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隠れ家の不良美少女 213 ロブスターズ ファンクラブ

俺はウイングのオフィスで奏太くんと武道館のステージプランの見直しをしていた。そこへ友里香さんと菜々美ちゃんが福岡から帰ってくる。
コスプレサークル雅の広橋菜々美ちゃんは、マネージャーの見習いとして、今ウイングで働いている。
「「お疲れ様です」」
「お疲れ、大変だったでしょう福岡まで?」俺は労いの言葉をかける。
「友希さん、友里香さんって凄すぎますよ」菜々美ちゃんは息も荒く報告した。
「ロブスターズのメンバーとも確認してマネージメントする契約をかわして来ました、そしてココアちゃんもこのウイングでマネージメントします、よろしくね」友里香さんはニッコリした。

「ココアちゃんは何とTikTokを始めるんですよ、メイクからやり方まです地元のスタッフが付きっきりで指導するんです。メイクしたココアちゃんはキナコちゃんにも負けないくらい可愛いんです、多分すぐに人気出ますよ」

「そうなんだ」俺は呆気に取られた。
「奏太くん、と言う訳だからよろしくね」
「また大変なことになりそうだ」奏太くんは眉を寄せながらも頷いた。

「友希くんのお父さんにも会ったわよ」友里香さんは横目で俺をみてニンマリした。
「えっ!どこで会ったんですか?」
「ロブスターズのファンミーティングでよ」
「そんなのあったんですか?」俺は不思議そうに聞いた。

「ファンクラブの会長ひとみさんと会ってきたわ、そして色々と話を聞いたの」
友里香さんはその話を聞かせてくれた。

ひとみさんの話は意外なものだった。

「私はロブスターズが博多のライブハウスに出始めた頃から和也さんの熱狂的なファンでした、そして和也さんに交際を願いました、でも和也さんはニッコリ微笑むだけでした。私は兄に和也さんから遊ばれたと嘘をつきました、すると兄は激怒しました。兄は不良グループのリーダーでした、だから仲間を連れてライブハウスに乗り込んで来ました。乱闘になりロブスターズのメンバーは捕まってしまいました。それを見た一瀬達也さんが一人で不良グループをやっつけたんです、兄は達也さんに押さえつけられると、『こいつが妹を傷物にしたんだ!』そう言って和也さんを睨みつけました。私は怖くて震えていました。それを見た和也さんは兄に『すみませんでした』そう言って深々と頭を下げました。私はそれを見てとんでもない事をしてしまったと思いました。
『お兄ちゃん御免なさい!嘘なの!みんな私の作り話なの』そう言って泣き崩れました。
達也さんは押さえつけていた兄を放してくれました。兄は申し訳無さそうに和也さんに謝りました。
それ以来私はロブスターズのためにひたすら活動しました。初めはファンのみんなから顰蹙を買いましたが何年も立つと、みんな優しく声をかけてくれるようになりました。ロブスターズが解散してからも月に一度ロブスターズ通信という会報を出し続けました。ベースの愛美さんが情報をくれたので、ロブスターズの復活を夢見てただただ活動して来ました」

「そんなある日でした、コスプレイヤーのキナコと言う女の子がロブスターズの歌を歌って話題になりました。それに彼女のミニアルバムには和也さんが曲を作るという情報が流れて来ました。私は涙が出る程嬉しかったんです、またあの和也さんの歌が聞けると思うと居ても立っても居られない気がしました。だからロブスターズ通信にビッグニュースとして報告しました、もちろんキナコちゃんってどんな子だろうと思いコスプレイベントにも行きました。そしたらロブスターズファンの人たちがたくさん来ていて、歌うキナコちゃんを見てどこか懐かしく感じてみんなミニアルバムを予約しました。

「月に一度のロブスターズミーティングをまた始めたんです、そしたら酒に酔った顔の赤い変な人が入って来ました、そして『和也は俺が有名にしてやったんだぞ!』そう言ってみんなの前で偉そうにしました。私はピンと来ました。逃げた社長は同じ福岡の出身だと聞いていたのでこコイツがお金を持ち逃げしてロブスターズを解散させてしまった社長だと確信したんです。たまたま来ていた達也さんも気づいたようでした。私は『あんたが逃げた社長ね!』そういうとその酔っ払いは顔色を変えて逃げようとしました。達也さんはその男の胸ぐらを掴んで殴りそうでした「達也さん!あなたは手を下しちゃあだめ!』私が止めると男はよろけながら逃げようとしました。私は全身の力を込めてその男の股間を蹴り上げました、そして『痴漢です!この男痴漢です』そう叫びました。するとガードマンが慌てて来てその男を捕まえました。周りの人達も『コイツは痴漢だ!俺も触る所見たぞ!』みんなが口を揃えてくれたのでその男は警察へ連れて行かれました。

ひとみさんの話はそんな内容だった。

「今日のロブスターズミーティングには達也さんも来てくれてますよ」そう言って紹介されたのよ、友希さんのお父さんを。
「初めましてキナコのマネージャーをしてます原友里香と申します」
「初めまして、キナコちゃんのマネージャーなら息子の友希がお世話になってます」
そう言って深く頭を下げられたわ。
「こちらこそ友希さんにはとてもお世話になっています、私も頭を何度も下げたわよ」

「ひとみ会長さん、ロブスターズの東京でのマネージメントは私がやらせてもらう事になりました。是非よろしくお願いします」私が頭を下げると。
「こちらこそよろしくお願いします」彼女は強く握手してきた。

「ひとみ会長さん、キナコちゃんは和也さんの娘です」
「え〜!」彼女は言葉を無くした。
しばらくすると何度も頷きながら「どこか懐かしい感じがしたのも、歌い方がどこか和也さんに似てたのもやっと納得できました」
「そうだったんですね…………」どこか嬉しそうに微笑んだ。

そして10月31日にはロブスターズも一緒に武道館へ特別ゲストとして出演します、だからその日にファンミーティングをしてパブリックビューイングをしてはいかがですか?」

「本当ですか?それは早速みんなに報告しなきゃあ」彼女は喜んだ。
「ただ、コロナ禍ですし、まだゲストの事は秘密ですのでよろしくお願いします」
「そうですね、そうですよね」彼女は何度も頷いた。

私は友希さんのお父さんに『キナコちゃんの彼氏が友希さんだという事はまだ内緒でお願いします』そう小声で告げると。
友希さんのお父さんはニッコリとしてゆっくり頷いた。

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