星降る夜のセレナーデ 第18話 初雪
12月になり里山に初雪が降った。
「うわ〜雪だ!ママ、外には雪が積んでるよ!」志音は手袋とマフラーをして嬉しそうに外へ出た。黄色い長靴でサクサク音を立てて歩いている。
「うを〜!!寒いなあ、里山の冬はやっぱり厳しいねえ」ジャージにはんてんを羽織った私は外に出ると慌てて家の中へ戻った。
「あなた、その服装だとすっかり里山のおじいちゃんみたい」少し笑った。
リビングから外を見ると、志音は雪だるまを作り始める。そこへ真人くんが畑の様子を見にきた。今日は日曜なのでスタジオの仕事は休みだ。
「おはようモヒくん、志音は雪だるま作ってるの」雪をかき集めていた志音は真人くんを見上げた。
「おはよう、俺も手伝おうか?」
「うん、大きいのを作りたい」
「了解」真人くんは志音と二人で雪の塊を転がし、大きく成長させた。
大きくなった雪の塊を駐車場の横に固定すると、また新たな雪の球を転がした。
大きくなった雪の球を上に乗せ木の枝で両手を作る。
目はペットボトルの蓋で作り、鼻と口はスミで作られた。
志音のおもちゃのバケツが帽子になり間抜けな顔をした雪だるまが完成した。
「ママ〜!、写真撮ってよ」白い息を吐きながら志音はリビングの窓を叩く。
美夜子はデジカメを持って外に出た。私も雪だるまを見に外へ出てきた。
「モヒくん、一緒に写真撮ろうよ」志音は真人くんの手を引いて雪だるまの横へ行った。
間抜けな顔の雪だるまを挟んで志音と真人くんはにっこり微笑む。私は肩を揺らしてクスクスと笑った。
リビングへ入ると用意されたホットミルクを皆んなで飲んだ。
「朝から重労働で大変だったね」私は真人くんを労った。
「大変じゃないよ、楽しかったんだよ」志音が頬を膨らませる。
「楽しかったですよ」真人くんは少し強張った笑顔をしている。
「一樹さん、気になったんですけど………車のタイヤはスタッドレスですか?」
「いや、普通のタイヤだけど」
「この辺りだと4輪駆動にスタッドレスが当たり前なんですけど…………」心配そうに教えてくれた。
「そうなんだ…………」私は少し考えた。
「そうだ、タイヤ交換に街へ行こう」トンと手を叩く。
「真人くん、何処に行けば良いか分かるかい?」
「そうですね、熊谷あたりには大きなタイヤ屋さんがありますけど」
「じゃあ買い物もついでにしてこよう」私は提案する。
「志音も買い物に行きたい」手をあげた。
「そうね、色々と必要な物もあるし、私も買い物に行こうかしら」美夜子も頷いた。
「じゃあ俺が案内しますよ、もうバスが通った後だから何とかノーマルタイヤでも走れると思います」
「お願いしても良いかな」私は素直に甘える事にした。
「やったあ!!モヒくんとお出かけだ」志音は喜んでいる。
3人は出かける準備をして車に乗り込んだ。
早速真人くんは運転席に座ると色々と確認した。
「この車は2輪駆動と4輪駆動が切り替えて使えるんですね、これならタイヤを変えれば安心だ」
真人くんはゆっくりと車を走らせた。道の両側には雪が固まって少し高くなっている。