチ風味 すっきりグレープフルーツ風味 300g 【2袋セット】【 サプリメント 難消化性デキストリン 食物繊維 乳酸菌 ビフィズス菌 オリゴ糖】

プロテイン屋の商品で「腸内環境を改善して、たんぱく質の消化・吸収効率をアップする」ことを目的としたもの。食物繊維や乳酸菌・ビフィズス菌などが配合されているようですが、私は二日酔い防止のために活用しています。どのようなメカニズムかはよくわかりませんが、二日酔いになりにくい、または軽度で済む実感があり、お通じの状態も良くなります。
ピーチ味とグレープフルーツ味があり、私はピーチ派。フルーチェみたいで普通に美味しい。
袋がデカくシェーカーも必要なので旅先に持っていき辛いのが難点。
昨年版はコチラ→ https://www.takemachelin.com/2024/01/2024life.html




つくられないと、衰退していくんです

演出家・いのうえひでのり氏インタビュー
文化 #SYNODOS演劇事始#劇団☆新感線

1980年の旗揚げ以来、演劇にマンガと活劇とロックを持ち込み、独自のエンターテインメントを築き上げてきた劇団☆新感線。小劇場のにおいを残したまま商業演劇の一角を担う劇団へと成長した、稀有な存在だ。主宰のいのうえひでのりさんに、演劇的なルーツや先行世代への思い、日本の演劇をめぐる状況について話を聞いた。(聞き手/島﨑今日子、構成/長瀬千雅)

蜷川、つかからの影響と反発

――最初に見た芝居はなんでしたか。
正確には覚えていませんが、「こういうことをやっていきたいな」と思ったきっかけはやはりつか(こうへい)さんの芝居です。
――おいくつぐらいの時でした?
高校生ですね。
――福岡の劇場で?
いや、テレビです。「若い広場」という。
――NHKが60年代70年代にやっていた若者向け番組ですね。
テレビスタジオの中に簡易なステージを作って『戦争で死ねなかったお父さんのために』のダイジェスト版をやったんですよ。テレビでやるぐらい大ブームだったんでしょうね。
――小劇場ブーム、アングラブーム。
つかさんの前に唐(十郎)さんの状況劇場などのブームがありましたが、僕は世代的にギリギリで。
――状況劇場はご覧になっています?
『唐版・犬狼都市』(1979)を見ました。(中島)かずきさんは『蛇姫様 我が心の奈蛇』(1977)を見てるんです。田川のボタ山でやったのを。「それはすごかった!」と聞かされて、チキショー俺も見たかった、と。

いのうえひでのりさん
――伝説の舞台ですもんね。
その年の大河が(松本)白鸚さんが(市川)染五郎さんだったころの『黄金の日日』。それに根津甚八さんが出ていて、すごいブームになった。つかさんの芝居を偶然テレビで見たのはそのころですね。「すごい! 絶対見たい」と思って、大阪芸大に入ったあと『いつも心に太陽を』(1979)を見にいきました。
――あれは泣きますよね。
ゲラゲラ笑っているのにだんだん切ない気持ちになっていくという、かつて経験したことのない感情になって。ああ、すごいと思ってね。そこからかなりつかさんに傾倒しました。
――いのうえさんはもともとは俳優志望だったんですか。
人前で何かやったりするのは好きだったんですよね。でも具体的にこれになりたいというのはなかったと思います。テレビっ子でテレビが好きで、映画が好きで。
――どんな映画を?
怪獣映画ですよ、最初は。ゴジラだ、ガメラだ。小学校高学年になるとませた友達がいて、そいつと『ウエストサイド物語』と『真夜中のカーボーイ』を名画座のリバイバル上映で見て。小学生にはもう、「えーっなにこれ?!」でしたし、『ウエストサイド』に至っては「なんでケンカするのに踊ると?」っていう。
――あはははは!
そんな感じですよ(笑)。
――でも『真夜中のカーボーイ』には心打たれたんですね。
そうそうそう、最後にちょっと切なくなってね。
――私もいちばん好きな映画が『真夜中のカーボーイ』なんです。
『傷だらけの天使』(テレビドラマ、1974〜75)とか完全に同じ構造ですもんね。ああいうのをいつか(森田)剛ちゃんでやりたいなと思っていまして、それで昔からわりとずっと「バディものをやりたい」と。だから、自我みたいなものはそのころに、中学・高校・大学ぐらいにできあがったんだと思います。
――そのころ好きになったもので美意識や感性は決まっている。
そうだと思います。そのころに好きになったものが今の創作のベースになっていますし、そういうものからいずれ卒業するのかなと思ったら全然卒業しなかった(笑)。
――例えば、スティーブ・ジョブズは元祖コンピューターオタクと言われることがありますよね。そういう意味でいのうえさんは演劇のオタクじゃないかなと私は思っているんです。先行世代と少し違うんですね。
それはそうだと思います。僕はやっぱり蜷川(幸雄)さんや唐さんのようなインテリではないと思っているので。文学青年でもないし。

