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まだまだ語りたい!トワイライト・ウォリアーズ~九龍城塞之圓城 Twilight of the Warriors Walled In

ついに日本でも公開となった「九龍城塞之圓城 Twilight of the Warriors : Walled In」改め「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」。
香港、映画祭に続いて3度目となる鑑賞となった今回。この映画は見るたびに新しい発見があるので記録したいと思う。

前回の記事はこちら。

初回は香港にて。一番印象に残ったのは九龍城塞のセットのリアルさと出演俳優の豪華さ、そして王九(ワンガウ)のキャラの濃さにノックアウトされた。英語字幕で観たので内容の把握が完全でないところもあったが、大枠は理解できたし、あこがれていた九龍城がスクリーンいっぱいに広がる光景に鳥肌が立った。また劇中の日本製品や日本歌謡曲のカバーにもノスタルジー全開。モニカはレスリー・チャンがカバーした曲だが、その曲を王九のダミ声が見事に潰している(!)のも最高におもしろい。

2度目は昨年の秋に開催された映画祭にて。憧れの王九を演じるフィリップ・ンと信一(ソンヤッ)を演じるテレンス・ラウ、そして谷垣監督の舞台挨拶も見られてリアルに鼻血を噴きそうな興奮の中の鑑賞となった。この時は改めてアクションの壮大さ、技術の進化や谷垣監督の細部にわたる工夫に感嘆する回となった。王九の演技の細部に気づいて戦慄したり、脇を固める俳優陣のこまかな演技に気が付いて感動したりと、よりディテールを掴むことができた。日本語字幕があったのでストーリーの振り返りが出来たのもよかった。

そして今回3回目。今回はストーリーを引っ張る若手世代4人に改めて心奪われた。

十二少:サップイーシウ(胡子彤:トニー・ウー)

中でもトニー・ウー演じる十二少(サップイーシウ:サップイー坊ちゃん)の演技に胸を打たれるシーンが多かった。彼は少し特殊な立場で、半分は九龍城塞の住人、そして半分はタイガー兄貴率いる組の若頭としての顔がある。彼は人情に厚い性格で、竜捲風(ロンギュンフォン)のこともタイガー兄貴のこともとても慕っている。そして仲間をとても大切にし、思いやりと義侠心に溢れた青年で、お茶目でチャラい面もしっかり持っているところが愛らしい。
少し話が逸れるが、日本公開の予習として彼が出演しているオムニバス映画「七人楽隊」を鑑賞した。こちらでは時代に翻弄される香港の若者をリアルに、”らしく”演じているのが印象的だった。この映画、香港を代表する7人の監督が手掛けるオムニバスムービーなのだが、トニー・ウーは香港ノワールの巨匠、ジョニー・トーの作品に出演している。他にもツイ・ハークの皮肉たっぷりな作品や、リンゴ・ラムのノスタルジックな作品、そしてわれらがサモ・ハン師匠の作品もあるのだ。香港映画好きにはぜひ見逃してほしくない1作なのでぜひチェックしてほしい。


陳洛軍:チャン・ロック・クヮン(林峯:レイモンド・ラム)

彼が九龍城に辿りつくまでの苦難を想像すると泣けてくる。幼くして母を亡くし、苦労を重ねてようやく見つけた”我が家”と”家族”。竜捲風を慕う洛軍と、九龍城と友との約束、そして友の忘れ形見を護るために命をなげ出した竜捲風。あまり言葉は交わさないが、見つめ合う視線ですべてを分かり合う二人に運命の絆を感じる。彼を知らぬ間に生まれ故郷へと引き寄せ、義理の父に引き合わせた運命のいたずらに驚くばかりだ。序盤の誰も信じられない目が、人々の温かさや親しみに触れて徐々に優しいものに変わっていく過程をとてもよく演じている。また序盤の王九との逃亡中の攻防もとてもスピーディでハイテンション、映画にぐっと引き込まれる。彼が演じる洛軍の人間味に共感し、ついつい応援したくなってしまう。

