「孫子の兵法」/ 戦わずして勝つための戦略
「孫子の兵法」のポイントを解説
孫子の兵法とは、いかに戦わずして勝つかを追求した戦略書である。
ナポレオンを始め、織田信長や豊臣秀吉、徳川家康といった歴史に名を連ねる戦国武将など、世界を代表する数多くの偉人たちが戦いの真髄を学ぶバイブルとして活用してきた。
現代においても孫子の兵法は、故スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツ、孫正義、といった優れた経営者にとって、活動する上の重要な指針となっている。
今回は、孫子の兵法のポイントを解説する。
〈目次〉
1.孫子の兵法の概要
2.孫子の兵法 13編
(1)始計篇(しけい)「無駄な争いは避けるべし」
(2)作戦篇(さくせん)「短期決戦で挑むべし」(3)謀攻篇(ぼうこう)「不戦勝で勝利すべし」(4)軍形篇(ぐんけい)「防御を固めるべし」(5)兵勢篇(へいせい)「開戦直後の勢いを操るべし」
(6)虚実篇(きょじつ)「主導権を握るべし」
(7)軍争篇(ぐんそう)「敵よりも早く辿り着くべし」
(8)九変篇(きゅうへん)「臨機応変に対応すべし」
(9)行軍篇(こうぐん)「実情を把握すべし」
(10)地形篇(ちけい)「地形を考慮すべし」(11)九地篇(きゅうち)「状況を見極めるべし」(12)火攻篇(かこう)「最悪のシナリオを想定すべし」
(13)用間篇(ようかん)「情報には金を惜しむな!」
1.孫子の兵法の概要
孫子の兵法とは、2500年前に戦略の鬼才と呼ばれる法書である。
一言でいうと、「負けないための戦略書」である。
この孫子の兵法には、13篇の兵法が記されている。
内容は、
①戦争の考え方
②戦術の原則
③実戦を有利に展開する方法
④情報活動
が端的に記されている。
孫子の兵法が書かれたのは、多くの国が覇権を求めて争っていた春秋時代である。
敵国の数が多く、長い目線で他国より優位に立つ必要があった。
一国との対決が長引けば、自国が疲弊(国力、財力、体力、精神力など)してしまう。
こうした状況下で自国が生き残る戦略が求められた。
孫子の兵法の特徴として
・戦わずして勝つ
・勝つことより負けないこと
といった部分に焦点が当たっている。
2.孫子の兵法 13編
(1)始計篇(しけい)「無駄な争いは避けるべし」
戦争は慎重に始めるべし。戦いが始まってから努力をすることも大切だが、実は、それよりも重要なのが「勝てる戦を見極める」こと。
勝てる戦いだけに挑む者こそ、心に勝ちを重ねられる人であり、すでに歴史が証明してきた重要なポイントである。
(2)作戦篇(さくせん)「短期決戦で挑むべし」
戦争は、勝つにしろ負けるにしろ、膨大な費用(リソース)を消費する。長引けば長引くほど不利なものである。
だからこそ、短期決戦。始まってしまった戦は、どれだけ素早く終わらせられるかが、鉄則であり王道なのである。
(3)謀攻篇(ぼうこう)「不戦勝で勝利すべし」
最善な勝ち方とは何か。それは、無傷で勝利することだ。勘違いする人が多いが、実は、実際に相手と激しく戦い、血で血を洗う争いの末に掴みとる勝利は望ましい勝利とは言えない。
謀りをもって攻める、つまり力に頼ることなく頭脳をもって勝利を導くことが理想の勝ち方なのだ。
(4)軍形篇(ぐんけい)「防御を固めるべし」
真の戦上手とは、自軍の態勢をパーフェクトに固めて、相手が自らボロを出して崩れるのをじっと待つ者のことを指す。ここで重要なポイントは、不敗の態勢は自ら作れるが、勝機は敵が与えてくれる、ということだ。
よくある敗者の典型的なパターンは、戦いが始まってから勝機を探すこと。真の勝者は、ムリなく自然に勝つことができるため、知略や勇敢さが目立つことはない。
(5)兵勢篇(へいせい)「開戦直後の勢いを操るべし」