――あの時代は教養としての演劇というものがありましたよね。
先輩たちの話を聞いているとそういう側面はあったように思いますね。だからなのか、女優さんや俳優さんを褒める言葉が豊かなんです。僕なんか「バッとやってガシッとやるんだよ」としか言えない(笑)。
僕が演出した『今ひとたびの修羅』(2013)という作品に宮沢りえさんが出演していたんですが、蜷川さんが見にいらしたんですよ。彼女は蜷川組のマドンナでもありますから。蜷川さん、「りえ」と名前を呼びながら持ってきた花束を手渡して。「かっこいいなあ」と思う一方で、「花持ってくるんだ」と。『ガラスの仮面』みたいだなあ、と。
――はははは。
気障だなとは思ったんですが、それがまた絵になっていて。
劇団☆新感線は1980年11月、大阪芸術大学舞台芸術学科の4回生を中心にしたメンバーで旗揚げされた。最初の上演作品はつかこうへいの『熱海殺人事件』。劇団のHPによると、「劇団名は、当時のメンバーが実家に帰省する際、新幹線を使っていたというだけのいい加減な理由」だったという。劇団☆新感線はつかこうへいのコピー劇団として人気爆発、関西学生演劇ブームの中心的存在となった。
――劇団☆新感線はつかさんの作品を上演する劇団として活動を開始したということですが、つか芝居がいのうえさんを射貫いた理由はどこにあったんでしょう。
台詞と、あと音楽だったと思います。台詞をものすごい速さでダーッと言って、音楽がバンっ!と入ってくる。ほとんど何もない舞台なんだけど、すごく豊かだった。
――当時つかさんはタダ同然で自分の戯曲を使わせていたんですよね。
そうそう。上演許可をもらうんですが、使用料といっても数千円程度。「好きなのやれ」という感じでした。つかさんの作品はほとんど上演したと思います。
――いのうえさんはつかさんとの接点はあったんですか。
はじめてお会いしたのは90年代に入ってからです。僕らが東京で上演するようになったころに「なんか俺の芝居をやってるやつがいるらしいな」ということで会うことになった。つかさんが一度劇団を解散して、再び『熱海殺人事件』をやり出したあとですね。
その後、パルコプロデュースの『広島に原爆を落とす日』を僕が演出することになるんですが、あのときは大変だったんですよ。1997年に上演して翌年再演したんですが、ちょうど僕らの公演期間中にインドとパキスタンが核実験を行ったんです。1998年の5月。
戦争と原爆をテーマにした芝居の最中に核実験という世界的に緊張が高まる大ニュースですから、まさかの大事件が起きたみたいな感じで。しかも僕らは東京、大阪のあと広島でやることも決まっていた。ニュース番組から取材がきたりした。そうしたらもう、「お前らには任せておけん!」と、誰よりもつかさんが前に出て語るわけですよ(笑)。
――はははは。
「ニュース23」で筑紫哲也さんと対談してましたね。
――芝居については何かおっしゃいました?
緒川たまきさんがヒロインだったんですが、「おい、緒川たまきに白いレオタード着せろよ」というので、
――あはははは!
レオタードはちょっとねえ、と思いながら(笑)。聞かないふりをしてましたけど。あの人の美意識があるんですよね。最後はタキシードとか。それは心の中で「だせぇな」と思ってたので、右から左へ流しながら(笑)。
――一昨年、『熱海殺人事件』を演出されました。風間杜夫さん、平田満さんというかつてのキャストを迎えて。
何か不思議でしたね。学生のころ、一生懸命カセットテープを聞いて練習していたものを、本物の人たちがやってらっしゃるというのが。それだけで切ない気持ちになりました。「真似したなあ、冬のA棟(大阪芸大にあった実習棟)で」と。
――ははははは。
「そのトーンですよ平田さん!」みたいな(笑)。ダメ出しも何も、正解がここにあるわけですから。一生懸命コピーしてた人たちが目の前で演奏しているようなものです。
――それは、本望という感じですか。
本望でした。

