民法と刑法について
日本の法律の基礎として位置づけられるのは「憲法・民法・刑法・商法・民事訴訟法・刑事訴訟法」のいわゆる六法である。
なかでも「憲法」、「民法」、「刑法」の3つは、日常生活において関係が深いため、重要な法律と言われている。
「憲法」の概要はある程度は理解しているイメージを持っているが、「民法」と「刑法」とは何か?と自問してみたら、うまく説明できないことに気づいた。
そこで、今回、重要な「民法」と「刑法」の基礎的な知識、そしてそれぞれのトラブルの具体例について調べてみることにした。
※以降、調べた内容について説明する。
〈目次〉
1.「民法」と「刑法」の基礎的な知識
2. 民法について
(1)民法には罰則はないが損害賠償が請求できる
(2)民法に関するトラブルの具体例
(3)損害賠償が請求できる条件
3.刑法について
(1)刑法による罰則では全ての被害を救済できない
(2)刑法に関するトラブルの具体例
4.所感
1.「民法」と「刑法」の基礎知識
・「民法」とは、「私人と私人」の間の権利義務関係を規律する法律のことである。
・一方で、「刑法」とは、犯罪行為をした場合に「国」がどのような処罰を科すかを定めた法律である。
・例えば、交通事故を起こしてしまったときには、相手の車の修理代や治療費の支払いを行う義務が生じる。これは、民法による不法行為にもとづく損害賠償に該当するのだが、加害者と被害者の当事者間で解決しなければならない「民事」の問題であり警察などの行政機関が介入することはなきない。
・他方で、交通事故で相手がケガをしたときには、「過失運転致死傷罪」に該当すれば、懲役や罰金などの処罰が課せられる。これは、刑法によって国が加害者に対して課す罰則となる。つま警察や検察などの行政機関が対処することになる。
・また、加害者に罰金が課せられたときであっても、このお金は国が加害者に課す罰則ですので被害者が受け取ることはできない。
・このように、同じ一つのトラブルであっても、刑事の側面と民事の側面の両方を合わせ持つことは少なくない。
2.民法について
・民法とは、「私人と私人」の間の権利義務関係を規律する法律であり、社会で生きていくためには全ての人が民法を守る義務がある。
・売買契約をしたときには、「売主は商品を買主に渡さなければならない」、「買主は代金を売主に支払わなければならない」ことは当然であるが、これも民法で定められている。
・結婚した夫婦間には、夫婦は互いに同居する義務、協力する義務、扶助する義務を負う。離婚、養子縁組、戸籍、相続などについても民法で定めている。離婚時の財産分与、親権なども民法で定められている。
・その他にも、他人の財産や身体に損害を与えたときには、加害者はそれを被害者に賠償しなければならない損害賠償も民法によるものである。
ここで言う「私人と私人」とは、必ずしも個人ではなく法人や行政機関なども対象となる。
(1)民法には罰則はないが損害賠償が請求できる
・民法に違反をしてしまったとしても、民法には罰則が定められていませんので刑務所に入ったり国に罰金を払う必要はない。また、警察権が民事紛争に介入するべきではないとする原則があるので、警察が民事問題に介入することはなく、逮捕されることもない。
・これだけの説明だと、民法に反する行為をしても実害がないように思われるが、民法に反し不当に損害を与えたときには損害賠償を請求される場合がある。被害者の立場から言えば、民法に反して不当な損害を受けたときには、加害者に対して損害賠償の請求が認められる場合がある。
・損害賠償は、車を壊されたときの修理代のような物的な損害に対して認められるだけではなく、精神的に受けた苦痛に対しても慰謝料として請求が認められる場合もある。
・民法に反する不法行為には罰則がないので、被害者にとっては納得がいかないことも少なくない。そのため、不貞行為などの慰謝料請求は、金銭を得る経済的な目的ではなく相手へ制裁を与えたい目的で慰謝料を請求する方も少なくない。
(2)民法に関するトラブルの具体例
・民法に反する行為には様々なものがあり全てのケースをあげることは現実的ではない。
そのため、まず、探偵に依頼される代表的な内容
を例としてあげる。
(例)
・浮気や不倫などの不貞行為
・親権や財産分与などの離婚に関する問題
・養育費の未払い
・貸したお金を返してくれないなどの金銭問題
・無視や悪口などの虐め
・パワハラやセクハラなどの言葉によるハラス
メント
・プライバシーを侵害される行為
・不正解雇や給料の未払い
・交通事故などの損害賠償
・無断キャンセルや料金の未払いなど
・過失で物品を壊されたり傷つけられた
・このような問題は、民法に反する不法行為に該当する可能性があるので、損害賠償の請求が認められる場合がある。
ただし、全ての場合で損害賠償が認められる訳ではなく、様々な条件を総合的に考慮して結論が出される。
・例えば、配偶者が不貞行為を行ったとしても、婚姻関係が破綻した後に行われた不貞行為であれば慰謝料は認められない。また、浮気相手が配偶者のことを既婚者と知らなければ浮気相手からの慰謝料は認められない。
損害賠償が認められるかどうかは複雑であり、弁護士に相談することが望ましい。
(3)損害賠償が請求できる条件
・損害賠償とは、「故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害した場合、損害を与えた者は賠償の責任を負う」と、民法第709条で定められている。
