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ジビエの仕事はどんな形がベストだろうか?

ジビエという特殊な仕事をしている都合上、いろいろなお問い合わせを受けます。もちろん商品についてのご質問が一番多いのですが、まぁまぁの割合でいただくのがジビエ事業そのものについてです。
これからジビエの事業をやってみたい、という方もいらっしゃるでしょうし、単純に興味本位で聞いてこられる方もいらっしゃいます。わたしが地域おこし協力隊OBであることも大きいと思います。一般的な企業さんより地域貢献、地方創生の観点で始めているわたしのような人間の方が聞きやすいというのもあるかもしれません。

ジビエは社会課題として大きく取り上げられていたり、国も支援しているなど地方での仕事のあり方として注目はされているだろうと思っていますし、ジビエに関心を持っていただくことは自分としても大変ありがたいことだなと思います。事業として始めないまでもとりあえずシカにまつわる何かをやってみようという形で動き出す方もいらっしゃるので世の中の関心が高まっていることはとてもいいなと思っています。

一方で、ジビエを採算ベースに乗せる(身もふたもない言い方をするとジビエで稼ぐ)ということは外から見るよりかなり難しいのではないかと思っています。なので商売として興味を持っている方にはいい面と同時に難しい面もしっかりお伝えしています。実際やっている私が難しいと思っている点なので生々しくもあり参考にしていただけてるのではないかなぁと思っています。細かい点はここでは言いませんが、個人勢(個人事業主としてジビエ活動をしようとしている人)には簡単に儲かる仕事ではないということははっきりとお伝えしています。
ふわっとした言い方だと一般の方にはピンとこないと思うので、どういうジビエビジネスの形式があるかかいつまんで説明してみます。

サイドビジネス方式

まず、一番入りやすいのはハンターの免許を取って自分が獲ってきたものだけを売り物として扱うパターンです。食肉処理の許可はもちろん必要なのでそれなりの設備は必要ですが、規模は最小限でOKで初期投資は少なくていいでしょう。他のハンターから受け付けるとジビエにかかりきりになりますが、自分の獲ってきたモノだけでよければ予定の調整がしやすいですし副業としてもやりやすくなります。レストランや食品加工業など本業次第では相乗効果も見込めますしジビエがうまくいかなくても本業が保険になるのもいい点です。
難しいのはこういった営業方式が地域(ハンター仲間)に受け入れられるかどうかです。都会と違って、人は人!自分は自分!みたいな割切りがなく「なぜ我々の鹿(ジビエ)は受け入れてくれないのか」といった異論が出てくる可能性もあります。
またサイドビジネスでなく職業マタギとして一本でやることも不可能ではないと思いますが、その場合数をこなさないといけなくなるので「地域の獲物をあいつばかり獲ってるじゃないか」と後ろ指をさされる可能性が出てきます。まぁ自然界のものは誰のものでもないので変な批判だなぁとは思いますが、だからと言って左から右まで全部かっさらっていくと思われたらよくないよねというのもあるので、こういったやり方はお勧めしません。
これが成立するのはその地域に一人もハンターがいなくてシカやイノシシが暴れ放題になってる場合でしょうかね… ハンターの数は少なくなっていますのでそういう地域もないことはないかなと思います。

地域のジビエ受付所方式

自分で獲ってきたものだけじゃ全然利益が出ないよ!とか本業としてちゃんとやりたいということであれば、地域(市町村単位)のジビエ受付所(解体設備)として地域内のハンターさんから捕獲した獲物を受付けるという方法がいいと思います。今のところ私がやっているのはこの方式になります。
集まる数が個人でやるより多いので在庫確保の面では間違いなくこちらの方が良いです。ただ、当然ですが売り先をしっかり確保しないと在庫をダブつかせることになるので地域内外にしっかり営業していくことが大事です。ECサイトなどを充実させれば一般向けにも販売していくことは可能ですが、まだまだジビエのお肉を買って自分で調理してみようという個人の方は少ないです。いくらジビエブームと言われても売り先として個人のお客様をあてにするのは時期尚早かなという気がします。
また、地域の他のハンターさんの活動が活発な場合は自分が獲りに行く時間が圧倒的に少なくなります。(私がそうです)
趣味と実益を兼ねて… といったイメージだと全然獲りに行く時間がなくて解体と精肉に忙殺されるということも全然あり得ます。
また、他のハンターさんが皆さんベテランでかつジビエに理解があるとは限りません。自分で獲ってきたものは自分で見極めているので品質は安定しますが、他人の獲ってきたものは本当に大丈夫かの目利きが必要ですし、またそれができたにしてもちゃんと根拠をもって品質の悪いものをおことわりできるかという課題も出てくるでしょう。

企業型方式

しっかり従業員も雇って地域の産業としてジビエをやりたいとなると最初から法人(株式会社、合同会社)としてスタートするという選択肢も出てくると思います。ISOやジビエ認証が取得できるような設備で当初から始めることでブランドイメージも確立できるし大口の販売先も確保できるようになるでしょう。ただし、初期投資と人件費が大きくかかるので資金力がないとそもそも起業(スタートアップ)できません。わたしも個人勢に過ぎないので企業勢の皆さんがどうやって運営されてるのか… 気になるところでもあります。
営利企業ではなく、地域の獣害対策事業としてNPOとして運営する、あるいは役場や農協の事業として運営するという手段もあるでしょう。この場合は地域との連携、協調が非常に重要になるのでジビエとしてのノウハウと合わせてコミュニケーション能力や地域での代表の方の立ち位置などが大事になってくると思います。
と同時に、大きい組織を支えるには大きい収益が必要なのでその大部分をジビエという自然に属するものに託していいのかという問題はあります。漁業や農業、酪農業よりもさらに自然の気まぐれに左右されるのがジビエという仕事ですからそこは注意しなければならないでしょう(個人勢でも同じことですが)

ざっくりと3つのパターンでわたしの思うイメージを書いてみましたが参考になったでしょうか。こうしてみるとどの形式でやるかも大事ですが、どれをやるにしても地域の方、ハンター仲間との横のつながりを大事にして自分のやりたいことをしっかり共有していくことが重要だなと改めて思います。おそらく解体や精肉のスキルを磨くことよりも大事なんじゃないかなぁとおもいます。
わたしもまだまだ歴が浅く、また個人での営業のノウハウしかありませんがそれでもよければ時間の許す限りご質問にお答えいたしますので、どうぞお気軽にお問い合わせいただければと思います。
もちろんエゾシカ肉のご注文等商品についてのお問い合わせもお待ちしておりますのでご遠慮なくお尋ねください!

エゾシカのシチュー

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