――若いころのいのうえさんが最も傾倒したのがつかさんだとすれば、プロになられてから意識したのが蜷川さんということになりますか。
そうですね。1998年に『ロミオとジュリエット』をさいたま芸術劇場で見てから。それがすごく面白かったんです。「なんだ、『ロミオとジュリエット』面白いじゃないか」と思ったぐらい。それで、「そういえば俺、昔、NHKの舞台中継で『NINAGAWAマクベス』見てるな」と思って。「なんでマクベスなのに時代劇でやってるんだろうな」と子ども心に思ったんですけど。
蜷川さんが亡くなる前年にシアターコクーンで『NINAGAWAマクベス』が再演されたんですが、あれを見たときに、自分はすごく蜷川さんの影響を受けていると思ったんですよ。
――似てますよね。つかさんよりも蜷川さんに。
特に「絵」ですね。シンメトリーな絵づくりとか、色のざっくりとした使い方とか。蜷川さんにそれ、言ったんです。「先生、先生の芝居を見てめっちゃ影響を受けてるのを確認しましたよ」って。そうしたら「そうなんだ」と言ってニコニコしてて。すごいうれしそうだったんでね。
――喜んでいらっしゃったんですね。
ええ。「ざまあみろ」と思っていたかもしれないけど(笑)。でも、「その通りでございます」という気持ちでした。
――今年は蜷川さんの代表作だった『近松心中物語』も演出されました。オファーがきたとき、どんな気持ちでした?
やってみたいなと思いましたよ。問題は「どうやるか」ですが、すぐに新国(新国立劇場中劇場)だと言われたので、あそこなら奥行きを使う『近松』ができるなと思った。それで、「それはやってみてもいいですね」という話になりました。
『近松心中物語』は蜷川幸雄さんがアングラから商業演劇へと活動の場を移して間もない1979年に演出した作品。作家は秋元松代。クライマックス、吹雪の中で平幹二朗演じる忠兵衛が、太地喜和子演じる梅川の首を、真っ赤な帯で締め上げる。手を広げてのけぞる梅川。その一枚の絵のようなシーンが有名になった。
――公演パンフレットに「リスペクトして受け継ぐものと、自分ならではの部分と両方出していく」と書かれていましたが、それは具体的にはどういうところでしたか。
継承したところは2つあって、エンディングに雪をどっかんと使うことと、群衆ですね。梅川も忠兵衛も特別な人物ではない、一市民の話なんだというのが、秋元さんのホンから抽出した蜷川さんの解釈なんです。「群衆の中のひとりひとりの話である」ということ。それと、雪の大和路をスペクタクルな絵としてちゃんと見せる。その2つは蜷川さんから継承しているものです。

『近松心中物語』(2018)で忠兵衛を演じる堤真一さん(左)と梅川を演じる宮沢りえさん 撮影:宮川舞子
――では、オリジナリティーをお出しになった部分は。
エンディングで心中した梅川と忠兵衛は郭の群衆の中に戻っていくんですが、蜷川さんバージョンでは舞台の前方に向かって歩いてきたんですね。それを、奥に向かって歩かせる。観客からは雪越しに後ろ姿が小さくなっていき、群衆の中にまぎれて市井のひとりに戻る――というような奥行きを使った演出です。
もうひとつはセットですね。蜷川さんのときは朝倉摂さんの非常に作り込まれたセットがあった。今回は舞台美術家の松井るみさんが赤い風車を使った非常に美しいセットを作ってくれました。ワゴン(回り舞台)をぐるぐる動かしてセットのかたちを変えていくことで、郭に見立てたり、町並みが現れたりというふうに場面転換していく。そこはオリジナルだと思っています。
――抽象度が高くなっているということですね。
そうせざるを得ない部分もあって。「いのうえなりのスペクタクルを展開していた」と書いてくれた劇評もありましたが、朝倉摂さんのセットはガチンコで作ってありましたし、蜷川さんのときは、群衆があの3倍いましたからね。なおかつ雪は4倍ぐらい降っていた。今はもう(予算的に)あり得ないですね。
あれ、どうしてそんなに雪を降らせたかというと、あの話の主軸は、実は梅川と忠兵衛ではなく、もうひと組のカップルであるお亀と与兵衛なんです。
――そうなんですよね。私も初演を見ましたが、市原悦子さんのお亀と菅野忠彦(現菅野菜保之)さんの与兵衛、面白かった。
お客さん、ゲラゲラ笑っていたでしょう。今回初めて見たお客さんは「こんなに笑っていいの?!」と思ったかもしれませんが、あれは台本どおりなんです。一方で、梅川と忠兵衛の見せ場は心中に向かうまでの道行きで、絵的にはわりとシンプル。それをそのままやるとお亀×与兵衛に比べて弱くなってしまう。だからあそこに大量の雪と、森進一を投入した。
――そういうことなんですか!
死ぬまでものっすごい長いですからね。たっぷりありますから。

