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1993年に起こった「平成の米騒動」について


1993年、日本は深刻な米不足にあえいでいました。同年の日本の米の生産量は979万3000トンと、前年比74.1%にまで落ち込みした。

「原因は1913年以来、80年ぶりの『大冷夏』でした。」

1993年の米の作況指数は74であり「著しい不良」でした。また1991年の不足(作況指数95)により、在庫量が少なかったことも拍車をかけました。

このことは、1991年6月15日のピナトゥボ火山の大爆発と関係があるとされています。また、偏西風の蛇行エルニーニョ現象※1も要因の1つにあげられています。

なお、エルニーニョ現象※1は日本に冷夏と暖冬をもたらし、ラニーニャ現象※2は日本に夏の猛暑、冬の寒冷をもたらす傾向があります。

※1: エルニーニョ現象は、熱帯太平洋で見られる気候変動現象で、数年に1度、春から冬にかけて発生します。エルニーニョ現象が発生すると、熱帯太平洋の東部で海面水温が平年より高く、西部で海面水温が低くなります。この水温の変化によって、通常は熱帯太平洋の西部で活発な対流活動が東に移動し、インドネシアや南米の北部では平年より雨が少なく暖かくなります。また、熱帯からの大気の変動を通して、日本では冷夏、暖冬となる傾向があります。

※2: ラニーニャ現象は、熱帯太平洋の西部で海面水温が平年より高く、東部で海面水温が低くなります。この水温の変化によって、熱帯太平洋の西部で対流活動がさらに活発になり、インドネシアでは平年より雨が多くなります。また、熱帯からの大気の変動を通して、日本では猛暑、寒冬となる傾向があります。

ピナトゥボ火山の噴出物の総量は10km2。20世紀最大といわれ、噴煙は高度17~26kmの成層圏にまで達しました

1ヵ月後には北緯25度から15度にまで広がったとされています。1992年に弱い冷夏が発生し、1993年には大冷夏となりました。

加えて1993年は、梅雨前線が長期間、日本列島付近に停滞しました。いったん発表された梅雨明け宣言が8月下旬に撤回される事態にも発展しました。

梅雨前線は北側のオホーツク海気団と南側の小笠原気団との間に形成される前線です。

オホーツク海気団が弱まって小笠原気団が張り出すことで梅雨明けとなりますが、1993年は小笠原気団が弱く、またオホーツク海気団が長い間強い勢力を保っていました。

ここから吹き出す冷たい風を「やませ」といいます。北海道・東北地方はやませの影響を強く受けました。

米が不足すると、価格が高騰します。これを回避すべく、外国から米の緊急輸入を進めました。まず1993年11月にタイからうるち米が輸入され、翌年には他国からも米が輸入されました。

内訳は中国から108万トン、タイから77万トン、アメリカ合衆国から55万トン、オーストラリアから19万トンでした。

元々、米を自給していた日本に対して、輸出用の米を品質、量ともに生産していた国などありませんでした。そのため、米の輸入は各国への協力依頼や各国との交渉を伴いました。

輸入によって量的不足は解消されますが、輸入米の多くがインディカ米※であったため、日本人の中には「こんなまずい米が食えるか!」と輸入米に対して文句を言う人もいました。

※ インディカ米は世界で最も多く生産されているメジャーなお米で、世界全体の生産量のおよそ8割を占めます。主な生産地は、インド・バングラデシュ・タイ・ベトナム・マレーシアなどの東南アジアや中国の中南部など、気温の高い地域です。インディカ米は日本ではほとんど生産されておらず、日本国内で手に入るインディカ米は輸入品が基本となります。
インディカ米は細長い形状が特徴で、長粒米とも呼ばれます。日本のお米とは違い、炊くと粘り気がほとんどなくパラパラとした口当たりで、あっさりとした味わいです。

この「平成の米騒動」は翌年には解消されました。1994年はラニーニャ現象が発生し、一転して猛暑となったことで大豊作となったのです。

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それはさておき、1993年のGATTのウルグアイ・ラウンド農業合意によって米市場の部分開放が決まり、日本国内の法体系との整合性を取るためにも、食糧管理制度を見直す必要が出てきました。

こうして制定されたのが1995年の食糧法(主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律)であり、政府の役割は備蓄米の運営、ミニマム・アクセス米の運用に限定されていきます。

政府備蓄米とは適正備蓄水準を100万トン程度に設定して運用しており、10年に一度の不良とされる作況指数92にも対応します。毎年21万トン程度を買い入れ、5年たったら飼料用として売却されます。


参照元: 「DIAMOND online」(2023年6月13日付)、 書籍 著者 宮路秀作氏『経済は統計から学べ!』の一部抜粋

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