Dear slave 親愛なる奴隷様 Loveですぅ! 第44話 琴音御前!
どうやらレストランに到着したようだ。ビルのプレートに銀座と書いてある、テレビドラマに出てくるような場所だと思った。
中へ入るとまるで外国に来たみたいだ、ファミレスとは全く違った空間がそこに存在した。蝶ネクタイをした人が案内して奥にある眺めの良い個室に通される。僕はキョロキョロと見渡して何度も瞬きした。
「星七ちゃん、遠慮しないで好きな物をオーダーしてね」琴音ママは微笑んでいる。
僕はアルバムのようなメニューを見たが写真がない、しかも何語で書いてあるのかすら分からない。
僕の様子を見た琴音さんは「私と星七はおまかせで良いわ、旬の美味しいものにして、星七に食べさせたいから」
「じゃあそうしましょう」琴音ママはニッコリ指示した。
様々な料理が出てくる。スープやサラダ、他に名前の分からない料理が並ぶ。とても美味しいが何だか分からない。僕は琴音さんの食べ方を見て物真似のようにして食べた。
「琴音、雑誌の写真は何なの?琴音ファンの社員から見せられたわ。それに仕送りが少ないんじゃないかって心配されたわよ。
「そうなの?」
「お尻まで見えそうなミニスカートじゃないの」
「あのう………すみません、僕がミニスカートでバイクに乗る女の子の動画を見せてしまったので………」僕は琴音さんが怒られていると思い思わず口を出してしまった。
「星七ちゃんはいいの、どうせ琴音がいつものように負けん気を出したんでしょう?」
「それはママに言われたくないわ、小さい頃から『負けちゃダメ!あなたには社員の生活がかかっているのよ!』って散々言ったくせに」
「そんな事もあったかしらねえ、負けるが勝ちって事もあるわよ」余裕で笑っている。
琴音さんはプイと横を向いた。
「星七ちゃん、こんな琴音だけど仲良くしてあげてね」微笑んでいる。
僕は微笑みがこんなに怖いものだと初めて知った。
「パパが会いたがってるわよ、今度の夏休みには星七ちゃんと一緒に神戸へいらっしゃい」
「そうね、丹波篠山の農園までツーリングしようかな、星七もバイクに乗れるようになったから」僕を見て微笑む。
「危険なことはやめてよ」少し母親らしい表情だ。
僕は居心地の悪さで少し青い顔になってしまった。もう限界が近い気がする。
「ママ、星七と散歩しながら帰るわ」
「そう、じゃあタクシー使ってね」
「うん、そうする」
「星七ちゃん、また会いましょうね」琴音ママは僕の頭を撫でた。
お店を出ると外の風が心地いい。僕は軽く深呼吸した。琴音さんが優しい表情で僕を見ている。
「大丈夫星七、少し歩こうか?」
「はい」
僕は琴音さんと手を繋いで夜の街を歩いた。少しだけ大人になったような気がした。
リビングで僕はソファーにもたれ天井をボーッと見ている。
「疲れたでしょう星七?」優しく声をかけてくれた。
「琴音ママのパワーは凄いですね、僕は半年分のパワーを使い切った感じがします。
「何それ、まあ社員からは静御前と呼ばれてるからね」少し笑った。
「静御前ですか、何かゲームの怖いボスキャラみたいな感じですね」
「そうね、それはいい表現だわ」肩を震わせて笑っている。
「琴音さんは将来、琴音御前になるんですか?」思わず聞いてしまう。
「私はならないわよ、怖いボスキャラみたいには」
「そうですか………才能はありそうですけど………」
「こら星七ちん」背中から抱きしめられた。
「御免なさい、もう言いません」とは言ったものの、恐らく似たような感じになるような気がした。
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