『近松心中物語』(2018)の一場面 撮影:宮川舞子
蜷川流スペクタクルを「今はあり得ない」と言ういのうえだが、今もっともスペクタクルな舞台を実現しているのが劇団☆新感線だ。昨年からロングラン公演を続けている『髑髏城の七人』シリーズは、アジア初の客席が360度回る円形劇場「IHIステージアラウンド東京」(東京・豊洲)で上演されている。その機構を生かし、豪華な舞台美術、映像表現と群衆のコラボレーションなど、意欲的な演出が試みられている。
―― 『髑髏城の七人』という同じ作品をキャストを変えて1年間通してやるという、この無謀な試みをやろうと思われたきっかけは。
追い詰められて(笑)。というのはけっこう本音で、僕らが東京でやれる劇場がいよいよなくなってきたんです。
――えっ?! そうなんですか。
ええ。青山劇場も閉鎖されて、いよいよ劇場がなくなって、さてどうするかと話していたときに、TBSさんから「こういう劇場を創る」とお話をいただいたんです。
――その準備にどれぐらいおかけになりました?
話があってから公演が始まるまで2〜3年ですね。
――じゃあもうそのころから小屋不足の問題は顕著だったわけですか。
そうです。慢性的な小屋不足だと思いますよ。東京に限らず、大阪も。
――大阪はもっとひどかったですものね。
特に橋下知事のときに文化への支援をスパスパと切っていきましたよね。
――渋谷にあるシアターオーブは? オープニングシリーズのひとつが新感線の『ZIPANG PUNK~五右衛門ロックⅢ』でしたよね。
今は方針が変わって、海外ミュージカル専門の劇場になっています。日本人キャストでやれるとしても翻案ものに限られます。しかもアジアのものはダメで、『メリーポピンズ』などの西洋の原作に限るということらしいです。
――でもこれだけの動員数を誇る新感線に貸さないというのは……。
やっぱり、行政のトップや大資本がどう振る舞うかに、国の文化度や民度を推し量る何かがあるような気がしますね。残念なことですが。
――そうですね。
小屋がないと僕らはできないですから。そういう状況のときにTBSさんから話があって、これは神様がやれと言っているのだろうと、腹をくくってやることになったんです。
360度回転劇場のことは聞いていたので面白そうだとは思いましたが、ロングランは僕らもやったことがないし、3カ月から4カ月のスパンでスタイルを変えていかなければいけない。すべてが未知数でしたが、『髑髏城』は過去に『アカドクロ』『アオドクロ』『ワカドクロ』とバージョン違いでやったこともあったので、『髑髏城』だったらそういう公演形態に対応できるんじゃないかということで『髑髏城』を提案して、結果的にそれをやることになったわけです。