・わかりやすく言うと、所有物を壊されたりケガを負わされたときには、その損害を金銭として請求することが認められている。また、精神的な苦痛を与えられたときにも、その苦痛を金銭として請求することが認められている。
・例えば、交通事故などで車を破損させらてたときはもちろん、キャッチボールなどで車や家屋が傷つけられたときでも、損害賠償の請求が認められる可能性が高いと思われる。また、不貞行為、パワハラ、虐めなどで精神的苦痛が認められるときには、物的な損害がないときであっても精神的苦痛があれば慰謝料として損害賠償が認められる可能性がある。
・一方で、加害者に違法性が無いときや故意や過失がないときには、損害賠償の請求が認められない。例えば、不貞を理由に浮気相手に慰謝料を請求したい場合であっても、浮気相手が配偶者のことを既婚者と気付けない関係であるときには、故意や過失が無いと考えられ慰謝料の請求ができなくなる。
・また、野球の試合中に打球が当たったりボクシングの試合中に負ったケガなどは、スポーツなどの正当行為のなかで生じた損害であり加害者に過失がないと判断されることが一般的で、損害賠償は原則として認められないと考えられている。
3.刑法について
・刑法とは、犯罪行為をした場合に「国」がどのような処罰を科すかを定めた法律であり、被害者に代わって国家権力が加害者の責任を追及する為のものである。
・日本の法律では、刑事事件の被害者が加害者である被疑者に対して制裁を加えることは禁じられている。また、その刑事裁判を提訴できるのは検察官のみとなっているので、被害者が自ら刑事責任を求めて裁判を提訴することはできない。
・そのため、被害者が加害者に対して刑事責任を求めたいときには、警察などに被害届や告訴状を提出し捜査を委ねるしか方法がない。
(1)刑法による罰則では全ての被害を救済できない
・刑法に反する犯罪行為があったとき、国は加害者に対して罰金や懲役などの罰則を課すことはできるが、被害者の経済的損失や精神的苦痛に対して対応をしてくれる訳ではない。
つまり、刑法は加害者の刑事責任を追及するものであり、被害者を経済的に救済するものでは無いと言うことである。
・ただし、刑事事件で有罪が確定すれば事件そのものの事実が証明されたことを意味するので、民事訴訟でも有利な証拠の一つとしての意味を持つメリットがあるとも言える。
・被害額が少ない窃盗や軽いケガで済んだ傷害などであれば、加害者へ罰則が科されることで納得ができる方もいるかもしれませんが、金銭を回収したり治療費を請求したいと考える方も多い。
・このようなときには、警察や検察などが行う刑事責任の追求とは別に、民法による損害賠償請求を行うことで対処する必要がある。この場合、原因となったトラブルは刑事事件ではありますが、損害賠償は民事の問題となりますので被害者自身で対処する必要がある。
(2)刑法に関するトラブルの具体例
・刑法に反する違法行為は多くの人々が既に知っているものが多いと思われる。殺人、強盗、窃盗、傷害、強姦などは刑法に定める代表的な犯罪行為と言える。
・刑法には、その他にも様々なものがあるが、民法と同様に、全てのセースをあげることは現実的ではない。そのため、刑法についても探偵に依頼される代表的な種類を例としてあげる。
(例)
・金銭を騙し取られたときには詐欺罪に該当する可能性がある。
・虐めやDVは暴行、傷害、脅迫などに該当する可能性がある。
・脅しや暴行を受けて金銭を要求されたときは恐喝に該当する可能性がある。
・合意が無いわいせつ行為は強制わいせつや準強制わいせつに該当する可能性がある。
・故意にものを壊されたときには器物損壊に該当する可能性がある。
・会社内での金銭問題は横領や背任に該当する可能性がある。
・無断で敷地内に立ち入ったときには住居侵入に該当する可能性がある。
・つきまといや一方的な連絡はストーカー規制法に該当する可能性がある
・以上のような問題は、刑法に反する犯罪行為とされる可能性があるので、刑事責任(処罰)を追求できる可能性がある。
・ただし、全ての場合で刑事事件として認められる訳ではなく、様々な条件を総合的に考慮して結論が出される。
・例えば、交際相手や好意がある異性に嫌われたく無いと言う思いから金銭を渡していたときには、交際相手はあなたから金銭を騙し取っているとは言えないので詐欺罪には該当しない可能性が高いと考えられる。
・一方で、結婚をする気が無いのに結婚をすることを約束してお金を受け取っていたり、親の病気などと嘘の理由でお金を受け取っていたときには、あなたを騙して金銭を得ていますので詐欺罪に該当する可能性がある。ただし、相手に返済の意思があるけれど返済ができていないときには、詐欺罪には該当しないと考えられるので立証が難しい問題がある。
・刑事事件として認められるかどうかの判断は難しい。そのため、警察や弁護士などに相談することが望ましい。
4.所感
・「民法」と「刑法」とについて調べてみたが、概要レベルは大まかにつかめたものの、詳細まで理解するのは難しいことを実感した。日常生活において何らかのトラブルに巻き込まれることは少なくない、その対策として、基本的な知識を得ることができたことは収穫だと思う。ただし、難しいトラブルの場合には、専門家に相談したほうがよいことを実感した。