レイモンド・ラムが好きになった方は、こちらもおすすめ。
中国味溢れるドラマシリーズでラムが大活躍する。BSやU-NEXTで視聴可能。


信一:ソンヤッ(劉俊謙:テレンス・ラウ)

彼は冒頭の登場シーンで観客のハートをかっさらっていった。兄貴と慕う竜捲風と生死を共にする覚悟ながらも常に竜大哥に護られる九龍城の若頭。彼本来の繊細さがにじみ出つつ、九龍城の若頭としての荒々しさも併せ持つ良いキャラクター。九龍城に住んでいるわりにだいぶ小綺麗だが、そこはメンバー内でも確実にイケメン担当なので致し方ない。
昨年の映画祭以降、やはりというか当然というか、テレンスファンの投稿が目に見えて増加した。失礼ながらこの映画で初めて彼を知ったのだけれど、どうやら彼は”香港国民の夫”として大人気の若手俳優さんらしい。綺麗な顔に鍛えられた細身で長身の体躯とくれば、日本でも人気が出ないはずがない。しかも彼自身は非常に控えめで物静かな方のようで、映画祭でも常にゴリゴリ前に出るフィリップにリードされながら言葉少なに、且つやや躊躇しながら発言していたのがなんともチャーミングで印象的だった。ファン対応時もキラッキラの笑顔で優しくファンの要望に応じていた。とにかく良い人そう、が彼に対する印象だ。すでに日本でも一定のファンがいるらしく、映画祭にも彼の団扇を振りかざした女性の一団が陣取っていた。先週公開された映画では、教師と不倫相手の二つの顔を持つ”大人の男”を演じているらしいので、これでまた一層ファンが増えてしまうことはまちがいなさそう。


四仔:セイジャイ(張文傑:ジャーマン・チェン)

見れば見るほどいい奴なのが四仔だ。九龍城に迷い込んでボロボロの洛軍を助けたのも彼、刺されて死にそうになっている洛軍を救うのも彼(だけではないけれど)。また病魔に侵された竜捲風を診察し、秘密を守りつつ労わり、城砦内で病気になったり死んでゆく人を見とるのも彼なのだ。英語バージョンでは彼の古い日本版アダルトビデオコレクションから”AV”という役名を付けられており笑ってしまったが、彼がAVを見まくっているのはどうやら誰かを探しているらしい…一途な男、四仔なのである。普段は無口で”黒社会”を嫌うそぶりを見せるが、信一、十二を信じ、竜兄貴を尊敬している男気溢れる闇医者なのだ。当時の九龍城砦には実際に中国で医学を勉強したものの香港で医師免許を取得できず城砦内で医療を提供していた医師は多いらしい。彼らの中には東洋、西洋の医学に精通し、ハイレベルな医療を安価で提供していたものが多く、城砦の外からも患者が通ってきていたという記録も残っているようだ。そういう意味でも、四仔のキャラクターは、九龍城を語る上でなくてはならない存在なのである。
そんな張文傑の出演作はあまり見たことがないのだけれど、2024年中国で公開の「誤判 The Prosecutor」に出演しているようなので、ぜひ日本で上映してほしい。主演がドニー・イェンなので可能性は高い(と願う)。

観たい

彼ら4人が初めて共同作業(?)を行うシーンが胸アツすぎて何回見ても泣きながら血が滾る。決して良い行いではないし、残酷だしその前のシーンが悲しすぎるのだけれど、それでもこの4人が出会ったら人生捨てたもんじゃないと思える。後半4人が再び集合するシーンは、何回見ても涙が出る。またそこに関わる虎兄貴が最高だ。

ちなみに、虎兄貴を演じる黄德斌(ケニー・ウォン)は、香港版おっさんずラブで黒澤武蔵にあたる”KK”を振り切った演技で好演している。初めて見たときに衝撃で思わず噴いてしまった。ぜひご覧いただきたい。


最後に。昨日公開された記事を貼っておく。
香港映画マニアの関根さんの対談、おもしろい!
久しぶりにスパルタンXが観たくなった。


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