真の戦上手とは、「勢い」の重要性を理解している。強い軍隊の兵が皆、超人かと言われるとそうではない。当然、力量の浅い兵も少なからず存在する。
そこで鍵となるのは「勢い」である。臆病な兵を勇気づけ、目に見えて有利な状況で戦をしかける。優れた将軍は個々の兵に期待しすぎることはなく、組織を一丸にして勝利を収める。
(6)虚実篇(きょじつ)「主導権を握るべし」
相手の思いもよらない部分に進撃し、敵の「虚を突く」ことで主導権をものにする。相手の意図していることを探り、その裏をかき、むしろ自軍の思い通りに事を進めるのである。
守りも同じように、自らの戦略が敵に悟られて裏をかかれないよう、手の内を隠すことを徹底する。
(7)軍争篇(ぐんそう)「敵よりも早く辿り着くべし」
「軍争」とは、有利なポジションを先に取るための競争のこと。このとき重要なポイントは、必要な時に必要な場所にいることである。これは実力以上に重要なことである。
有利な場所に布陣して、遠来の敵を待ち、十分な休養を取って、敵の疲れを誘い、腹いっぱい食べて、敵の飢えを待つ。力を掌握するとは、この事を言うのである。
(8)九変篇(きゅうへん)「臨機応変に対応すべし」
前提として、戦況は刻一刻と変化する。そのため、事前に練っていた計画が予想通りに展開しないケースも大いにある。
よって、戦場の変化によく対応する者が戦争を制する。「九変」とは多様な変化を意味し、戦場の変化に対応することについて説いている。
(9)行軍篇(こうぐん)「実情を把握すべし」
軍を進める上で最も大切なことはなにか。それは、小さなきっかけから敵の動きや意図を見抜く観察眼である。
常に視野を確保し、守備に有利な位置を維持しながら動き、危険な所を避ける。相手の態度と環境から、その本音と意図を見抜く観察力が勝敗を分ける1つの大きな要素である。
また、兵はただ多いだけではプラスとは言えない。心酔している上に厳しいルールで管理されることが重要である。
(10)地形篇(ちけい)「地形を考慮すべし」
地形篇のポイントは「私を知り、敵を知り、戦場を知ること」である。歴史上の高名な将たちは皆、戦う前に戦場の地形を調査することを重視した。
戦場の特徴に合う作戦をつくり、危険な戦場と有利な戦場を見極めた上で、絶好のチャンスならば君主が反対しても断固として戦うべきであり、逆に確実に勝てない場合は君主の指示でも戦うべきではない。
功を上げて名誉を求めず、敗北しても責任から逃げないものが真の将軍である。
(11)九地篇(きゅうち)「状況を見極めるべし」
戦場を9つに分類して、その地形に応じて兵の全力を引き出す戦い方をすべきである。その中の1つに「死地」というものがある。
背水の陣という言葉があるように、戦わなければ死ぬしかない絶体絶命の窮地にこそ、兵は120%の力を引き出すのである。このような原理原則を説いているのである。
(12)火攻篇(かこう)「最悪のシナリオを想定すべし」
火攻が当時の唯一の「大量破壊兵器」である。燃やす対象としては、敵の兵、兵糧(食料)、輸送車、倉庫、橋や拠点などの兵站(補給・輸送・管理のための諸施設を総称したもの)の5つが挙げられている。
火攻めは大量破壊兵器であるがゆえに、常に火攻めをされるという最悪のシナリオを考慮し、戦いに挑む必要がある。
(13)用間篇(ようかん)「情報には金を惜しむな!」
戦争を行うには、とてつもなく莫大な費用がかかる。正しい知識や敵情を探るために、スパイへの褒賞を惜しんで情報収集を怠ってしまうのは非常に愚かなことである。
名君や堅将と呼ばれる者たちが戦えば必ず勝つその理由とは。人を使い情報を確実に得ているからである。
スパイには、郷間、内間、反間、死間、生間の5種が存在し、それぞれ使いこなすには相応の知恵と人格を兼ね備える必要がある。
参照元: 「知識の泉」Webサイト
以上