『髑髏城の七人』の初演は1990年。織田信長が本能寺の変で死んでから8年後の時代を生きる若者たちの物語である。劇団の看板俳優古田新太が主人公の捨之介と天魔王の二役を演じた。新感線が得意とする時代活劇 “いのうえ歌舞伎”であり、1997年の再演の際に観劇した市川染五郎(現十代目松本幸四郎)が見て「これぞ現代の歌舞伎だ」と評したことが、のちに染五郎を主演に迎えての『アオドクロ』と古田主演の『アカドクロ』の競作(2004)へとつながっていく。初演は池袋西口公園のテント、近鉄劇場、シアターアプル、7年後の再演は道頓堀中座やサンシャイン劇場などで上演された。
――新感線が東京に進出されたころは、貸してくれる劇場はもっとありましたよね。
ええ、シアタートップスの佐々木高代さんや、サンシャイン劇場の支配人だった前田三郎さん、青山劇場の能祖さんとか。
――大阪でもオレンジルームとか。
中島陸郎さん。稽古場があった扇町ミュージアムスクエアは大阪ガスさんにお世話になりました。そういう大人に「君ら面白いな」と引っ張られてやってきたというのがいちばん大きいですから。
――そういう意味ではものすごく時代が変わりましたよね。
「(お客さんが)入らないとダメ」という風潮は強くなりました。お客さんも「分からない」と「つまらない」になってしまう。でも昔はお芝居って、分からなくても「なんか面白いよな」というところがあったと思うんです。今は違うんです。分かんないとダメなんです。幼稚化している感じはします。
――昔はその「場」や体験を共有する感じがありましたよね。
そうそう、「なんだこりゃ……!」みたいな。
――それだけでうれしかったりしましたよね。
そうなんですよ。「そういうふうにしたのはおまえらだろう」、というのは古田の意見なんですが(笑)。
――ははははは。
古田は「新感線と三谷さんがそうした」みたいな言い方をよくしてました。一理あるなと(笑)。僕らが始めた当時は、演劇は難しいもの、ちょっとハードルが高いものだったんですよ。それを「いやいや、楽しいものもあるよ」と言ってやり始めたら、いつのまにか周りを見るとそういう分かりやすい芝居ばっかりになってて、うーん、なんだかな……という。一方にちゃんと“演劇”があるからこそ、全力でバカなことができるという気持ちでやっていたので。
――古田さんの意見もありますけれど、私はやっぱりいのうえさんは演劇本来のまがまがしさを体内に持っていると思うんです。例えば唐さんの芝居にあるような。
昔の唐さんの影響はあるかもしれません。乱暴なスピード感とか。大阪の「南河内万歳一座」が唐さんの影響を強く受けていたんですが、それをずっと見てましたから。人がぐちゃぐちゃぐちゃーっと出てくる面白さみたいなのは、そこから影響を受けてると思います。(『髑髏城の七人』に登場する)荒武者隊みたいな、人がガチャガチャ出てくるやつはやっぱりどこかそういうにおいがあるんじゃないかと思います。アングラのね。昔は小劇場と言えばアングラでしたから。

―― そういう全部を吸収しながら、いのうえさんの演劇が今かたちづくられている。
そういうものだったり、蜷川さんだったり、商業演劇、歌舞伎、いろんなものを見るようになって、その中で自分の中に残っているものが自分の芝居のエキスになっている気がします。
――蜷川さんは「アンチ新劇」を標榜されていたところがありますが、いのうえさんは「アンチ」の意識は。
アンチがないんですよ。アンチがないのが僕らの世代だと思います。昔の人は敵をつくりながら進んでいったところがあると思うんですが、僕らは敵を作るというより「パクリながら」みたいな(笑)。そこに罪悪感もためらいもないです。いいものは盗め、使え。「これとこれは絶対一緒にならない」というタブーみたいなものもないんです。面白かったらくっつけてもいいんじゃないかと。
――でも、くっつけるためには、それを昇華させていくエネルギーが必要ですよね。
単純にくっつければいいというものじゃないですからね。
――それに対しての自負はありますでしょう?
自負ということはないですが、これまでやってきた分だけいつのまにか年はとっているので、手練手管みたいなものは覚えてきてはいるのかなと思います。
――かつてマンガみたいだとか、いろいろ言われた時代もあったと思いますが。
いやいや、まだマンガみたいって言われてますよ。それに新感線が基本マンガだというのはその通りなんです。むしろそこは大切にしたい。ただ『髑髏城』にしてもやっぱり若いころの作品なんです。いろいろ手を変え品を変えやってても、やっぱりどこかに無理があるし、「ああチャンバラ多いなあ」とか思いながらやっているわけです。
――肉体的な問題もありますし。
そういう意味では、天海祐希さん主演でやる『修羅天魔~髑髏城の七人 Season極』はちゃんと2018年における『髑髏城』になると思います。若干大人のにおいのする作品に。少年マンガだったのが青年劇画になったみたいな(笑)。
――青年劇画になったときに、いのうえさんの演出や立ち位置は変わってくるわけですか。
変わるところと、同じであろうとするところ、両方あると思います。俳優さんたちも、ちょっとした表現や、昔じゃできなかったお芝居の見せ方ができる人が出てきているので。年をとって体が動かなくなった分だけ、空気感とか色気とか、そういうものは出していきたいなと思います。

