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水の生まれる夜に 95 似た物同士

その日の夜将暉邸のリビングにいた俺の所へ、将暉社長が焼酎を持ってやって来た。

「社長、珍しいですね、焼酎なんて」

「今日はこっちが飲みたくてねえ、昔会社ができた頃はお金がなくて、この安い焼酎を飲みながら必死に頑張ったもんさ、だから今日は初心に戻りたいと思ってね」

「そうですか、私も焼酎の方が落ち着くのでお付き合いさせて頂きます」

二人はコップで飲み始める。綾乃ちゃんはミホさんに「今夜は遅くなるわよ」そう言って二人で夜食の準備を始めた。

「新くん、どうして私のモットーや遺伝子のことが分かったんだい?」

「ええ、綾乃ちやんから聞きました」

「そうか……しかし聞いただけではあそこまで話せないんじゃないかい?」

「実は私もドーキンスの本を読んで動物行動学に興味を持ってました」

「何!それは本当かい」

「はい」

「じゃあ、もしかして……新規探索傾向も分かるかい?」

「はい、私は少し強めなんじゃないかと思ってます」

「そうか、私も強めだと思うんだよ」

「日本では8%くらいで少ないですよね」

「アメリカなら40%くらいはいるんだがねえ」

「農耕民族だからですかねえ」

「私もそう思うんだよ……しかし嬉しいなあ……同じような思考回路を持っているということは、より価値観の共有が出来るということだ、綾乃は良い人を見つけて来てくれた」

「恐れ入ります」

「やはり新君を会社に迎えて良かったよ」将暉社長は嬉しそうだ。

「ねえお二人さん、夜食ができたわよ、いかが……」

「いいねえ」二人は嬉しそうに食べた。

「パパ、いい人を見つけて来たでしょう?もっと褒めてくれてもいいのよ、私を」

「そうだね、さすがは私の娘だ」

「それじゃあ私を褒めてるんじゃなくてパパの自慢でしょう」
四人は楽しそうに笑った。
俺はふと耳を澄ます「そうか、ここじゃあフクロウは泣かないか」そう思った。

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