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うま味とは/ 世界が注目する第五の味覚



実は「うま味」は日本で発見されたものです。
うま味の効果に気づいた海外のシェフたちは積極的に料理に取り入れるようになっています。



〈目次〉
1.うま味はおいしさの大切な要素
2.うま味物質について
3.基本味と代表的な食材・味物質
4.うま味はどこにある?
5.うま味の相乗効果
6.うま味ってどんな味?
7.世界の伝統食品とうま味



1.うま味はおいしさの大切な要素
うま味は、甘味、酸味、塩味、苦味に続く5 番目の味です。

これら5つの味はほかの味を混ぜ合わせてもつくることのできない独立した味であり、「基本味」と呼ばれます。

うま味は、主にアミノ酸の一種であるグルタミン酸や、核酸であるイノシン酸とグアニル酸に、ナトリウムやカリウムなどのミネラルが結合した物質の味を総称しています。

うま味は料理のおいしさに深く関わり、健康的な食生活を送るうえでも欠かせない味です。

おいしさとは、風味、食感、匂い、温度、色や形のような見た目などさまざまな要素と、食べる人の体調、環境や食文化、経験などから決まる総合的かつ主観的な評価です。

甘味、酸味、塩味、苦味、そしてうま味の5つの基本味は、おいしさを構成するもっとも重要な要素です。

2.うま味物質について
学術的には、うま味はグルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸にナトリウムやカリウムなどのイオンが結合した塩類(グルタミン酸ナトリウムなど)の味として定義されていますが、ここでは学術的な正誤に関わる部分を除き、理解しやすさを優先し、うま味とはグルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸の味とします。

アスパラギン酸(アミノ酸)や、アデニル酸(核酸)の塩類もうま味物質の一種です。

グルタミン酸に比べ、弱いうま味をもっています。コハク酸(有機酸)も貝の特徴的な味を構成している物質であり、うま味物質とする学説もあります。


3.基本味と代表的な食材・味物質

人間にとって5つの基本味を感じることは、危険な食物を避け、安全に栄養素を摂取するために必要な、生命維持のための欠かせない感覚です。

未熟な果物や腐敗物のもつ有機酸による酸味や、アルカロイドなどの苦味を感知することで危険を避けることができます。

逆に、エネルギーのもととなる糖分の甘味や、体液のバランス維持に必要なミネラルの塩味を感じれば、積極的に取り入れるでしょう。

うま味はタンパク質を摂取したことをからだに知らせるシグナルの役割を果たしています。

うま味を感じることによって唾液や消化液が分泌され、タンパク質の消化をスムーズに進めることができるのです。


4.うま味はどこにある?

主なうま味物質であるグルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸はどのような食材・食品に多く含まれているのでしょうか?

グルタミン酸は肉や魚、野菜など、さまざまな食材に含まれています。

イノシン酸は肉や魚など動物性の食材に多く含まれており、グアニル酸は干し椎茸などの乾燥したきのこに多く含まれています。

うま味物質は、熟成や発酵によって増えることもわかっています。醤油のような穀類を原料とした発酵調味料、タイのナンプラーやベトナムのニョクマムといった魚醤(ぎょしょう)、チーズなど、世界に見られる伝統的な食品の多くは、うま味が豊富に含まれているのです。


5.うま味の相乗効果
代表的なうま味物質はアミノ酸系のグルタミン酸と核酸系のイノシン酸やグアニル酸ですが、これらはそれぞれ単独よりも、グルタミン酸と核酸系のうま味物質を組み合わせることで、うま味が飛躍的に強く感じられることが科学的に証明されています。

これを「うま味の相乗効果」といいます。 しかし、このことが証明されるはるか昔より、うま味の相乗効果は利用されてきました。

グルタミン酸を多く含む野菜とイノシン酸を多く含む肉や魚を組み合わせたスープストックや中国料理の湯(タン)、グルタミン酸の多い昆布とイノシン酸の多いかつお節からとった合わせだしなど、昔から世界の各地域でさまざまな料理に活用されています。

これはうま味の相乗効果を経験的に知り、料理に応用してきた結果といえるでしょう。

グルタミン酸とイノシン酸の相乗効果によるうま味の強さは、配合比によって変化します。

全体のうま味物質の濃度が一定になるようにし、グルタミン酸とイノシン酸の配合比を少しずつ変化させた水溶液を用いて官能評価を実施したところ、グルタミン酸とイノシン酸がちょうど1:1のときにもっともうま味が強くなることがわかりました。

これは単独で味わうときに比べ、およそ7〜8倍とされています。 ある老舗料亭の一番だしを分析してみたところ、グルタミン酸とイノシン酸の配合比はちょうど1:1でした。長年だしの味を追求しつづけるなか、もっともうま味が強くなる配合にたどり着いたのでしょう。


6.うま味ってどんな味?
デリケートな味。淡く微妙な味。舌に広がるような、舌全体が包み込まれるような味。長く余韻の残る、持続性のある味。唾液が出て口のなかが潤うような感覚です。


7.世界の伝統食品とうま味
世界には伝統的な調味料や食品が数多くあります。

それらの多くは長期保存を目的に、発酵や乾燥、塩蔵のような加工がほどこされていますが、その過程でグルタミン酸などのうま味物質が増え、料理に豊かなうま味を与えています。

古代ローマ帝国では、ワインやオリーブオイルと同じように貴重な食材として「ガルム」や「リクアメン」と呼ばれる魚醤が各地で作られていました。

その製造方法は東南アジアで作られている魚醤と同じで、サバやイワシなどの魚を塩漬け、発酵させたものです。

特に発酵したものを最初にろ過した琥珀色の一番搾り「ガルム」は大変高価なものとして珍重されていました。

有名な古代ローマの「アピシウスの料理書」には沢山のレシピが紹介されていますが、塩や砂糖がなかった当時のレシピにはガルムと蜂蜜が頻繁に使われています。

ガルムはうま味と塩味を加える調味料として愛用されていたのでしょう。

ローマ帝国の滅亡とともにガルムは姿を消してしまいますが、アンチョビーペーストやソースなどは、その名残であるといわれています。

南米原産のトマトはコロンブスの新大陸発見によってヨーロッパに持ち込まれました。

最初は薬用として使われていたようですが、イタリアで品種改良も行われ食用として使われるようになり、いろいろな料理のベースとしても使われるようになりました。

今ではイタリア料理にはトマトは欠かせない食材ですが、その歴史は意外と新しいものなのです。

イギリスではトマトを始め沢山の野菜を原料にウスターソースが作られ、やがてトマトソースやペーストとともにアメリカ大陸に渡り、ケチャップやチリソースなど、様々な加工食品が誕生します。

今ではトマトは世界で最も生産量の多い野菜の一つで、トマトのうま味は世界各地で愛用されています。

世界各地では様々な発酵調味料が使われています。

タイのナンプラー、ベトナムのニョクマムのような魚醤類や、味噌や醤油に代表される穀醤油類はアジアの国々で古くから愛用されてきています。

発酵調味料は魚や豆類、穀物などの原料を塩漬け、発酵させたものですが、発酵の過程で原料中のタンパク質がアミノ酸に分解されることで、うま味物質であるグルタミン酸を豊富に含んだ調味料ができあがります。

特にアジアの水田稲作地帯ではこれらの発酵調味料はうま味と塩味を加える調味料として毎日の食事に欠かすことはできません。

特に味付けをしていない白いご飯とともに野菜や魚介類を中心としたおかずをとるのもこれらの国の特徴です。

米食文化と「うま味」は密接なかかわりを持っているのです。




参照先:「Google Art & Culture」Webサイト

以上

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