『修羅天魔~髑髏城の七人 Season極』の一場面 ©2018『修羅天魔~髑髏城の七人 Season極』/TBS・ヴィレッヂ・劇団☆新感線 撮影:田中亜紀
――時代とともにどう変わっていくかも、背負わされた宿命みたいなものがありますよね。
変わっていきますよ。良くも悪くも洗練される。
――洗練は避けられないですよね。
何回も繰り返していたら洗練はされていくし、無駄は省かれる。ウォー!という勢いで押し切るのではなくて、そこはもうちょっとうまくやろうよみたいなことにはなってくる。それがいいときもあるし、残念なときもあるかもしれない。でもそれは絶対、元には戻らないので。
――あらゆる芸術が抱える宿命ですよね。
何かを失い、何かを獲得している。
――まさにその過程があったと。
ええ。昔の新感線のファンからは「昔は良かった」と言われることもありますが、それはしょうがない。「君らが見たときは古田は30歳だけど、今はもう50歳過ぎだから」と(笑)。今はみんなDVDを見るもんですから、同じ平面で見るんですよ。だから「あれをやってください」と言われても「体が全然違うんで、同じことはできません」と。じゃあその若いキャラクターを今どうやるかと考えたときに、若い肉体、新しい役者さんで見せることを考える。優秀なホンは時代の変化に対して耐性があるので、役者を変えてやっていくことができる。
――客演を迎えるときは、どういう基準で俳優さんを選んでいらっしゃるんですか。
その人が新感線の舞台でやっているのが想像できるかどうかですね。生の舞台を見に行ったり映像を見たりして、「この人だったらこういう面白さが出るんじゃないか」ということはなんとなく想像します。
――有名無名は問わない?
メイン級のキャストを選ぶときは、「この人が新感線に出る、だったら見にいってみよう」という、なんか面白そうなコトが起こりそうだという予感を思わせてくれるかどうかを大事にしています。
――商業演劇である以上、お客さんのことは考えますよね。
もちろん「この人とやってみたい」と思うことが前提ではありますが、真ん中、2番手、3番手ぐらいまではある程度集客のことも考えながらキャスティングします。
――劇団は四分五裂するものです。でも、新感線はメインキャストにゲストを招くようになっても劇団として続いていますね。
もちろん劇団員には今でも脇で頑張ってもらっているんですが、2000年ぐらいまでで、劇団員がガチでメインをやる新感線はやり切ったような気がするんですね。そこからあとというのは、なんだろうな、「新感線」という芝居をつくるベースと言うか……。「エグザイルトライブ」ではないけれど、ファミリーみたいな感じですね。よそから(俳優を)呼んできてもちゃんとそれを機能させる。誰が来ても「ああ、新感線だ」と思わせる。そういうシステムみたいなものが今の劇団☆新感線だと思います。

