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水の生まれる夜に 62 熱海の夜

一月の半ばになって、ちまきシスターズの熱海旅行の日がきた。
本庄早稲田駅から新幹線で熱海へと到着すると、そのままフェリーで初島まで渡った。予約していたお店でお昼は新鮮なお魚料理を楽しむ。
夕方熱海のホテルに到着すると二人は早速お風呂に入る。

「海を見ながらお風呂に入れるなんて良いねえ」

「そうか……高崎からは海は見えないか……」

「何それ……バカにしてるの?」

「そんなことはないよ」

「じゃあ新さんの家からは見えるの?」

「うん……でも果樹園から見る海が一番好きだなあ……」

「そうなんだ……なんか悔しい……かも……」

僕は少しだけ天狗のように鼻を伸ばす。

「でもハワイとか、地中海なんかも行ったよ、特にサントリーニ島は良かったなあ、毎年パパが海外旅行に連れて行ってくれたからね」

少し伸びた鼻は根本からポキリと折れた。

夕食は広間でシスターズと食べる。
千草さんが乾杯の挨拶をしてみんなで生ビールを飲んだ。
「プハー……うまい」綾乃さんは唇に泡をつけて顔を横に振っている。
綾乃さんがシスターズに影響されておばさんっぽくなったような気がした。

「綾乃ちゃん二人でお風呂に入ったのかい?」みつ子さんが聞いてくる。

「はい、海を見ながら二人で入りました」

「じゃあ、ついに女になったんだね」智惠さんがピースサインをした。

「はい、今や私はセクシーな女です」ピースサインを返す。

「そう、じゃあいよいよ結婚だねえ」真理恵さんが聞いた。

「早くプロポーズしてくれるといいんですけどねえ」僕を見ている。

「大丈夫だよ、すぐに子供ができてめでたく解決さ」ヨシエさんが言った。

ちまきシスターズは僕らと、新鮮な魚介類を肴に楽しんだ。

宴会が終わり室へ戻ってくると、綾乃さんはジリジリと僕に近づいってくる。

「新さん……ねえ……新さん……」

僕は人差し指を立てて綾乃さんのおへそにある元気スイッチを切る。
熱海の夜は何事もなく平和に過ぎていった。

「ふう〜…………」

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