三つの石原吉郎像:細見和之、野村喜和夫、三宅勇介(その2)
細見和之の『石原吉郎――シベリア抑留詩人の生と詩』と野村喜和夫の『証言と抒情――詩人石原吉郎と私たち』について、前項ではその概観とアプローチを比較したが、ここではもう少し踏み込んで、具体的な詩作品に即しながら細見と野村の読み方を比べてみよう。いわば比較対照試験だが、被験者には「位置」という作品を選びたい。石原吉郎の代表作のひとつであり、第一詩集『サンチョ・パンサの帰郷』の巻頭に置かれている。
位置
しずかな肩には
声だけがならぶのではない
声よりも近く
敵がならぶの