基本編/ JA(農協共同組合)について
〈目次〉
1. JAの歴史
■設立されたきっかけ
2.協同組合と株式会社の違い
3.組合員と職員
4.JAグループについて
(1)代表機能「JA全中」
(2)経済事業「JA全農」
①販売事業
②購買事業
(3)「Jバンク」「JA共済」「厚生事業」
(4)その他(旅行、新聞・出版、相続・事業承継支援対策など)
1.JAの歴史
JAは、『農家の営農※と生活を守り高め、よりよい社会を築くことを目的に組織された協同組合』です。
※営農: 農業を営むこと
JA(ジェイエー)は、「農業協同組合」の英語表記「Japan Agricultural Cooperatives」の頭文字をとってつけられたニックネームです。
「農協」という通称はよく使われてます。
■設立されたきっかけ
日本における農業協同組合は、江戸時代頃にできたと言われています。
明治以後には近代化され、「産業組合」や「帝国農会」といった協同組合が組織されます。
太平洋戦争時には、農業生産物を一元的に集約する目的で「農業会」という統制団体に改組されました。
そして、太平洋戦争後の1948年、既存の「農業会」を改組する形で今の農協(JA)が生まれました。
もともと、GHQは戦後の農地改革の一環として、欧米型の農業協同組合(行政から独立し、自主的に組織できる)を作ろうとしていたそうですが、当時は深刻な食糧難だったため、行政が食料を統制・管理する形が採用されました。
1992年4月からは、「農協マーク」に代わり、「JA」の名称や「JAマーク」を使い始めました(図1)。『相互扶助の精神のもとに農家の営農と生活を守り高め、よりよい社会を築くことを目的に組織された協同組合』として、今日のJAはあります。
2.協同組合と株式会社の違い
協同組合とはどんな組織なのでしょう?それを理解するために株式会社と比較してみます(図2)。
株式会社と協同組合の一番の違いは、利潤の追求ではなく、協同組合はあくまで組合員の生活を守り向上させることが目的です。
そのため、協同組合は組合員1人につき1票を持てます。つまり、生産力や資本力に関係なく組合員は平等に組合に対して権利を持てるわけです。
一方、株式会社は、利潤を追求し、その利潤を株主に配当し、株をより多く持っている人が影響力を持つことができます。
3.組合員と職員
JAの組合員には農家以外の方でもなることができます。
「正組合員」は、農業を仕事にしている団体(農家や農業法人)です。耕作面積や農業従事日数などから正組合員になるための具体的な基準を定めています。
一方、農業以外の仕事をしている人が、地元のJAに出資金を払い込み、その他の手続きをすることで「准組合員」として加入することができます。
では、「正組合員」と「准組合員」の違いはなんでしょうか?
「正組合員」は総会での議決権や役員の選挙権などJAの運営に関与することができますが、「准組合員」はできません。
この准組合員制度は、他の生活協同組合にはなく、JA独自のものです。
また、制約はありますが、正組合員や准組合員だけでなく、一般の人もJAのサービスを一部で利用することができます。
加えて、協同組合には、組合員の他に職員がいます。JAでは、総会で事業方針を決め、さらに代表者(組合長)を選び、その指示のもと、組合員の業務代行人として職員が組合の業務を行います。
4.JAグループについて
JAは、営農指導はもちろんのこと、生産資材・生活資材の共同購入や農畜産物の共同販売などの農業関連の業務を担います。
あるいは、貯金の受け入れ、農業生産資金や生活資金の貸し付け、農業生産や生活に必要な共同利用施設の設置、あるいは万一の場合に備える共済等、広範囲の事業で組合員を支援しています。
組合員のために行っている共同事業が非常に多く、組合員も多いため、効率的かつパワフルな事業展開をはかるため、多くの地域JAを束ねる都道府県段階のJA組織、それらをさらに束ねる全国段階のJA組織が作られました(図3)。
(1)代表機能「JA全中」
「JA組合員+全国のJA組織」の共通意思の結集を図るのが、「JA全中(一般社団法人 全国農業協同組合中央会)」です。
組織・事業の枠を越えて連帯するJAグループの代表として運営されています。都道府県段階でまとめているのが「JA都道府県中央会」でさらにその全国まとめ役が「JA全中」ということです。
JA全中は、1954年に農業協同組合法上の特別認可法人として設立され、65年にわたって活動してきましたが、同法の改正を受け、2019年に組織形態を一般社団法人に変更しました。
総合調整や経営相談を担い、地域・事業の枠を越えてJAグループの総合力を発揮します。一般企業で言うホールディングスのようなイメージです。
また、組合員に向けて、農業への取り組み方針を示したり、国の施策などの情報提供を行ったりしています。政策提言をまとめて農水省などに提出し、自分たちの意向を政策に反映させる仕事もしています。
