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Dear slave 親愛なる奴隷様 Loveですぅ! 第57話 誕生パーティ

「ねえ、星七の誕生パーティをそいとげくんの喫茶コーナーで出来ないの?」

「えっ、そいとげのお店でですか?どうだろう………多分ザリガニは出ませんけどね………」

「もし貸切が出来て持ち込みも自由ならそいとげくんの所がいいなあ。そうしたらそいとげくんと茉白ちゃん、それから………」

「イトコの佳さんですか?」

「うん、みんな仲のいい人たちに星七の誕生日を祝ってほしい」

「琴音さんの誕生日はどうするんですか?」

「それは別の場所でやるわ、そうしたら2回パーティが出来るじゃん」

「2回もやるんですか?」

「何なの?不満なの?」

「別に不満じゃ無いけど………」

「けど何?」

「大変だと思って………」

 結局土曜日はそいとげのお店で僕の誕生パーティ、日曜は玲司さん夫婦と一緒にいつか琴音ママと行った銀座のストランでする事になった。

 佳さんは売り上げが伸びると喜んでいる。そいとげはミコトさんに会えると喜んでいる。僕と茉白ちゃんは一緒にいられるのでやっぱり嬉しい。

 土曜は夕方4時から貸切で僕の誕生パーティだ。琴音さんがケイタリングサービスを頼んでくれたので豪華な和食が配達された。そいとげのお父さんの分も用意しようと思ったが、若い人達だけでと遠慮されてしまった。やがて時間になりパーティが始まる。

「あのう、イトコの琴音さんです」僕は佳さんへ紹介した。

「えっ、琴音………」そいとげは不思議そうな顔になっている。

「こんにちは、星七のイトコ柊木琴音です、よろしくね」ニッコリ微笑んだ。

「初めまして、茉白のイトコ赤松佳です、よろしくお願いします。今日はこのお店を選んで頂きありがとうございます」佳さんは深々と頭を下げた。

「なあヤホー………ミコトさんじゃ無いの?」

「うん、本名は琴音さんだよ」

「そうなんだ………」何となく納得したようだ。

「今日は星七のために集まって頂きありがとうございます」琴音さんが挨拶して抹茶で乾杯した。

「茉白ちゃん、これからも星七をよろしくね」

「えっ、はい、私の方こそよろしくお願いします」茉白ちゃんは緊張気味に頭を下げた。

「なんか嫁と姑みたい」佳さんがニヤニヤしている。

「そうね、当たらずとも遠からずかしら」琴音さんもニヤニヤした。

 琴音さんの前だと佳さんが可愛く見えてしまう、やはり年の違いは大きいのだろうかと思った。早速料理を食べ始めた、とても美味しい。

「凄い料理だわ………ねえ茉白」

「うん、とっても美味しい」

「あのう………聞いてもいいですか琴音さん」佳さんがお箸を置いた。

「何かしら、勿論いいわよ」

「琴音さんって何者なんですか?………だって普通の大学生だとこんな凄い料理は用意できないと思います。モデルをやっていてもそんなに多い収入にはならない気がします。それに、そのバッグは多分………限定商品ですよね?」

「佳さんって視点が鋭いのね、確かにこのバッグはお察しの通りよ」

「そうですか………何者か聞くのが少し怖くなりました」多めの息で深呼吸した。

「そのバッグは高いんですか?」そいとげが不思議そうな顔で聞いてくる。

佳さんは少しだけ呆れた顔で「多分、ハーレー一台分くらいかな」そいとげに説明した。

「うぐ………」そいとげは食べていた物を喉に詰まらせて苦しそうだ。

「私の母は神戸で柊木グループという会社をやってるの、でもその事は大学でも内緒にしてるからよろしくね」ニッコリした。

「やっぱりそうか、只者では無いと思ったんだ、だって放ってるオーラが普通じゃ無いもの」佳さんは納得しているようだ。

 茉白ちゃんはずっと瞳を大きくして二人のやり取りを見ていた。

「茉白、大丈夫?星七くんはとんでも無いおぼっちゃまかも知れないよ?」佳さんは茉白ちゃんを覗き込む。

「えっ………嘘………」固まっている。

「茉白ちゃん、大丈夫だよ、僕の家は普通のサラリーマンだから」

「だよね………」

「茉白ちゃん、裕福でも、そうでなくても星七は星七よ、安心して」微笑んでいる。

 茉白ちゃんは何度も瞬きしながら頷いている、その表情を僕は可愛いと思ってしまった。

「私小説家を目指してるんです、琴音さんの私生活に凄く興味があります、リッチで爛れた私生活とかしてませんか?」真面目な顔でとんでも無い事をさらりと聞いている。

「ごめんなさい、至って普通なのよ」余裕のある優しい表情だ。

「そうですか、本当にリッチな人って案外そうなのかも知れませんね」唇に力が入ったまま頷いている。

しばらくは楽しい雑談が続いた。やがてパーティは終わりを迎える。

「これからも星七と仲良くして下さいね」琴音さんが挨拶した。

「じゃあ星七、私帰るね」そう言って出て行く。

 少しだけ空気が軽くなったような気がした。

「ふう………怖かった〜」佳さんが大きく肩で息をして体を起こした。

「どうしたんですか佳さん?」

「だって琴音さんの強いオーラに焼き尽くされそうだったわ」

「そうなの?」茉白ちゃんが首を傾げる。

「茉白は何も思わなかったの?」

「えっ………星七くんが遠い人なのかもって、少し思った………」

「やっぱりそうか、茉白も一応感じてたんだね」何度も頷いている。

「え〜!全然遠くないよ!僕は茉白ちゃんの一番近くにいると思ってたのに」眉を寄せた。

「あ………ごめん星七くん、私も星七くんの一番近くにいると思ってるよ」俯いた。

「あ〜!二人が愛を確かめ合ってるぞ〜!」佳さんが完全復活した。

「遠い存在なんだなあ………ミコトさんは………」そいとげがふと漏らす。

「元気だせ一真!私が一番近くにいるじゃないか。あのパンツを履いた画像も送ってあげただろう?」

「「え〜!!!」」僕と茉白ちゃんはフリーズする。

「はい………送ってもらいましたけど………」そいとげは口を尖らせた。

 そいとげはスマホを出して僕と茉白ちゃんへ画像を見せた。可愛いスカートで微笑んでる画像だ。

「ん………普通じゃん」僕は少し安心した。

「何を言ってんの、このスカートの中はあのパンツを履いてるよ!」

「そうかも知れませんけど………」そいとげは不満そうだ。

僕はそいとげが可愛く思えて声をかけた。

「一真、佳さんは世の中が甘く無いって事を教えてくれてるんだよ、一真を応援してくれてるんだよ」そいとげを慰めた。

「そうなんですか佳さん?」そいとげは寂しそうな表情だ。

「ヤホー君はよく分かってるね」笑っている。

「そうだ!ヤホー君に茉白のパンツが写っている画像をあげようか?」

「え!いいです、遠慮します、鼻血が出ると困るんで」後退りした。

「真面目か!………大丈夫だよ、3歳の頃だから」笑っている。

 和やかにパーティは終了した。帰りに茉白ちゃんから袋を渡された。

「誕生日おめでとう、帰ってから開けてね」

「うん、ありがとう」

 自分の部屋へ戻って袋を開けてみた、小さめの写真立てが入っている。

『お揃いの写真立てを買いました、中に入れる写真を今度一緒に撮りたいです』と書かれたメモが入っている。僕は心が温かくなった気がした。

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