『修羅天魔~髑髏城の七人 Season極』で天魔王を演じる古田新太さん(左)と極楽太夫を演じる天海祐希さん ©2018『修羅天魔~髑髏城の七人 Season極』/TBS・ヴィレッヂ・劇団☆新感線 撮影:田中亜紀
――それはかなり意識的につくって行かれた?
途中で、こういう形態で長く続けていくんだったらそういうことなんだろうなと思いました。最初は単純に喜んでいたんですよ。「染五郎さんが出てくれる」「おーっ」とか言って盛り上がって。でも、続けていくことによって、いろいろゲストを迎えても「これは確かに劇団だな」とわかってきた。他のプロデュース公演で演出をするときと明らかに違いますから。不思議だなあと思います。劇団は劇団だと。
――ところで私、去年の暮れぐらいにいのうえさんが映画館にいらっしゃるところを拝見したんです。『密偵』、ご覧になりましたよね。
見ました見ました。
――朝いちばんの回に。
朝いちでないと行けないです。稽古に行く前に行くので。
――ソン・ガンホを見たかった?
ソン・ガンホが大好きで。
――ちょっと古田さんに似ているなと思って。
ソン・ガンホは素晴らしいですね。韓国の宝だと思います。
――お好きな俳優のニュアンスって、ああいう感じですか。
うまいんですよ。芝居がうまい。昔はああいう俳優さんがいっぱいいましたよね。ファン・ジョンミンも素晴らしいです。見るたびに全部の役が違いますもん。ものすごく汚い弁護士をやったかと思うと、弟たちのために全人生を捧げるさわやかな青年をやったりする。
――それぞれ感情移入できるんですよね。
できる。ファン・ジョンミンは素晴らしい。今年の「映画秘宝」の作品アンケートのナンバー1にしましたから。
――演技について、型優先とか心優先とかよく言われるじゃないですか。気持ちを作って演技をするとか、型で動くことによって感情が引き出されるとか。あれはどう思いますか?
すぐれた俳優は両方できると思います。
――なるほど。最近よくご覧になるのは韓国映画ですか。
そうですね。韓国映画が今いちばん面白いと思いますね。
――その面白みはどこにありますか。
やっぱり、俳優が豊かだと思います。それはなぜかというと、国が映画をちゃんとバックアップしているからだと思います。最初に話した演劇の小屋不足問題と同じで、日本は国をあげて映画やエンターテインメントをバックアップしていこうという意識が薄い。だから俳優が育たないし、確保されない。
喫緊の問題は時代劇の存続です。着物が着れる役者がどんどんいなくなっています。昔は撮影所が俳優養成所になっていました。今はNHKだけですよね、大河があったり、時代劇があったりするのは。時代劇はお金がかかるというのでなかなかつくられない。お金にならないとなるとパッと手を引く。そうしたらいくらつくりたくても諦めざるを得ない。つくられないと衰退していくんです。

2017年からロングランされている『髑髏城の七人』は花・鳥・風・月の4つのSeasonと、内容を変えた『修羅天魔~髑髏城の七人 Season極』の5つの作品が制作された。それぞれ主演は小栗旬、阿部サダヲ、松山ケンイチ、福士蒼汰/宮野真守、天海祐希。他にも2.5次元ミュージカルの人気俳優や、ドラマや映画で頭角を現す若手俳優がキャスティングされた。チケットはけして安くはないが連日ソールドアウトで、動員数は55万人に届くとみられる。
――かつてマンガだと揶揄された新感線が今や日本で1、2を争う人気の劇団になっているわけですが、率直に言って「ざまあみろ」みたいな気持ちはありますか。
ないですないです。全然ないです。いまだに「読売演劇大賞には一度も対象作品として書かれない劇団」ですしね(笑)。別の賞の選考委員の方が「新感線はもういいでしょう。もう違うところに行ってるから」と言われたという話は聞きましたけど。
――でもそれはある意味誇りですよね。
演劇関係者が考える「演劇」の範疇に入ってないんだと思います。やっぱり何かひとつの「ジャンル」だと思われているんじゃないでしょうか。宝塚、ジャニーズ、新感線みたいな。だからお客さんも、2.5次元、宝塚、歌舞伎、そして新感線みたいな見方をする人がいっぱいいますよ。
――すごいじゃないですか。
僕がすごいんじゃなくて、ジャニーズを見る人が新感線を見にきたり、新感線を見た人が歌舞伎を見に行ったり、という経路が生まれているんです。新感線を見て舞台を見るようになって、今度は歌舞伎にはまって、みたいな。「歌舞伎大好きです、だけど松潤も好きです」みたいな。
――ああ、いいじゃないですか。ねえ。
いいですよね。フラットに並んでいるのがね。
公演情報
ONWARD presents劇団☆新感線
『修羅天魔~髑髏城の七人 Season極』Produced by TBS
作:中島かずき
演出:いのうえひでのり
出演:天海祐希 / 福士誠治 竜星涼 清水くるみ / 三宅弘城 山本亨 梶原善 / 古田新太 ほか
公演期間:2018年3月17日(土) 〜 5月31日(木)
会場:IHIステージアラウンド東京(豊洲)
ONWARD presents 新感線☆RS
『メタルマクベス』disc1 Produced by TBS
作:宮藤官九郎
演出:いのうえひでのり
音楽:岡崎司
振付&ステージング:川崎悦子
(原作:ウィリアム・シェイクスピア「マクベス」松岡和子翻訳版より)
出演:橋本さとし 濱田めぐみ / 松下優也 山口馬木也 / 猫背椿 粟根まこと 植本純米 / 橋本じゅん / 西岡德馬 ほか
公演期間:2018年7月23日(月)~8月31日(金)
会場:IHIステージアラウンド東京(豊洲)

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