(2)経済事業「JA全農」
経済事業を担うのはJA全農(全国農業協同組合連合会)です。
1948年、全国農業会の改組に伴い、全販連(全国販売農業協同組合連合会)、全購連(全国購買農業協同組合連合会)を設立。
1972年に全販連と全購連が合併し、全農(全国農業協同組合連合会)が設立しました。
JA全農の経済事業は、主に「販売事業」と「購買事業」です。
①販売事業
組合員が生産した農畜産物をJAが集荷して販売することを「販売事業」と呼んでいます。
その規模は、例えば青果物は、生産者の農業産出額のうち半分以上がJAに出荷され、全農にはその80%以上が経由して、卸売会社などを通じて消費者に渡ります。
全農は日本の農作物流通のキーマンであることがわかります(図4)。
農産物の流通(例:青果物流通の概要)
※「生産者のJA利用率」および「JAの連合会利用率」はH25年度の数値。
また、JAの販売事業は「共同販売」で行うため、「共販」とも呼ばれます。
農畜産物の数量や品質を均一にし、共同で販売することで、市場で良い条件での販売を狙っています(図5)。
一方で、価格はJAが決めるので、農家(生産者)が自分で作った農産物をいくらで売るのかを自由に価格設定できないのも事実です。
その中で、全農は改革も進めています。その一環に、『全農営業開発部』や『全農グループMD部会』(事務局:営業開発部MD企画課)などのバリューチェーンの構築を目指す部署の立ち上げがあります。
外食企業や食品メーカーなどの企業と生産者を繋ぎ、細かいニーズに合わせた商品開発するなど、これまでのサプライチェーンの枠を超えた新しい価値を作ろうとしています。
②購買事業
購買事業は、大きく2つに分かれます。
ひとつは、肥料、農薬、飼料、農機具等、組合員の営農活動に必要な材料の供給を行う生産資材購買です。
もうひとつは、食品、日用雑貨用品、耐久消費財等、組合員の生活に必要な物資を供給する生活資材購買です。
スケールメリットを生かしてメーカーと交渉し、低価格・安全・良質の資材を組合員に提供しています(図6)。
2015年度の購買事業の取扱高は、JAで2兆6,079億円、JA経済連で8,962億円、JA全農で2兆2,226億円となっており、大きなお金が動いています(※1)。
↑共同購入のしくみ
JA全農の都道府県版というべき組合として、「経済農業協同組合連合会(JA経済連)」と「県JA」があります。
これまで32都府県にあったJA経済連は、統合してJA全農の都府県本部となりました。
現在では、8道県(北海道(ホクレン)、静岡、愛知、福井、和歌山、熊本、宮崎、鹿児島)にJA経済連があります。
また、地域のJA同士の合併が進み、県域で経済事業を展開する県JAがあるのは、奈良、島根、山口、香川、高知、佐賀、沖縄の7県です(2019年7月現在)(図7)。
※農協(JA、県JA)の数は2019年7月現在
(3)「Jバンク」「JA共済」「厚生事業」
「JAバンク」は、JA・JA信連・農林中央金庫の会員で構成され、地域ごとのニーズに応えながら、全国に⺠間最大級の店舗網を展開し、さまざまな金融サービスを提供しています。その規模はとてつもなく大きいです。例えば、貯金残高を日本の3大メガバンクと比較すると、
・三菱UFJ銀行 1,53兆円(※2)
・みずほ銀行 1,19兆円(※3)
・三井住友銀行 1,16兆円(※4)
・JAバンク 1,03兆円(※5)
(2019年3月末)
※2 出典:三菱UFJファイナンシャルグループ財務情報
※3 出典:みずほファイナンシャルグループ決算時系列データ
※4 出典:三井住友ファイナンシャルグループ決算資料
※5 出典:JAグループwebサイト(https://www.jabank.org/about/jyokyo/)
となっており、いかにJAバンクが巨大かをわかってもらえるのではないでしょうか。
JAは農家のための組織ですから、JAバンクでも農家が優遇されますが、制約はあるものの一般の人も口座を作ることができます。
「JA共済」は、相互扶助を事業理念として、組合員・利用者と共済契約を締結することによって、「ひと・いえ・くるまの総合保障」(生命と損害の両分野の保障)を提供しています。
また、JAグループは医療の確保も目指し、健康増進活動の促進、医療の提供、高齢化の対応等、地域におけるニーズに対応しながら積極的に取り組んでいます。
JAグループはこれらの事業を「厚生事業」と呼んでいます。
(4)その他(旅行、新聞・出版、相続・事業承継支援対策など)
JAグループは他にも相続・事業承継支援対策、旅行事業、新聞・出版事業など、組合員をあらゆる角度から支援しています。また、企業や行政、海外とのネットワークも積極的に構築しています。
参照元: 「農業ジョブ」Webサイト
以上