「超ひも理論」の概要について
この宇宙にはまだまだ解明されていない謎があり、相対性理論や量子論だけでは説明できない現象も残っている。
それらの謎を解く究極の理論として期待されているのが「超ひも理論」である。
今回は、「この世界の物質はひもでできていると考えることからさまざまな物理法則を説明する超ひも理論」の概要について解説する。
〈目次〉
1.新たな世界観を提示する「超ひも理論」
2.素粒子の形状について
3.「万物の理論」にもっとも近い理論として
4. 重力と量子論の矛盾の解消へ
5. 超ひも理論の全体像
1.新たな世界観を提示する「超ひも理論」
物質は分子から作られ、分子は原子から構成されている。
その原子を構成するのが陽子や中性子、電子であり、そのもとになるのがクォークだ。
このクォークのような素粒子が、この世界の物質を構成する最小単位と考えられている。
素粒子にもいろいろな種類があり、物質のもとになる「クォーク」や「レプトン」、光子などの力を伝える「ゲージ粒子」、質量を生み出す「ヒッグス粒子」などに分類され、それぞれ異なる特徴を持っている。
2.素粒子の形状について
素粒子は、私たちが普段目にするものとはまったく異なる性質を持っている。
例えば、昔から「光は粒子か、波か」という議論が行われてきた。
いろいろな理論、実験、検証の末、「粒子と波の両方の性質を持っている」ということがわかってきた。
しかし、そこに新たに「実はひもの形をしているかもしれない」という仮説が加わったのである。
量子の世界では、私たちの目に見える世界の常識では説明できないような不思議な現象が起こる。
そのことを説明するのに、単純な形の「粒」よりも、複雑な形状を持てる(情報量を多く持てる)「ひも」のほうが説明がつきやすいと考えられた。
3.「万物の理論」にもっとも近い理論として
自然界には、重力、電磁気力、強い力、弱い力の4つの力が働いている。
重力、電磁気力は、馴染みがあると思う。
ただ、強い力、弱い力は原子のようなミクロな世界で働く力であり、私たちの日常生活で感じることはない。
いずれにしても、この4つの力にこの宇宙は支配されている。
しかし、宇宙が生まれたときは1つの力だけがあり、ビッグバン膨張により宇宙が広がって温度が冷えるにつれ、分離して4つの力となり、現在に至ったと考えられている。
そこで「もともと1つであったということは、4つの力をまとめて説明できる1つの理論があるのではないか」という「万物の理論」の研究が始まった。
その理論にはいくつかの仮説があげられているが、中でも超ひも理論は最有力候補と言われている。
万物の理論の研究として、まず最初に取り組まれたのは「電磁気力と弱い力を統一する」というものだった。
「電弱理論」と呼ばれるその理論は、すでに完成している。
さらに、強い力を含めて3つの力を統一する理論にあたる「大統一理論」は、完成には達していないが、ある程度のところまで研究が進んでいる。
4.重力と量子論の矛盾の解消へ
しかし、4つすべてを統一するという「超大統一理論(「万物の理論」「統一場理論」、シンプルに「統一理論」とも呼ぶ)」の研究には困難をきたした。
そのもっとも大きな壁になっていたのが、重力である。
目に見える世界での重力の法則は「相対性理論」で説明でき、素粒子のようなミクロな世界の法則は「量子論」で説明できたが、この2つの理論を合わせて考えると、矛盾が生じるという問題があった。
ところが、すべての素粒子はひもであると考えると、それがクリアできる可能性が見いだされたのである。
超ひも理論は、いわば相対性理論と量子論をつなぐ理論ともいえる。
5.超ひも理論の全体像
超ひも理論では、素粒子や力はひもから生じるものと考える。
先ほど素粒子にはクォークやレプトン、ゲージ粒子などがあると説明したが、細かく分けると17種類になる(2022年時点)。
これを、ひもの振動、形によって、17種類の素粒子、および4つの力が生じる。
これは弦楽器によく例えられる。ギターやバイオリンなどの弦楽器は、弦というひもの振動で音を鳴らすが、弦の長さや振動で、音の種類や大きさに違いが生まれる。
このように、ひもの形や振動によって、いろいろな素粒子や力が生まれるという理論である。
素粒子や、4つの力すべてを1つの理論で説明できるという点で、超ひも理論は画期的である。
まだまだ研究途上であるが、この超ひも理論が完成したら、まさに革命的なことと言えるだろう。
参照元: 「study LABO」ホームページ
以上