短編小説|しゃべるピアノ
「先輩は何かしゃべってほしいモノってあります?」
「急にどうしたの」
「私は車ですね。遠出する時とか運転が退屈なんですけど、車が話し相手になってくれたら退屈しないじゃないですか。先輩もそういうのありません?」
「うーん、じゃあ私はしゃべるピアノ」
「ピアノなんて弾くんですか?」
「いや、弾けないけど興味はあって、今更教室に通うのもあれだし、ピアノがしゃべって教えてくれたらなぁとか思ったの」
「さすが先輩、完璧ですね」
「なんで?」
「ここでぬいぐるみとか言われたらドン引きですもん。いい歳こいてあざといし、どんだけ淋しいんだよって哀れに見えます。しゃべるパソコンと仕事したいとか言われても、こいつ社畜かよ、ホントつまんねぇ人間だなぁって思いますね。その点ピアノは完璧です。理由も良い具合にカワイイ」
「それを言うなら、しゃべる車が欲しいあんたもかなり淋しいヤツだよね。ていうか、これなんの会話?」
「さ、そろそろ仕事に戻りましょう!」
#ショートショートnote杯