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棟方志功とその版画作品について


日本を有名な版画家「棟方志功」の板画作品には心惹かれるものが多く、見る者を日本の豊かな文化と自然の美しさへといざないます。

今回は、棟方志功の代表作とその背後にある物語、棟方志の芸術が今日に伝える普遍的なメッセージについて解説したいと思います。


〈目次〉
1.棟方志功の軌跡
2.棟方志功の板画へ対する情熱
3.棟方志功の版画代表作5選
① 「二菩薩釈迦十大弟子」
② 「湧然(ゆうぜん)する女者達々」
③ 「東海道棟方板画」
④ 「大世界の柵」
⑤ 「禰舞多運行連々絵巻」


1.棟方志功の軌跡

棟方志功は1903年、青森県で生まれました。彼の人生は、自然美と人工美への深い魅了によって形作られました。

特に、川上澄生の版画「初夏の風」に触れたことで、版画家への道を歩むことを決意します。

家族が営む鍛冶屋を手伝いながらも、祭りの灯篭や凧の絵に心を奪われ、絵画への情熱を深めていきました。

そして、中学校の美術教師から洋画について学び、ゴッホに感銘を受けた棟方は「日本のゴッホになる」ことを目標に掲げます。

棟方志功の生い立ちと版画への情熱は、後に棟方が世界的に知られる「板画家」となる礎を築くことになったのです。


2.棟方志功の板画へ対する情熱

棟方志功「凡聖一如の柵」

棟方志功は、伝統的な版画の枠を超えて独自の表現を追求しました。

棟方志功は1942年以降、自身の作品を「版画」ではなく「板画」と称することで、木版画の特性を最大限に活かした技法と美学を確立しました。

棟方志向は木の板の質感、木目の美しさ、墨の濃淡を生かし、日本の伝統と自然の魅力を表現することに情熱を注ぎました。

板画という言葉は、棟方の作品が持つ独自性と、彼が追求した芸術の形式への深い敬意を反映しています。

棟方志功の板画は画像の複製ではなく、彫刻と絵画の境界を曖昧にする独特のアートワークとなりました。

棟方志功のこの革新的なアプローチは、後の芸術家たちに大きな影響を与え、棟方の板画は日本をはじめとした世界中で高く評価されています。


3.棟方志功の版画代表作5選

① 「二菩薩釈迦十大弟子」

「二菩薩釈迦十大弟子」


この作品は、仏教の重要な人物である釈迦の弟子10名、さらには「普賢延命菩薩」と「文殊止利菩薩」の二菩薩を描いています。

棟方志功はここで、仏教の教えとその精神的な価値を視覚的に表現しました。

棟方の技法では、木板の自然な質感と墨の濃淡が、この宗教画に深みと独特の雰囲気を与えています。

棟方は伝統的な仏教美術の表現形式を継承しつつ、自らの解釈を加えることで、新たな芸術的価値を創造しました。

この作品は、棟方が仏教の教義に対して持っていた深い敬意と、その教えを通じて伝えたかった普遍的なメッセージを反映しています。


② 「湧然(ゆうぜん)する女者達々」


「湧然する女者達々」は、様々な表情と姿勢をした女性たちを描いた作品です。

棟方はこの作品を通じて、女性の内面の美しさと強さを表現しました。

女性たちの様々な感情や人生の瞬間を捉えることで、観る者に女性の内なる世界への理解を深めさせてくれる逸品です。

ここで棟方の板画技法がもたらす線の力強さと繊細さは、女性たちの多様な性格を際立たせ、彼女たちの物語を見事に表現しています。

この作品は、日本女性の生活や文化に対する棟方の深い洞察と尊敬の念を示しています。


③ 「東海道棟方板画」

「東海道棟方板画」


「東海道棟方板画」は、日本の東海道五十三次をモチーフにした六十二柵の板画で構成される作品です。

このシリーズは、日本の風土や文化、人々の暮らしを捉えたものであり、棟方志功の旅と探求の精神を反映しています。

棟方は各地を訪れ、その地域特有の景色や人々の表情、生活の断片を板画に昇華させました。

このシリーズは、棟方が見た日本の美しさと、時間とともに変化する風景の記録としての価値を持っています。

また、棟方の作品を通じて日本の伝統と現代性が融合した新たな美術表現が生まれました。


④ 「大世界の柵」

「大世界の柵」


「大世界の柵」は、棟方志功の代表作の一つで、棟方の哲学と芸術観が凝縮された世界最大級サイズの版画作品です。

この大作は、「大世界の柵・坤~人類より神々へ~」「大世界の柵・乾~神々より人類へ〜」と分かれており、神が暮らす天上の世界と人間が暮らす地上の世界が描かれています。

棟方の独特な板画技法によって生み出された力強い線と濃淡のコントラストは、作品に動きと生命力を与えています。

この作品は、棟方が追求した芸術を通じての人間と自然の共存の理想を体現しています。


⑤ 「禰舞多運行連々絵巻」

「禰舞多運行連々絵巻」

「禰舞多運行連々絵巻(ねぶたうんこうれんれんえまき)」は、青森県の「青森ねぶた祭」を描いた作品です。 

この作品では、伝統的な日本の祭りや儀式が棟方の視点を通して新たに描かれています。

棟方の技法と感性が融合したこの作品は、日本の伝統文化への深い敬愛と、それを継承し発展させようとする棟方の意志を示しています。


参照元: 「日晃堂」Webサイト

以上

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