インタビュー記事では、相手の言ったことをそのまま書いてはいけない。
前回のnoteは、「インタビュー記事では、相手が言ってないことも書く」というテーマで書きました。
今回はその続きで、「インタビュー記事では、相手の言ったことをそのまま書いてはいけない」です。
インタビュー記事には、いろいろなパターンがあります。
パッと思いつくのはこの3つ。
どのパターンにも登場するのが、「相手の言った言葉」です。言った言葉を「そう言ったから、そのまま書く」のでは、ライターの仕事としては足りていません。
たとえばインタビューで、偶然入ったレストランがすごく素敵だったという話をしていて、「あんなに素敵なお店、初めて行った」と話してくれたとします。「大好きになってしまって、帰り際に次の予約までしてきた」と。
原稿で、そのまま会話を抜き出して書いても、読者には、何のお店のことなのか、どこがどう魅力的だったのか、さっぱり伝わりません。(たとえが雑だけど)。
この場合は、「あんなに素敵なお店」を具体的な店名にする必要があるでしょうし、「大好きになってしまって」の前には、こんなところや、あんなところがすごく良かったから、「大好きになってしまって、次の予約までした」という流れにしないと、読者には分かってもらえません。
その場で言っていなかったことも、書かないと伝わらないなと判断したら、ライターがいちいち書いて伝える必要があります。書き足すことをしなければ、その場にいなかった読者には何も伝わらないのです。
また、上記のようなパターンとは別でもう1つ「言ったことをそのまま書いてはいけない」場面があります。
それは、インタビュー中に聞いている分には楽しいジョークだったとしても、いざそのまま文字にすると、ものすごく悪意があるように受け取られてしまう言葉もあるということ。
政治家の言葉も、よく一部分だけ切り取られて拡散されていたりしますが、前後に話していたことを知ると、そこまで考えて発言してないだろうなという言葉だったりする。
相手がそう言ったからといってそのまま書くと、インタビューされた人の印象がすごく悪くなってしまう場合があるのです。
そういうときはライターが書き換える、表現を変える、ポジティブに言い直すということをする必要があります。
私は大学の非常勤講師もしており、ある学生が書いたインタビュー記事を添削したときのこと。それは、ある教授に話を聞いたという記事だったのですが、その原稿では、教授の話した言葉がすべて口語で書かれていました。
口語体で書くと、親しみが生まれるかわりに、ちょっと軽い印象にもなります。悪く言うとバカっぽい。口語体で、頭が良い、賢い感じはちょっと出しにくい。
記事では、権威ある教授が、とてもタメになる、いいお話してくれているはずなのですが、学生が書いてくれた記事を読む限り、そんな印象は全くないのです。
そのとき、まずは口語体を文語体に直すということを伝えました。
また、過去に京都ライター塾の受講生が、私にインタビューをして書いてくれた原稿にこんな一文がありました。
「知名度のない地方に住み、ライター活動をしていきたい人に向けて一言メッセージを」というので、私は「地元を好きになれないと、魅力的に紹介できない。だから、地元の魅力に気付く、地元を好きになることが大事」というようなことを言いました。で、実際そのように書いてくれたのですが。
私は添削で下記のように直してみました。
同じようなことを言っていますが、ポジティブに言い換えた方が印象もよくなるような気が私はしています。
あと質問にあった「知名度のない地方に住み」という表現も、暗に地方をディスっていることになるので、質問も変えた方がいいと伝えました。
書き手がたとえば岐阜県に住んでいるとして、自分の住んでいるところは知名度がない地方だと思い、原稿でそのように書く。と、それは岐阜の悪口を言っていることにもなりかねません。
「知名度のない」なんて、わざわざ書かなくても良いのです、「地方に住んでいる人が」だけで十分に通じるのだから(文章ってホント思っていることが全部出てしまう)。
と、話はちょっとそれましたが、インタビュー原稿では、相手が言ったことそのままを書くと危険なこともあるので、誤解を招かないように、印象を悪くすることのないように表現を変える必要があります。それがライターの仕事だと私は考えています。
そういえば誰かが、インタビュー原稿を書くことは、翻訳することと表現していました。
書くというより、読者に伝わるように、「日本語から日本語に翻訳する」という意識で書くくらいが、ちょうどいいんだろうなと私も思います。
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