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高校物理のエッセンスについて

文系の方でも、高校の物理のエッセンスを知っておくと、役立つと思います。




高校物理のエッセンスとはどのようなものなのでしょうか。

一言でいうと「ある条件の下での物体の振る舞いのメカニズム」を理解することです。

例えば、物理学の始祖の1人にも数えられるニュートンなどは典型的でしょう。彼は、木から落ちるリンゴをみて万有引力の法則を思いついたと寓話的に語られていますが、このエピソードは物理学のエッセンスを理解する上では大変効果的です。

このエピソードで示されていることは、「りんごが落ちる」という些細な出来事から、物体全体の落ちるという振る舞いのメカニズムを説明する理論をつくりあげたということです。

つまり、ニュートンは具体的な事柄の観察を通じて、普遍的な法則を発見したのです。りんごもぶどうもくりも木から落ちます。それぞれ物体の形は異なりますが、落ちるというのは共通する出来事です。物体の形を考慮に入れなければあらゆる物体は落下します。

では、どのようなメカニズムで物体は落下するのか。具体的な物体については一旦考えないで、あらゆる物体に共通する振る舞い、そしてその振る舞いを生じさせているメカニズムに迫るのが物理学の醍醐味なのです。

さらに、ニュートンの逸話が示しているのが「リンゴが落ちる」という事実-factを観察し、それを踏まえて万有引力の法則を明らかにしたということです。

ニュートンよりも前の時代の学問は、観察よりも論理の方が真理を保証していました。つまり、学問的な正しさは論理的に正しいということだったのです。

そのため、学者たちは真理を明らかにしようとする際は必ず論理的な一貫性を求めたのです。その論理一貫性を保証するのが聖書だったため、学者としては聖書の記述と矛盾する説は主張しづらくもありました。

それに対して、ニュートンらの新たな時代の科学者たちは、聖書に基づく論理よりも観察に基づく経験を重視したのです。


1689年のニュートン(ゴドフリー・ネラー画)


時に科学者たちの説は、教会の主張と真っ向から反発することもあり、弾圧されることもありました。しかし、科学は聖書よりも理にかなった発見を次々にしていき、人々の信頼を獲得していったのです。

このことからもわかるように、物理学の発展は科学の発展そのものでもあったのです。哲学(形而上学-metaphysics)から自然科学(物理学-physics)への転換。

それが17世紀以降の学問の基礎となりました。社会科学も、物理学の実験と観察を重んじる科学の精神を引き継ぎ、現実を観察すること(統計データを分析する/フィールドワークをしてインタビューをするなど)を通じて様々な理論を生み出していきます。

自然科学も社会科学も物理学がもたらした科学の精神をもとに発展していきました。だからこそ、物理学はあらゆる科学の基礎的な学問と言えるのです。



物理学とはどのような学問なのかについては、ある程度イメージできたかと思います。

高校の物理で扱う分野は「力学」「熱力学」「電磁気」「波動」「原子」の5つの分野で構成されています。

一般に古典力学と呼ばれるジャンルに属する分野を学ぶのが高校での物理あるいは物理基礎といえます。

古典力学と対比される、現代物理学というのは「相対性理論」や「量子力学」と呼ばれるジャンルで構成されており、古典物理で想定されている物理的世界観とは異なる世界観を下敷きにしています。

物理学に興味をもった高校生は大学以降、古典力学のみならず「相対性理論」や「量子力学」の世界に足を踏み入れることになります。

以降、高校物理では具体的にどのようなことを学んでいくのか、それぞれ簡単に説明したいと思います。



①力学

力学とは、「物体にどのように力がかかっているか」「物体はどのように運動をするのか」について考える分野です。

万有引力や重力をはじめとして、物理学の基本的な知識かつツールを学んでいきます。

物体が何かしらの運動をする時、その物体にはさまざまな力が働いています。その力を分解し、組み合わせることで物体の運動のエッセンスに近づくことができるのです。

②熱力学

熱力学とは、「熱がどのように生じているのか」について考える分野です。

火は当然のように熱いですが、その熱は一体どこからやってきているのでしょうか。このような疑問に答えるのが熱力学です。

熱力学は、熱の原因は「運動」にあると考えました。かつては熱は熱素という物質によって発生していると考えられていました。

しかし、観察と実験の結果、熱は物質が運動することによって生じているということがわかりました。

火が熱いのは、熱源(蝋など)と酸素を構成する原子が猛スピードで運動するからなのです。


③電磁気学

電磁気学とは、「電気や磁気がどのように生じるのか」「電気や磁気はどのような性質をもつのか」について考える分野です。

冬の時期に、セーターなどを着るとパチッと静電気が発生します。この電気は実は物質がもっている電荷が物質Aから物質Bに移動することによって発生しているのです。

このような電気の性質や電気の性質によく似ている磁気の性質が明らかになったことで、テレビやインターネットという私たちの生活に欠かせない電気機器が発明されていきました。


④流体力学(波動)


流体力学(波動)とは、「ある物質からある物質へ力がどのように伝わっていくのか」について考える分野です。

わたしたちがコミュニケーションをする際に欠かせない声も、実は空気中を波が伝わることによって生じている物理的な現象なのです。

また、この分野では「光の性質」についても学んでいきます。光は、「粒であり、波である」という二つの性質をあわせもった特殊な存在ですが、そのような知識は光ファイバー技術やDVDやBDなどの技術に応用されています。



⑤原子物理学

原子物理学とは、「目には見えないミクロな世界での物質の運動」について考える分野です。

あらゆる物質は、原子をもつとされています。さらにその原子は中性子と電子によって構成されています。

そして、複数の原子が結びついたものを分子といいます。原子や分子は非常に微細な存在のため目で捉えることはできません。

しかし、原子や分子の存在が物質の性質を決定したり、物質の運動の基盤となるのです。

高校の物理や物理基礎の分野では、原子物理学についてはあまり扱いませんが、現代物理学においては最も重要な分野の一つとなっています。


引用先: 「Loohcs高等学院」Webサイト

以上

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